仕事に必要なスキルが足りないと悩む若手技術者に実践させるべきこと

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悩める若手技術者には手元業務集中と技術報告書作成に取り組ませる

 

 

若手技術者の仕事に対する悩みに対する声を拾っているアンケート結果がありました。

 

 

※参照情報

 

【REPORT】20代30代の若手技術者が抱える仕事の悩み(カンサポ/関西エンジニアコミュニティ)

 

 

 

興味深い一方で、実際に当社が技術者育成の観点から支援する企業で若手技術者から聞こえてくる声と概ね一致している、という印象を持ちました。

 

 

今回は「仕事に必要なスキルが足りない」という悩みに対し、
リーダーや管理職がどのように取り組むべきかについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

日々の仕事の中で力量の不足を実感している若手技術者

 

特に入社5年未満の若手技術者の方々は、日々の業務がうまく回せずに苦労することが多いと思います。

 

わかりやすいところから言えば「技術的専門用語がわからない」から始まり、
業務フローがわからない、
担当者の顔と名前が一致しない、
ビジネスの基本マナーができていないなど、
技術系社員としての課題に加え、組織での人脈不足や社会人としての課題を感じることが多いようです。

 

 

 

一般社会人としての常識の不足よりも技術的な専門知識の不足を軸に悩む若手技術者

 

今回のアンケートでも出てきた「スキル」という単語。

 

 

このスキルという単語は意味が大変広い。

 

 

上記の通り、技術系社員ならではの技術的な専門スキルから、
社会人としての「て、に、を、は」のような常識まで含まれています。

 

 

 

しかし、多くの技術者達が考える”スキル”とは、

 

 

「技術的な専門知識」

 

 

を意識していると推測されます。

 

 

 

これは技術者が専門用語などの知識量が重要であるという、
専門性至上主義を掲げていることによります。

 

 

 

若手技術者に技術的に高い専門知識が求められる仕事は少なく、一般常識が重要なものが多い

 

全てとは言いませんが、若手技術者が本当の意味で技術専門性が求められる仕事を担当することは少ないと思います。

 

 

仮にそのような業務に取り組むとしても、上司が主担当になる等の体制となっているはずです。

 

 

 

しかし実際に仕事を進めようとすると、若手技術者にそもそもの基本が足りていない状況が露呈することが多いはずです。

 

 

 

代表的なものは「報告・連絡・相談」です。いわゆる報連相です。

 

 

目の前の仕事がどこまで進んだのかを上司に報告することを怠る、
何か問題が起こった際に連絡をせずに独自で解決しようとする、または放置する、
相談せずに一人で考え込んで仕事を止めてしまう、
といったのは若手技術者を部下に持つリーダーや管理職であれば、
部下の上記の言動を一度は経験したことがあると思います。

 

 

リーダーや管理職は若手技術者に対して、
技術的なスキル以前に上記のような「一般常識の欠落」に苦労するはずです。

 

 

この一般常識の欠落が業務推進の効率を著しく低下させます。

 

 

 

 

 

一般常識を技術的スキルとすり替えて経験不足、または時間が不足すると主張する若手技術者

 

上記の通り業務推進効率低下の主原因は、技術的な専門スキルというよりも社会人としての一般常識の欠落にあることが多いです。

 

とはいえ一般常識の欠落を認めるのは、多くの若手技術者にとってつらいと思います。

 

勉学に励み、希望を胸に秘めて技術系社員として入社した若手技術者の方々が、
そもそも論の一般常識的な部分で躓くのは耐え難い屈辱と感じる可能性さえあります。

 

 

この状態に陥った若手技術者は社会人としての一般常識の不足を、

 

 

「技術的なスキル(主に技術的な専門知識)の不足」

 

 

と無意識に差し替えることが多くあります。

 

 

 

 

技術的なスキルであれば、それを知らなかったのは仕方がないと自らを慰めることができるからです。

 

 

技術的なスキルは高度なものであるという思い込みからきています。

 

 

高度なスキルが足りないのは、その習得に困難と時間が必要であるので致し方ないという思考回路で自分を納得させようとしていると考えられます。

 

 

 

 

もう一つのパターンは「時間が足りないから」という主張です。

 

 

時間があればできるが、時間が足りないからできないのだという主張の背景にあるのは、

 

 

「自分のスキルを含む能力が不足しているのではなく、純粋に時間が足りないのが問題なのだ」

 

 

と、時間の不足を原因として指定することで、自らの課題にスポットライトが当たらないようにしています。

 

 

 

 

この辺りの対策については過去のコラムで取り上げたことがあるので、
詳細についてはそちらをご覧ください。

 

 

 

※関連コラム

 

「考える時間が無い」と主張する技術者

 

 

 

 

 

リーダーや管理職が伝えるべきは手元業務完遂と技術報告書作成への集中

 

いずれにしても上記の話は、若手技術者が自尊心の低さを隠すために行っている言動です。

若手技術者の方々の気持ちを考えれば、頭ごなしに否定するわけにもいかないのが実情だと思います。

 

 

頭ごなしに叱るだけでは若手技術者のモチベーションが下がるリスクがある上、指摘や指導を含む注意を行うことそのものにエネルギーが必要であるためリーダーや管理職が消耗するためです。

 

 

このような時、若手技術者に対してリーダーや管理職が伝えるべきは「手元業務完遂」と「技術報告書作成」の2点への集中です。

 

 

 

手元業務完遂はOJTによる一般常識を含む基本スキル向上に不可避

 

若手技術者が不足しているであろう社会人としての一般常識を含む基本スキル向上は、

 

 

「OJTが向上に最も効率的」

 

 

です。

 

 

 

試行錯誤や失敗、そして手本となる方との出会いを通じ、
社会人としての一般常識は最も効率的に向上します。

 

 

 

そのためには、あまり難しいことは考えずにまずは目の前の仕事をきちんと完遂させる、
ということを若手技術者は心がけるべきです。

 

 

 

あれこれ悩む前にまず目の前の仕事をきちんと完遂させることを、
若手技術者に理解させることがリーダーや管理職にとって求められます。

 

 

 

技術報告書を書くというスキルを若いうちに高める

 

技術者の普遍的スキルの最上位に位置する論理的思考力。

 

 

その論理的思考力を最も高めるために必須のスキルが、もう一つの普遍的スキルである「技術文章作成力」です。

 

 

 

この取り組みは若いうちに行わせるべきです。

 

 

 

なぜならば、

 

 

 

「技術文章作成力の向上効率は年齢と強い反比例の関係にある」

 

 

 

ことによります。

 

 

 

 

※参照コラム

 

若手技術者人材育成に適した時期

 

 

 

 

若いうち、より具体的には20代後半までにある程度、技術文章を書けるようになっておかないと、その技術者は必ず将来苦労することになります。

 

 

そしてこの問題は技術者本人に加え、周りの技術者やリーダー、管理職に対しての問題に発展する可能性が高いです。

 

 

・業務実績の要点を報告できず、話が発散、支離滅裂になりやすい→要点抽出力の不足

 

・技術的な業務の記録を残すことができない→情報蓄積力の不足

 

・自らの業務を俯瞰的にみることができない→業務視点高度の不足

 

 

 

といった課題が顕在化するからです。

 

 

 

上記で述べた3つの「不足」は、すべて技術文章作成力、論理的思考力と密接に関係しています。

 

 

 

こうならないために、若手技術者のうちから論理的思考力と技術文章作成力を鍛錬しておく必要があります。

 

 

 

当該鍛錬に最適なのは

 

 

技術報告書の作成

 

 

です。

 

 

 

リーダーや管理職は日々の業務の細かい結果を、技術報告書という形で残すということを若手技術者に指示していください。

 

 

 

技術報告書の作成を取り入れると業務時間が延びるから、業務効率が下がるからといった批判が組織内外から出るかと思いますが、
まずは続けてみてください。

 

 

5年も続ければ、技術報告書が書ける技術者の集団とそうでない集団で雲泥の差がつきます。

 

 

 

社会人としての一般常識である報連相だけでなく、
技術的専門性の鍛錬が技術報告書作成によって実現できるからです。

 

 

 

詳細については過去の連載をご覧いただければと思います。

 

 

 

※参照情報

 

第5回 普遍的スキルの鍛錬に最適な技術報告書とは何か 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

 

 

 

 

若手技術者達は本人なりに苦しみながら成長しようとしています。

 

 

 

しかし具体的に何をすれば成長できるのかについてはイメージができていないことも多いのです。

 

 

 

今回ご紹介したような「手元業務完遂と技術報告書作成」を第一段階の取り組みとして、

 

 

「具体的に伝えること」

 

 

は、イメージできていない若手技術者にとっての一指標となる可能性があります。

 

 

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

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