若手技術者が技術業務にやりがいを感じず停滞期に入っている

公開日: 2025年12月29日 | 最終更新日: 2025年12月28日

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技術業務にやりがいを感じず停滞期に入っている若手技術者は、外の目線で引き上げる

 

 

若手技術者が技術業務にやりがいを感じていないようにみえる、
といったことは決して珍しいことではありません。

 

 

特に入社2、3年目までに一度はこのような”停滞期”が若手技術者には訪れます。

 

 

このような状態に陥った若手技術者に対する育成を念頭に置いた対応を考えます。

 

 

 

 

 

停滞期は成長の通過点

 

技術業務に対して、やりがいを感じなるなる若手技術者はどのようにして生まれるのでしょうか。

 

 

代表的な要因として考えられるのは、

 

「周りからの期待の向上による周囲の接し方の変化」

 

です。

 

 

 

周りからの期待

 

新人として入社したばかりの新人技術者は右も左もわからず、
また新たしい職場ということもありモチベーションも高い状態であることが一般的です。

 

 

周りも新人として入ってきた彼ら、彼女らを歓迎し、
いわばお客様のように接してくれるでしょう。

 

 

しかし、時間が経過するにつれいつまでも新人の立ち位置でいることは難しくなり、
若手技術者としての最低限の言動を要求されるようになってきます。

 

 

今まではミスをしてもフォローしてもらっていただけだったのが、

 

「何度同じことを言わせるのだ」

 

といった、指摘、受け取り方によっては叱責されることも増えるでしょう。

 

 

 

そして、さらに下に新人技術者が入ってくれば、
元新人技術者は若手技術者として扱われることになり、
その見本となるような振る舞いを要求されるでしょう。

 

このようにして、周りからの期待が高まっていくのです。

 

期待の高まりは、甘えを許さないということと概ね同等になります。

 

 

 

変化する周りからの接し方に戸惑う若手技術者

 

恐らく多くの若手技術者は周りの接し方の変化に”戸惑う”と思います。

 

 

期待値が高まっているのだと捉えられる若手技術者もいますが、
恐らくそれは少数派であり、多くは

 

「技術業務を満足にできない自分はスキルが足りないのだ」

 

といった、どちらかというと後ろ向きな考えになると思います。

 

 

 

そしてこの状態が続くと、どこかのタイミングで

 

「今の仕事は面白くない。自分は本当にこの仕事がやりたかったのか。」

 

という考えになり、いわゆる”やりがい”を失う状況に陥ります。

 

 

自尊心の低い若手技術者の典型的な応答であり、
外的統制、つまり自分ではなく環境に原因があるという考えが根底にあります。

 

 

 

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一度このように考え出すと内向きの姿勢が加速し、
自己啓発と称して自らの業務と無関係な勉強を始めるといった行動に出ます。

 

資格試験はその代表例ともいえるでしょう。

 

 

※関連コラム

 

若手技術者に技術的な 資格 を取らせるべきか否か

 

 

モチベーションの維持といった効果もあるため、
このような若手技術者の行動をリーダーや管理職は全否定する必要はありませんが、
若手技術者は勉強よりも手足を動かして技術業務に邁進する方が、
結果的に技術者としての普遍的スキルを高められるのも事実です。

 

 

 

いずれにしても、周りの接し方が変わり、
それに対して悩みながら次の行動を起こそうという若手技術者の試行錯誤は、
成長の過程であるとみていいでしょう。

 

 

 

以上の通り、ここで述べたのは若手技術者の成長にとっても不可欠な停滞期ですが、
この時期によくみられる”やりがいを感じない”という状況を放置するのは危険です。

 

 

 

そしてこの停滞期を脱し、いち早く成長路線に若手技術者を乗せるという戦略が、
リーダーや管理職に不可欠なのです。

 

 

 

 

 

やりがいを感じていないと見えたときは外の目線を活用する

 

やりがいをなくし、停滞期に入った若手技術者の立ち直りに必要なのは、

 

「外の目線」

 

です。

 

 

 

ここでいう外とは、社外を想定いただくと良いかと思います。
企業規模によっては、他事業所という考えも可能です。

 

 

そして、最終的には若手技術者を外に向けて報告させ、
外からの目線に触れさせることがポイントです。

 

 

 

 

 

停滞期にある若手技術者に取り組ませる技術業務

 

まずは、若手技術者に取り組ませる業務内容について述べます。

 

 

 

社外が前提となるため依頼試験などが代表的な技術業務

 

外の目線を活用する、つまり外とのやり取りを生じさせる技術業務としては、
依頼試験などが代表的な技術業務になります。

 

 

後述する通り、若手技術者のゴールは外の目線に触れさせることにあるため、
社外の人間に報告させるということがポイントです。

 

 

 

大前提は椅子に座らせず、技術業務対応として手足を動かさせる

 

停滞期に入った若手技術者を引き上げるにあたり、
椅子の上に座った状態の業務を増やすのはNGです。

 

調べ物や報告書作成”だけ”にするのが一例です。

 

 

若手のうちにこの癖がつくと、
この後中堅、ベテランの技術者への過程のどこかで必ず

 

「評論家」

 

になります。いわゆる、口だけの技術者です。

 

 

気分が沈んだ時こそ、外に目を向けなければならない、
という考え方を持たせることが、
実践的な技術者の知識である”知恵”を習得させる意味でも不可欠です。

 

 

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停滞する若手技術者に対応させる技術業務の内容と留意点

 

業務の内容や留意点についてもう少し述べます。

 

 

 

短納期の技術業務を選定する

 

あてがう技術業務は短納期のものが良いでしょう。

 

数週間、長くても数カ月くらいで終わるものがいいです。

 

 

中長期の業務は社外の人への報告というゴールまでの距離が長くなるため、
早期に停滞期から若手技術者を引き上げるのには不向きです。

 

 

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停滞期にある若手技術者には考えることを求めない

 

技術者の育成としては意外かもしれませんが、
停滞期にある若手技術者に対しては、
あまり”考える必要のない”技術業務が望ましいです。

 

 

材料試験や分析の”結果の取得”が技術業務の一例です。
作業の要素が強いという表現もできます。

 

 

その結果を考察するというところまで要求すると、
停滞期にある若手技術者は”考える”、または”考察”ということにこだわり、
無用に時間を消費するはずです。

 

 

若手技術者はそもそも実務経験が不足するため思考の幅が狭く、
さらに自信を失っているときは思考力も落ちているので、
考えさせることは停滞期を脱するという目的に対しては適切ではありません。

 

「結果に対する考察は必要ないので、ソフトから吐き出される結果のレポートを出してほしい」

 

といった指示が適切です。

 

 

 

※関連コラム・連載

 

技術報告書で考察は重要ではない

 

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第27回 考えることが苦手な若手技術者に任せてみたい技術業務 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

技術業務の目的を伝える

 

技術業務に取り組ませる以上、その目的を伝えるのは一種の礼儀といえます。

 

技術評価計画を作成するという正式な手順を踏むのも一案ですが、
停滞期にある若手技術者を引き上げるだけであれば、
口頭で十分でしょう。

 

 

手間をかけるよりも、目的を伝えるという行動の”確実な実施”を重視してください。

 

いずれにしても必ず目的を若手技術者に伝えるという”配慮”が、
リーダーや管理職に求められます。

 

 

 

得られた結果を簡単にまとめさせる

 

停滞している若手技術者は技術報告書を作成することができないことも多いです。

 

 

これはそのスキルが不足することもさることながら、
停滞期では文章を書くのに必要な思考力が足りない状態にあることも、
その状態に直結する一因となっています。

 

 

そこでひとまずは、

 

「まとめについてのハードルを下げる」

 

ことを試してください。

 

 

より具体的には、文章ではなくスライド資料を用いた結果のまとめというのも一案です。

 

 

既述の通り考察は必要ありません。

 

 

結果という事実だけをまとめさせ、
最終的な結果や考察はリーダーや管理職、
または業務を担当する中堅技術者が行ってください。

 

 

若手技術者にやらせるのは、あくまで作業に該当するところまでです。

 

 

 

 

 

外部の人間に対して技術業務の結果を報告させる

 

ここまで終わったら仕上げです。

 

 

リーダーや管理職が日程を調整し、
外部の人間に対して若手技術者が技術業務の結果を報告する場を設定してください。

 

 

もちろんリーダーや管理職、または若手技術者に技術業務を指示した中堅技術者も同席します。

 

 

 

報告資料は若手技術者が作成したという想定で社外に報告させる

 

結果という事実に関する部分を若手技術者が記述し、
全体のまとめを中堅技術者や、場合によってはリーダーや管理職が関与した資料を使います。

 

 

作成者は若手技術者であることを対外的に示します。

 

 

実は自分が全体をまとめたのです、といった中堅技術者、またはリーダーや管理職の発言は避けましょう。

 

 

報告を受ける社外の人間にとって、
資料を誰が作成したかは問題ではありません。

 

内容が適切かだけを見ています。

 

 

 

何より停滞期にある若手技術者を引き上げるという目的に対して、
上記のような横やりは百害あって一利なしです。

 

若手技術者に花を持たせることが大前提となります。

 

 

 

報告の内容に大きな間違えが無ければ特に指摘しない

 

そして報告です。

 

本来、若手技術者育成では報告のやり方などについても、
ある程度細かい指摘が必要です。

 

 

しかしやりがいを感じなくなっている状態の若手技術者にそのような指摘をすると、
追い打ちをかけることになりかねません。

 

 

大きな間違えが無い限りは細かい指摘はせず、
リーダーや管理職は若手技術者の報告を見守るのが肝要です。

 

 

 

外の目線は社内より間違いなく優しい

 

どうしても社内の人間は若手技術者を育てる責任もあるため、
彼ら、彼女らに対する評価や目線は厳しくなりがちです。

 

 

しかし社外の人から見ると若手技術者は、
先方企業の従業員であって育成の責任もないことから、
ほぼ間違いなく優しい。少なくとも大きなミスをしない限り叱られるということもないでしょう。

 

 

つたないながらも結果を説明する若手技術者に対し、
報告の基本がなっていない、といった指摘を社外の人間がすることは通常ありません。

 

 

このような心理的安全性が担保された状態での技術業務の結果報告は、
若手技術者にとって緊張する場面である一方、
自分が力を発揮しているという実感も得られるものと考えます。

 

 

 

 

 

終わったらよくやったではなく”助かった”と伝える

 

報告が終わったら若手技術者に対しては、
よくやったというよりも、

 

「助かった」

 

と伝えてあげてください。

 

 

停滞期に入り、やりがいをなくしている若手技術者が求めているのは承認です。

 

 

つまり承認欲求が高まっている状態にあります。

 

 

 

助かった、つまり”組織の役に立った”という実感が、
若手技術者にとって自信を取り戻すきっかけになるのです。

 

 

 

 

 

まとめ

 

リーダーや管理職には若手技術者を早く育成したいという焦りもあるでしょう。

 

 

その道半ばで、やりがいをなくし停滞期に入った若手技術者を見ると、
戸惑うことも多いはずです。

 

 

特に期待をかける若手技術者がそのような状態になると、
リーダーや管理職の気持ちの乱れはさらに大きくなるはずです。

 

このような状況の打破に向けて、
”社内”の目線によって停滞した若手技術者を復活には、
”社外”の目を活用するという発想の転換が必要です。

 

 

社外からの依頼試験等の短納期の技術業務を対応させ、
それを社外の人向けに報告させることは、
外部の目を活用した若手技術者の引き上げに大変効果的です。

 

 

やりがいを失っているように見える若手技術者が居る場合、
是非試していただきたいアプローチです。

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