”適切”な口頭報告は、技術報告書の様な書面作成による報告より難しい

公開日: 2026年7月13日 | 最終更新日: 2026年7月13日

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若手技術者の口頭説明では対応した試作品や合成品の状態が分からない

 

今回は若手技術者の口頭説明では対応した試作品や合成品の状態が分からない、
という状況の打開について考えます。

 

”適切”な口頭報告は、技術報告書の様な書面の報告より難しいことがキーワードとなります。

 

 

 

 

 

若手技術者が対応した技術業務詳細は当人しか詳細がわからない

 

化合物の合成や部品・製品の加工といった、
製造業企業の代表的な技術業務について、
その詳細は担当した技術者しかわかりません。

 

 

これは担当者が若手技術者であっても同じです。

 

 

技術業務の担当者の持つ情報量は、
リーダーや管理職と比べて格段に大きいのが普通なのです。

 

 

 

詳細まで把握しようとして若手技術者の枠を狭くしない

 

上記の状況を不安と思うリーダーや管理職は多いでしょう。

 

 

その対応として、

 

「若手技術者の業務の対応方法の詳細まで関与する」

 

という方針を示すリーダーや管理職もいます。

 

 

 

端的に言えば、

 

「常にリーダーや管理職の目の届くところで技術業務を対応させる」

 

ということです。

 

 

 

安全に関する業務はそのくらいの対応が必要に違いありません。

 

 

 

ただどれだけ小さな業務についてもあまりにも詳細のところまで関与していては、
若手技術者が対応できる技術業務の範囲も難易度も、

 

「リーダーや管理職の想定する範囲内に収まってしまう」

 

ことになりかねません。

 

 

 

これでは、

 

「若手技術者をリーダーや管理職の想定する枠内にはめてしまう」

 

ことになりかねません。小さくまとまってしまうともいえます。

 

 

 

リーダーや管理職のこの対応は技術者に固有の”安全地帯の確保”と同じと言えます。

 

 

ある程度のタイミングで若手技術者の対応する技術業務については、
任せながらもフォローするという流れを構築することが肝要です。

 

 

 

技術者の技術的内容に関する安全地帯への執着については、
過去のコラムでも述べたことがあります。

 

 

 

※関連コラム

 

技術者の育成や教育は何歳くらいまでにきちんと始めるべきかわからない

 

リスキリングが求められる時代の技術者育成指針

 

 

 

 

 

技術業務報告は書面がベストだが口頭報告で頻度を上げるのが技術業務コミュニケーションの戦略の一つ

 

若手技術者に少しずつ技術業務推進を任せるとして、
リーダーや管理職が必要と感じるのは、

 

「技術業務報告」

 

です。

 

 

指示した業務についてどこまで進み、
どのような結果が得られたか。
得られていない場合、どの程度の期間が必要か、
といった報告がこれに該当します。

 

 

技術者以前に社会人としての常識といえます。

 

 

 

※関連コラム

 

業務報告に関する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

 

 

口頭報告は報告頻度を上げるのに効果的

 

技術業務を若手技術者に担当させた場合、
リーダーや管理職はできる限り高頻度で報告を受けることを望むはずです。

 

 

状況に関する情報共有が早ければ早いほど、
その対応について指示が出しやすく、
必要に応じた軌道修正や支援の検討もできるからです。

 

 

報告を受けるリーダーや管理職の視点から言うと、
情報が限られる活字よりは口頭でのやり取りの方が情報を引き出しやすいという意味合いもあります。

 

 

よって技術業務報告を口頭で行うことは、
若手技術者にとっても必要なスキルと言えます。

 

 

 

口頭報告は技術報告書による報告より高度である側面もある

 

若手、中堅、ベテランの各技術者、そしてリーダーや管理職の方々と話している私の実感として、多くの方々は

 

「技術報告書の作成は、自分で対応する、指導する、どちらも難しい」

 

と考えているようです。

 

 

 

同時に、

 

「プレゼンテーションの様な口頭での説明の方がやりやすい」

 

という考えをお持ちの方が一定数以上いるとも感じています。

 

 

 

私自身はそう感じられること自体は理解できるのですが、
さて実際はどうかというと実は口頭報告の方が難しいはずです。

 

 

より明確に言えば、

 

「”適切”な口頭報告は、技術報告書の様な書面の報告より難しい」

 

となります。口頭報告の質を高めるのには、技術者にとって高度なスキルが必要となります。

 

 

 

短時間で頭の中で報告内容を再構成するには高い論理的思考力が必要

 

技術報告書は手書きだとしてもPC上で記載するにしても、
活字を眺めながら全体を見渡す”時間的猶予”がある程度あります。

 

しかし口頭報告は事前に十分な時間をかけて準備することは通常無く、
その場で行うはずです。

 

 

瞬時に多くの情報を俯瞰的に見たうえで報告構成を組み立てる力、
すなわち技術者の普遍的スキルの一つである論理的思考力は、
若手技術者には早急に身につけてほしい一方で、
一定以上の時間がかかるのが通常です。論理的思考力は簡単には向上しません。

 

そもそも口頭報告を採用する狙いの一つが報告頻度を上げることにあることを踏まえれば、
のんびり準備していては当該報告の意義が低下することがわかるはずです。

 

 

 

口頭報告では資料の準備をしない、させない

 

口頭報告ではスライドなどの資料を使用しないのが一般的です。

 

前出の通り報告頻度を上げるための口頭報告で、
資料を作成する時点で追加の準備時間が必要となります。
これでは口頭報告の良さが薄れてしまいます。

 

 

口頭報告レベルで使用するような資料は、
後から活用することが難しいことも多く、
蓄積資料としては活用しにくいのが口頭報告向けの資料準備を推奨しないもう一つの理由です。

 

そもそも口頭報告のために資料を準備する、またはさせるという考え自体が間違っています。

 

後活用の難しい中途半端な資料を作るくらいであれば、きちんと技術報告書を作成すべきです。

 

 

活字による記録が残る技術報告書の方が、
蓄積という観点で有利であることを忘れてはいけません。

 

この辺りは過去のコラムでも触れたことがあります。

 

 

※関連コラム

すぐ「資料を作って」と、若手技術者の口頭説明に対して言っていませんか

 

 

 

口頭報告の準備は最小で

 

口頭での技術業務報告にリハーサルなどを行う若手技術者も散見されます。
話すのが苦手と自覚している若手技術者に多い傾向があります。

 

 

リハーサル自体は技術プレゼンテーションでは必須ではあり、
慣れるまでは口頭報告でも同様の準備をする姿勢自体は悪くありません。

 

 

ただできる限りそのような準備は最小化する努力が求められます。
必要以上に時間をかけすぎてはいけません。

 

 

口頭報告では準備に時間をかけるよりも、
場数をこなし、慣れることが優先です。

 

 

 

以上の通り適切な口頭報告は高度な業務です。

 

若手技術者は短時間で口頭での適切な技術業務報告ができるよう、
瞬時に報告内容を頭の中で組み立てる鍛錬は継続して行うことが求められます。

 

 

 

論理的思考力を最も効率的に高める業務は技術報告書作成

 

どのような鍛錬をすれば適切な口頭報告ができるようになるのかと感じるリーダーや管理職、
場合によっては若手技術者の方もいるでしょう。

 

 

この回答にあたる論理的思考力の鍛錬について加筆をしておくと、
上記の口頭報告の鍛錬以上にやはり、

 

「質の高い技術報告書を多く書くこと」

 

が最も効率的です。

 

 

今までの私の技術者育成の経験で、
これ以上に効果的なものはありません。王道なしです。

 

 

 

言い方を変えれば質の高い技術報告書の書ける若手技術者の口頭での技術業務報告は、
そもそも事前準備が無くともわかりやすいのです。

 

 

論理的思考力の鍛錬の効率を求めるのであれば、
技術報告書の作成に軸を置くことを推奨します。

 

 

※関連コラム

 

技術報告書の書き方の鍛錬の第一歩

 

 

 

口頭での技術業務報告で難しいのは”状態”の説明

 

口頭での技術業務報告の話に戻ります。

 

 

既に述べた通り口頭報告には高度なスキルが必要である一方、
若手技術者とリーダー、管理職間の高頻度でのコミュニケーションを実現する意味で有用であることに違いはありません。

 

 

ただし口頭での技術業務報告には課題もあります。

 

 

その課題とは、

 

「状態の説明は難しい」

 

ことです。

 

 

 

外観や性状といった定性表現が基本となる内容の口頭説明は難しいことが多い

 

状態というのは例えば外観や性状です。

 

化学合成品であれば、

 

  • ・液体状態で、若干の黄色の着色が認められる
  • ・基本は白色粉体だが黒色の細かい粒子が混入している

 

といったものが一例です。

 

 

 

加工品であれば、

 

  • ・加工面に加工きずが若干確認されている
  • ・加工後に製品が凸にひずんでいるように見える

 

といったものが同例です。

 

 

どちらも

 

「何となく目に浮かぶようだが、状態の詳細理解には至らない」

 

とならないでしょうか。

 

 

定性表現が主になる状態の説明は口頭報告が苦手とするものの一つで、
画像を使用できる技術報告書などの書面報告にかなわない部分です。

 

 

 

ではこのような状態を口頭報告で明確にするには、
リーダーや管理職から若手技術者にどのような指示を出せばいいでしょうか。

 

 

 

 

 

状態の説明を実物を使用して行うのが最善策

 

最も効果的なのは、

 

「実物を使用させる」

 

ことです。

 

 

 

若手技術者による口頭での技術業務報告の中で、
状態に関する内容が含まれており、それ分かりにくいとリーダーや管理職が感じた場合、

 

「今の話を実物を使って説明して欲しいので、
ここに持って来るか、もしくはこちらから現場に出向く」

 

と若手技術者に伝えてください。

 

 

 

人間の理解度は視覚的に捉えられる情報密度に比例する

 

技術者はもちろんですが、
人間が理解できる度合いは視覚的に捉えられる情報密度に比例します。

 

 

その順番は、

 

「活字→画像→動画」

 

です。

 

 

 

口頭は視覚的に捉えられるものではないため(より正確には報告者のジェスチャーや表情から読み取れる部分もあります)、
これらの内容を補足する情報補足という位置づけとなります。

 

 

 

実物を使うことは、画像、もしくは動画に該当する情報を、
報告相手であるリーダーや管理職に”同じ目線”で提供できることになり、
情報伝達という観点で大変効率的です。

 

 

 

理解度が増せば技術的議論を誘発できる

 

報告を受けるリーダーや管理職の理解度が高まれば、
技術者育成で最も重要な技術的議論を誘発させることが可能となります。

 

 

リーダーや管理職から、

 

「この結果を見てどう感じたか」

 

といった投げかけを行い、若手技術者にも見解を求めることを是非行ってください。

 

 

 

目前にある実物に対して最も情報を多く有する若手技術者なりの考えを引き出すことはもちろん、
技術業務についてさらに重要かつ多くの情報をリーダーや管理職が得られることが期待できます。

 

 

 

 

 

まとめ

 

口頭での技術業務報告は報告頻度を高めるという観点で重要な取り組みです。

 

 

これを適切に行うには高い論理的思考力が必要ですが、
繰り返し取り組みながら当該力を醸成することも重要な技術者育成です。

 

 

そして口頭での技術業務報告では、
時として定性的な表現しかできない”状態”に関する情報共有に限界があります。

 

 

そのような場合は実物を使って報告させるよう、
リーダーや管理職から若手技術者に指示をし、
その実物を見ながら技術的な議論を誘発させてください。

 

 

 

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