技術報告書の書き方の鍛錬の第一歩 Vol.141

 

技術報告書作成の第一歩は目的の確認

 

 

当社のコラムやメールマガジンで繰り返し述べてきている技術者にとって必要な論理的思考力。

 

 

自らを第三者目線で見ることのできるその力は、
技術的真理に迫る、様々な要素の中から必要・重要なものを抽出する、
外的・内的要因のバランスを見ながら業務を推進する、
といった様々なベーススキルの基本となる大変重要なものです。

 

 

専門知識を知っていることこそ正義という文化で教育されてきた技術者は、

 

 

「知っているか否か」

 

 

だけにとらわれ、本質を見極める力が不足しているケースが多く、

 

・知らないことに対して臆病になる/自分の知っていることしかやろうとしない

 

・調べものばかりをしていて業務が前進しない

 

・わかりやすい点に飛びつくことで行き当たりばったりの技術評価ばかりで、本質である課題解決に向けたことが何もわからない

 

といった負のループに落ち込んでいくパターンが多いといえます。

 

 

 

このようなことにならないためには、
自らを冷静に見ることができる論理的思考力が不可欠です。

 

 

そして、この論理的思考力の醸成には

 

 

「技術報告書の作成」

 

 

が最も効果的で最短の対策になります。

 

 

しかしこの技術報告書の作成の必要性を仮に技術者本人とマネジメントが理解できたとしても、
なかなか取り組むのは難しいはずです。

 

 

まずは、何故難しいのかについて改めて考えてみます。

 

 

 

 

技術報告書作成スキル向上はマネジメントの論理的思考力の存在が大前提

技術報告書の作成に基づく論理的思考力の醸成には、

 

「マネジメント側の論理的思考力が必要条件」

 

ということが第一のポイントになります。

 

 

「技術報告書を書け」と、字数に直すと8文字の事を言うだけであれば誰でもできます。

 

小学生はおろか、幼稚園児でもいえることです。

 

 

本質的な観点は、

 

「技術報告書を作成させる際、何を最初に見るべきか」

 

ということです。

 

 

 

つまり、技術報告書を書けといった当人が、技術報告書の本質がわかっていないと、
育成される側の技術者が元々論理的思考力を有しているという例外を除き、
育成することはできないのです。

 

 

これも言いたい、あれも言いたい、これもおかしい、あれもおかしい…..。

 

 

技術者から上がってきた技術報告書を見たマネジメントは、
いうべきことがありすぎて何から言えばいいかわからないということになるはずです。

 

 

これを一つひとつ絨毯爆撃のように指摘すると、
技術者は最初の3分くらいしか話を聴かないでしょう。

 

 

誰でもできていないことを指摘されるのはつらいものですが、
加えて技術者の多くは上述した通り知っていることこそ正義という専門性至上主義を持つ場合が多いため、
プライドが許さないのです。

 

 

客観的にみればあまりにも勿体ない話ですが、
技術者に多い思考回路の「癖」ともいうべきところなので、
ある程度、最前線での業務実践経験を積み、スキルを上げ、
自尊心が高くならない限り抜け出せない底なし沼とも言えます。

 

 

 

 

最優先のポイントだけを伝えるのが肝

このような状況を踏まえマネジメントが考えるのは、

 

「技術報告書の書き方の鍛錬の第一歩は何から取り組ませればいいかがわからない」

 

ということだと思います。

 

 

言い方を変えれば、

 

 

「技術報告書の本質を理解させるには何が最優先か」

 

 

ということになると思います。

 

 

 

これがとても重要な観点で、本質中の本質といえます。

 

 

 

結論から言うと

 

「技術報告書の目的を明文化させる」

 

となります。

 

 

 

技術報告書では目的が最重要です。

 

 

さらに言うとこれを言葉ではなく、活字として表現できるということがポイントになります。

 

多くの業務において、考えるべきこと、配慮すべきことは無数にあります。

 

技術報告書を書くような技術的な実験、評価、調査も同じです。

 

 

 

しかし、そもそも論として大切なのは、

 

 

 

「何故、その業務を行っているのか。そして、どこを目指すのかというゴールを意識する。」

 

 

 

ことです。

 

 

 

 

これらの内容を指すのがまさしく「目的」なのです。

 

 

 

よって技術報告書を書かせる前に、

 

「今回技術報告書をまとめるにあたり、目的を明文化してみたらどうか。」

 

ということをマネジメントは提案してみてください。

 

 

 

この目的がマネジメントの想定からどのくらいずれているのかを確認する、
そしてずれの部分をマネジメントが修正するということを技術報告書を書く前に行うことで、
技術報告書の作成の方向性はかなり安定します。

 

 

 

場合によっては、技術報告書以前に、
当該報告書作成に関わる業務指示を出す時点で、
目的を確認するということも必要かもしれません。

 

 

 

技術者が技術報告書を書けるようになる第一歩は目的を明文化できることである。

 

 

マネジメントはこの点を改めて認識いただき、
まずは目的の明文化とずれの修正から始めることが、
長い道のりである技術報告書の作成方法指導の第一歩だと考えます。

 

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

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