入社間もない若手技術者の技術専門性を高めるきっかけを与えたい

公開日: 2026年10月5日 | 最終更新日: 2026年10月5日

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入社間もない若手技術者の技術専門性を高めるきっかけを与えたい

 

入社間もない若手技術者の技術専門性を高めるきっかけを与えたい、
というのは技術者育成の最初の一歩と言えます。

 

今回は入社間もない若手技術者の技術専門性と、
若手時代にしか機能しない技術専門性向上に向けた育成方法を解説します。

 

 

 

 

 

若手技術者の技術専門性は製造業企業における即戦力とはならないのが通常

 

様々な技術が進化し、最近では発展目覚ましい情報技術において、
20代の若手技術者や場合によっては理系学生が身を立てることが珍しくなくなりました。

 

彼ら彼女らと比べればずっと後ろからのスタートで比較はできませんが、
自分で事業を立ち上げた経験者である私としても頼もしく、
またいいことであると感じています。

 

やはり若手技術者の方の挑戦しようという気持ちは、
社会の活力源の一つに違いありません。

 

 

しかし多くのケースにおいて製造業企業のような、
実物を多く作るというビジネスモデルは無く、
ソフトウェアやサービスといった、
非製造業に近いものが多いことは周知の事実でしょう。

 

また、自らの技術専門性で法人から雇用や請負ではなく、
準委任の形で直接対価を得るような仕事をできている方も、
極少数派でありほぼ存在しないのが実情です。

 

 

このような状況を踏まえると、

 

「若手技術者の技術専門性は製造業企業において即戦力の要素ではない」

 

ことが分かると思います。

 

 

 

即戦力ではないからこそ雇用直後の育成が重要

 

若手技術者が入社する前の学術界を基本とした教育は、
技術者育成では大変重要です。

 

技術者の普遍的スキルの一つであるグローバル技術言語力、
すなわち数学に関する基礎力は学校教育で身につけなければなりません。

 

 

この辺りは過去の連載やコラムでも取り上げています。

 

※関連連載/コラム

第10回 技術者のグローバル化に必要な数学力と文章作成力の鍛え方 日刊工業新聞「機械設計」連載

データの相関を回帰分析を用いて理解させたい

伝統と先端の両立を狙う進学高校での教育を若手技術者育成の類似点

 

 

その上で、製造業企業が技術者を採用した後は即戦力にすべく、
産業界向けの教育を施すことが重要です。

 

 

効率を考え大学で企業向けの教育をしようという流れも散見されますが、
私自身は反対の立場です。

 

学校、特に大学というのはあくまで学術界で活躍する研究者を育成する機関であり、
産業界で活躍する技術者を育成するスタンスとは距離を取るべきと考えます。

 

前出のグローバル技術言語力は産業界で育成する力は不足しています。
そもそも技術者の多くが数学が苦手というのがその証左と言えるでしょう。

 

 

この辺りも過去に何度か述べています。

 

※関連コラム

 

大学教育と産業界の要望

吉野氏のノーベル賞受賞記念座談会 の記事から考える技術者育成

 

 

 

 

 

研修型教育は技術者育成に対する一候補となるアプローチ

 

入社間もない若手技術者の育成に関する取り組みの一つが研修型教育です。

 

 

比較的歴史ある方法の一つであり、
技術者育成の効果も期待できます。

 

ただし、その効果を最大化するにはいくつかのポイントがあります。

 

 

 

研修は1年以上の期間内で複数回行う

 

外部の研修を一回だけ受けさせることで、
内容を理解し、現場で実践できる若手技術者も一定数います。

 

 

ただし、技術者育成の効果をより多くの若手技術者に波及させたいのであれば、

 

「1年以上の期間内で複数回行う」

 

ことがより効果的です。

 

 

 

研修内容に関連する実践経験が無ければ理解できないことが多い

 

ある程度の長期間にわたって複数回行う意味は、
その期間内の若手技術者自身の技術業務実践経験の積み重ねにあります。

 

実際に行わないと、なぜ研修内容の知見が必要なのかといった”実感”を持つことができません。

 

例えば一回目の研修で基本を教えた後に配属先に戻ってもらい
数か月後にもう少し難易度を上げた研修を行うことで、

 

「普段の技術業務の中でこのようなものが使えるかもしれない」

 

という気づきにつながることもあります。

 

 

 

個別のフォローやフィードバックを行う

 

若手技術者と言っても性格や力量など千差万別です。

 

何かしらの指導法を通じて若手技術者を育成した経験があるリーダーや管理職でも、
同じやり方が他の若手技術者には通じなかったことは一度や二度ではないはずです。

 

そのくらい個性による違いは技術者育成のアプローチでも影響が大きいのです。

 

よって研修を実施した場合、社内外の講師、またはその研修を監督していた企画担当者の社員が、
個別にヒアリングするといった対応が重要になってきます。

 

各個人の特性を理解することと同時に、
自分は個別に見られていると実感させ、
当事者意識を芽生えさせることがその狙いにあります。

 

 

 

 

次に集合型研修ではないもう一つのやり方について考えます。

 

 

 

 

 

知らないことが武器の若手技術者のうちに”手足を動かす作業”を長期間行わせる

 

入社間もない若手技術者の技術専門性を高めるきっかけを与えたいのであれば、

 

「”手足を動かす作業”を長期間行わせる」

 

ことが最良です。

 

 

 

リーダーや管理職も認識すべきは、若手技術者の強みです。

 

 

 

若手技術者の強みは”若さ”と”もう一つ”

 

一つはもちろん若さです。

 

頭も体も体力があり、柔軟性もあります。

 

様々なことに挑戦し、それに耐えることも可能です。

 

これは若手技術者にしかないものです。

 

 

そしてもう一つ、技術者育成の武器ともいえるのが

 

「知らない」

 

ことです。

 

 

技術専門性の一要素である専門知識に加え、それを知恵に昇華させる実践経験もないため、
若手技術者は製造業企業の第一線で必要なものを知りません。

 

知らないことはまずやってみようという勇気さえあれば、
様々なことにまっさらな状態で挑戦できる原動力となるのです。

 

これは間違いなく若手技術者の持つ強みと言えるでしょう。

 

 

 

年長者の枠づくりの方が問題

 

知らないを課題と感じる方もいるようですが、むしろ大きな課題は

 

 

「リーダーや管理職、場合によっては企業組織が若手技術者の枠を作ってしまう」

 

 

ことだと私は考えます。

 

 

 

枠というのは型をはめるというよりも、

 

 

「これ以上はやらなくていい、できなくていい」

 

 

という境界線のイメージです。

 

 

 

この辺りは過去にも触れたことがあります。

 

※関連コラム

 

熱量が足りないと見える若手技術者に実践させたい越境学習

 

 

 

若手技術者の主観による安全地帯は評論家への一本道

 

若手技術者側も注意が必要です。

 

「自分ができるのはここまでだ」

 

といった線引きをする若手技術者の方もいますが、私から言わせれば

 

 

「若い時期という大特権を完全放棄している」

 

 

としか見えません。

 

 

 

経験の浅い若手技術者が限界を語ることはできないはずです。

 

ましてや当社が目指す技術者像である、

 

「自発的に行動し、課題解決できるエクスパート」

 

になりたいのであれば、真逆に進もうとしています。

 

 

 

既に述べた通り若手技術者最大の強みは”知らないこと”です。

 

 

知らないからこそ取り組める無理や無駄に、
技術者としての本当の力につながる知恵の原料となることも多いのです。

 

 

 

”手足を動かす作業”の枠組みに一度入れる

 

既述の年長者による枠の設置や若手技術者自身の安全地帯創出を抑えられたうえで若手技術者に取り組ませたいのが、”手足を動かす作業”の対応です。

 

いくつかポイントを述べます。

 

 

 

最低でも6カ月

 

この手の取り組みは短期ではだめです。

 

 

最低でも6カ月くらいは続けさせてください。

 

その作業を難なくこなせるくらいのレベルに到達していないのであれば、
もっと長くても良いです。

 

 

 

PCで完結せず、手足を動かすものが必須

 

PCの前に座って進むような仕事は無用です。

 

それは経験豊富なものの、足腰が弱って動くのがつらいとなってからで十分です。

 

デジタルデトックスという意味でも、
若手技術者をそのような環境に置くのは望ましいのかもしれません。

 

 

 

暇にさせない

 

これも重要です。

 

無意味な作業をさせてはいけませんが、
時間的に余裕がある作業では若手技術者にかかる圧力が不十分です。

 

 

スマホも見る余裕なく、手足を忙しく動かすような仕事が良いと思います。

 

残業はしなくてもいいでしょう。

 

気が付いたら就業時間が近づいていた。

 

 

そんな日々が理想的です。

 

 

 

リーダーや管理職は一日に一回は必ず若手技術者の様子を見に行く

 

意外にもできないリーダーや管理職も多いのであえて述べておきます。

 

手足を動かす作業に没頭する若手技術者を、
必ず一日一回は様子を見に行くようにしてください。

 

 

安全教育は大前提で、その手順通りやっているかの確認は当然必要ですが、

 

「仕事の進捗は良いね。引き続きよろしく。」

 

という一言をかける、そして休憩兼ねて飲み物をおごるくらいの対応はしてください。

 

 

どれだけ忙しくとも、”毎日”顔を見せに行くことが重要です。

 

 

これは”手足を動かす作業”がリーダーや管理職が意義のある業務と認識していることを示し、
若手技術者を安心させる意味合いがあります。

 

 

次に何故”手足を動かす作業”が入社間もない若手技術者の技術専門性を高めるきっかけになるのかを説明します。

 

 

 

 

 

人間の長期記憶になりやすいのは座学よりも”手足を動かす作業”

 

技術専門性という言葉は、実は非常に抽象的です。

 

”技術専門性=専門知識”と考える傾向にあるようですが、
過去のコラムでも何度も述べている通り”知っている”という知識は、
企業に所属する技術者の力としては片手落ちです。

 

 

そこに実践力の観点が無いからです。

 

つまり技術に関する専門知識を応用して具体的な実践方法の提案とその実行までできる知恵は、
技術専門性の一部と言っていいでしょう。

 

しかしそれだけでも足りず、技術的な理論を理解、説明するためのグローバル技術言語力や、
多くの情報から要点を抽出する論理的思考力、
活字媒体で技術的な事実を分かりやすく周知する技術文章作成力といった、
技術者の普遍的スキルも技術専門性に入ってくるでしょう。

 

このように技術専門性は抽象的かつ大変広い意味を持つのです。

 

 

 

多くの要素を有する技術専門性向上の琴線に触れるには没頭できる作業が最適

 

今の時代は情報が多すぎます。

 

人間は脳の処理能力のうち数割しか使っていないと言われていますが、
それにしてもインプットされる情報量が多すぎて処理しきれていないように見えます。

 

器用貧乏くらいであればまだいいのですが、
奥行きが無い技術者が増えていることは、
それが顕在化した一事象かもしれません。

 

 

知らないという強みを有する若手技術者に多くの要素を含む技術専門性の重要性に触れさせるには、

 

「インプットされる情報を抑制し、目前の繰り返し作業に没頭させる」

 

ことが肝要です。

 

 

 

何度も繰り返すうちに技術の断片が見えてくる

 

何も考えずに作業と割り切ってしまうようでは問題ですが、
一般的な若手技術者では作業をする中で、

 

  • なぜこうなるのだろう
  • こうするとうまくいくことがわかってきた
  • もう少しこれについて知りたい

 

これこそが、

 

「”能動的”な技術的探求心」

 

です。

 

 

 

自ら手足を動かす作業を繰り返して集中する一方、
外部からの情報が制御され、知らない故に余白の多い若い頭脳に起こる、
大変重要な化学変化です。

 

 

”能動的”である、すなわち

 

「何かを知りたいという当事者意識を芽生えさせる」

 

効果が発現するのです。

 

 

何かを理解させるには、当人が知りたいと感じることが最重要です。

 

自ら何かをしようとする。これが技術専門性向上の源泉となります。

 

 

 

繰り返し作業によって、実体験を長期記憶という糧にする

 

若手技術者のうちに体験したもの、
特に自らの手足を動かして体得した経験は一生の糧になります。

 

様々な課題に直面した際、
経験に基づく知恵が突破口を開く切り札になることを、
若手技術者は将来気が付くことになります。

 

 

手足を動かす作業自体が記憶定着には向いていますが、
それを繰り返すことによってさらにそれが研ぎ澄まされた形で、
若手技術者の頭と体に入り込み、血肉となります。

 

こうして得られた経験は外部情報に惑わされない、
若手技術者自身にとって絶対的なものとなります。

 

 

 

繰り返している作業経験に基づく発言は評論家と一線を画す

 

もう一つ重要なのが、手足を動かす作業を繰り返している経験を有する若手技術者の発言は、

 

「非常に具体的で説得力がある」

 

ことです。

 

 

 

Web検索や生成AIはもちろんですが、専門書の内容由来の発言とも別物となります。

 

 

若手技術者の実経験と、Web検索や生成AI、専門書の内容と異なることもあるでしょう。

 

こうして若手技術者は、

 

「自分が絶対的に信じられる実践力の伴う知恵というのは、
手足を動かした実経験でしか得られない」

 

ということを体感することになります。

 

 

 

 

 

実体験に基づく能動的知的探求心と当事者意識醸成が技術専門性向上の鍵

 

ここまで述べてきた通り、技術専門性を高めるにあたり、
”手足を動かす作業”によって得られる重要なものは、

 

「実体験に基づく能動的知的探求心と当事者意識醸成」

 

にあります。

 

 

能動的知的探求心や当事者意識が芽生えれば、
研修型教育の効果も圧倒的に出やすくなります。

 

 

そして”手足を動かす作業”が終わった後に行う様々な技術業務を進めるにあたっても、
作業を通じて得られた経験を基本に様々なことを具体的に考えることができるようになるでしょう。

 

 

若手技術者の状況をこのような形で整えることができれば、
様々な要素で構成される技術専門性を高める取り組みを始める段階にきた、
とリーダーや管理職は判断できるといえます。

 

 

 

 

 

最後に

 

若手技術者の技術専門性を高めるには”手足を動かす作業”という、
一見すると真逆のことに取り組ませるのは意外だったかもしれません。

 

 

若手技術者はロボットではなく人間です。

 

個性も様々で理解力にも差があります。

 

 

しかし一つだけ間違いなく言えることは、

 

「技術業務に関する実経験が無い若手技術者は将来評論家になりやすく伸び悩む」

 

ことです。

 

 

 

知らないという若手技術者の強みは”手足を動かす作業”の繰り返しにより、
能動的知的探求心と当事者意識醸成を実現することにあります。

 

 

自分は何のために仕事をしているのか、この仕事の意味は何か、といったことを考える

 

「余裕を与えない」

 

ことも重要です。

 

 

 

若手技術者のうちは難しく考えすぎず、目の前のことに没頭するほうがずっと有意義なのです。

 

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

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