若手技術者からの相談や提案を阻害してしまう指示

若手技術者からの相談や提案を増やすには資料不要の30分議論が効果的

 

 

若手技術者からの相談や提案が少ないと感じたことのある、
リーダーや管理職、または経営陣の方々は一定数いると思います。

 

 

そのように感じた方々に自らの言動として振り返ってほしいのが、
若手技術者に

 

 

「資料を作って」

 

 

と言っているか否かです。

 

 

 

今日は若手技術者の相談や提案の足かせとなる、
資料作成の要求の悪影響と、
相談や提案を促進する若手技術者育成について考えたいと思います。

 

 

 

 

 

資料作成を要求する心理は時間浪費と頭脳負荷を回避したい心理背景がある

 

最初に理解すべきは、資料を作ってほしいと要求してしまうリーダーや管理職の心理です。

 

 

 

個人差はあるものの、その考えの根底にあるのは

 

 

「自分の時間を使いたくない、そして自分で頭を使って考える負担を強いられたくない」

 

 

というものです。

 

 

 

 

その考えは間違っていると言いたいのではありません。

 

 

まずはその心理をリーダーや管理職、場合によっては経営陣が、
上記で述べた内容について大なり小なり当てはまることを理解することが、
対策の必要性理解の一助になることを述べたいだけです。

 

 

 

相談や提案を行う若手技術者は頭が整理できていないことが多い

 

相談や提案というのは、必ずしも当人の頭の中が整理できている状態とは限りません。

 

 

むしろ、頭の中が整理しきれない状態だからこそ相談をしたいと思うはずで、
提案は試行錯誤の結果出てくるものなので抜け漏れもあり、
場合によっては思い込みという近視的視点により方向性が間違っていることもあります。

 

 

このように若手技術者が相談や提案をしようとする段階では、
当人の頭の中は整理できていない場合が多いのが実情です。

 

 

 

頭を整理するにあたって第三者目線は大変効果的

 

頭の整理に必須といわれるのが、

 

 

「自分の考えを発言する(発信する、アウトプットする)」

 

 

ことです。

 

 

 

これはまさにその通りで、外に出すことで自分の考えを改めて認識することができます。

 

 

 

しかし、単に発信するだけでは不十分です。

 

 

 

 

さらに重要なのは、

 

 

「その発言に対する”応答”を得ること」

 

 

です。

 

 

 

ここでいう発言をするのが若手技術者、
そして応答をする役割を担うべきが、
本来であればリーダーや管理職になります。

 

 

 

頭の整理を促す応答には時間捻出と頭脳的労力が必要

 

応答が必要であるとわかっていても、
リーダーや管理職が実際にやろうとすると大変かもしれません。

 

 

場合によっては何を言いたいのかわからない若手技術者の発言を紐解き、
それを本人に確認しながら、
若手技術者が言いたかったことを伝えるという作業を繰り返すためです。

 

 

相手の言いたいことに集中して耳を傾けるというのは、
それ自体が労力であることに加え、
更にそれを言い換える等して整理を後押しするのは、
大変な頭脳労働が必要です。

 

 

加えてそのような対応自体に時間がかかるでしょう。

 

 

管理業務等で時間が足りなくなりがちな管理職にとって、
時間捻出という課題も出てきます。

 

 

 

 

このような時間捻出と頭脳的労力を踏まえれば、

 

 

「言いたいことを資料にまとめてからまた来てくれ」

 

 

と言いたくなるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

資料作成という指示の問題

 

「言いたいことがよくわからないから、資料作って」

 

 

そのような指示でそれなりの資料を作れる若手技術者に囲まれているのであれば、
それで問題ないでしょう。

 

 

しかし仮に対応できたとしても、若手技術者は内向きの資料作成に時間を割かれることになり、
本来技術者として行うべき新しい技術の研究開発に手が回りにくくなります。

 

 

 

技術者の役割は基本的には技術の進歩や新たな発見に尽力することにあり、
若いうちこそ上記のことに時間を使わせるべきです。

 

 

にもかかわらず内向きな資料作成に忙殺されることで、
有望な若手技術者ほど技術的な観点での成長が見込めない職場に見切りをつけることについては、
改めてここで述べるまでもないでしょう。

 

 

そのため、資料作成という対応は最小限にすることが鉄則です。

 

 

 

頭が整理できていない若手技術者に資料作成を要求すると時間だけが経過する

 

別の観点からの問題として、
資料作成を指示した側が資料のイメージや要望事項を理解できていない可能性があることです。

 

 

 

資料作成、一般的な理解でいうスライド資料を作成するにあたっては、
スライド資料を作成する前段階で「企画書」が必須です。

 

 

企画書というのは、どのような流れでスライドを組み立てるかの設計図であり、
技術者が例えば技術的な内容を含む技術プレゼンを行う場合、
技術的なポイントや強みに加え、それらの解説を盛り込みながら、
技術を基軸とした議論展開の方針を示すものです。

 

 

 

このようにプレゼン資料を作成する前段階として作成する企画書は、
スライド資料全体を俯瞰して見られる視点が必須で、
言い換えれば十分に頭の中が整理されていないと作成することができません。

 

 

 

多くの若手技術者は企画書自体を作成せずにスライドを作り始めるようですが、
その内容が右往左往していてわかりにくい、
ということを感じた方も多いのではないかと思います。

 

 

 

既述の通り頭の中が整理できていない段階で資料を作成してほしい、
と言われてもどのような資料を作ればいいのか、
作成者である若手技術者はわからないでしょう。

 

 

ましてやスライド資料の企画書の基本構成を知らなければ、
企画のやり方さえわかりません。

 

 

 

この状態では、若手技術者が資料作成という要求に対して立ち止まってしまい、
時間だけが経過することは想像に難くないと思います。

 

 

 

 

では、若手技術者の相談や提案を明確化させるためには、
どのような対策を打てばいいのでしょうか。

 

 

 

 

 

資料作成が不要で口頭と手書きを基本とした初期議論の場を設定する

 

結論から先に言うと、

 

「スライド等の資料作りを基本的にやらせず、
ホワイトボードを使い口頭を主とした”議論”を通じ、
若手技術者の頭の中を整理させる”初期議論の場”を30分限定で設定し、
若手技術者に求める情報を明確化する」

 

 

という事前対応を行うとなります。

 

 

 

事前打ち合わせといえるかもしれません。

 

 

 

言及内容の詳細について述べます。

 

 

 

スライド資料作成を求めないのは若手技術者の感じるハードルを下げるため

 

スライドなどの資料作成は既述の通り、
大きの弊害が生じます。

 

 

加えて、資料を作成しなくても若手技術者はリーダーや管理職とのコミュニケーションを取れる、
ということを理解させる狙いがあります。

 

 

 

リーダーや管理職が目指すは、
若手技術者との高頻度のコミュニケーションです。

 

 

毎回密である必要はありません。

 

 

技術者間のコミュニケーションに求められるのは、
密度よりも頻度です。

 

 

報告や連絡をしやすいという関係を作ることこそが第一歩なのです。

 

 

 

資料作りを不要とすることで、若手技術者が相談や提案をしようとした際、
リーダーや管理職に話をしやすくするなると期待されます。

 

 

 

口頭を主とするのは頭の整理にはそれ相応の情報のやり取りが必須のため

 

技術者は基本的に活字で情報を伝える力量が重要である、
というのが当社の考え方です。

 

 

しかし、その前提にあるのは

 

 

「技術者が自分の頭の中である程度の試行錯誤ができ、
それを整理した状態で発信できる」

 

 

ことです。

 

 

 

 

よって、若手技術者を中心に、
技術者は技術報告書作成を通じた技術文章作成力を徹底的に鍛錬することが求められます。

 

 

 

しかし相談や提案をするにあたっては、
何よりスピード感が求められることが多い。

 

 

 

その状況を踏まえれば、情報のやりとりという試行錯誤に、
リーダーや管理職が協力することで、
若手技術者が自らの言葉で発信することを促すことが妥当です。

 

 

本来自分の頭の中で行わなくてはいけないことに、
リーダーや管理職が手助けをするイメージです。

 

 

 

口頭でのやり取りは情報量を多くすることに効果的です。

 

 

情報の量が多くなることで、
必然的に頭の整理につながる試行錯誤が行われることになります。

 

 

 

口頭でのやり取りを主としながらも活字の要素も取り入れていく

 

しかし口頭だけだと言葉に依存してしまうことで、
本来身につけてもらいたい活字をベースとした思考の整理ができなくなります。

 

 

よって、ホワイトボードなどの”手書き”の媒体を使った活字でのやり取りを補足的に用い、
議論の内容を若手技術者にどんどん書かせます。

 

 

 

書くことで頭が整理されることを、
若手技術者も感じるはずです。

 

 

 

この繰り返しは、活字をベースに自らの考えをまとめるという、
試行錯誤の重要な鍛錬にもなるのです。

 

 

 

時間を限定するのは緊張感と集中力維持、並びにリーダーや管理職の時間捻出への配慮

 

無限に時間があるのであれば、
ここで提案するような事前議論は長い時間をかけてやっていただきたいと考えています。

 

 

しかし、それではリーダーや管理職の時間的負担が大きすぎて、
実現が遠のくでしょう。

 

 

そこで、時間は30分ほどに限定してください。

 

 

最初に終わりの時間を明言すると良いと思います。

 

 

 

本格的な頭の整理をする議論において、
人が持続できる集中力は30分程度が限界だというのが、
当社の技術者育成においても感じているところです。

 

 

技術者育成において、
時間制限による緊張感が重要と繰り返し述べているのも、
上記のような理由が背景にあります。

 

 

時間制限による緊張感の重要性については、
過去のコラムでも触れたことがあります。

 

 

※関連コラム

 

技術者の話が長くて何が言いたいのかわからない

 

緩慢な働き方で若手技術者の成長が実感できない

 

 

 

事前議論では若手技術者に何を求めるのかを明確に伝えることを到達点とする

 

事前議論が、若手技術者の頭の整理だけで終わってはいけません。

 

 

事前議論は、報告書やスライド資料等、何かしらのアウトプットにつなげるにあたり、
何が必要なのかを精査する場だからです。

 

 

このように何かしらの形に残さないと、
相談や提案が記録として残りません。

 

 

 

これができないと、多くの製造業企業の直面課題である技術の伝承ができません。

 

 

 

よって、30分の時間の最後の5分程度は

 

 

「今回の相談(提案)について、次の点を盛り込んで報告書(スライド資料)を作成するように」

 

 

という言葉を皮切りに、若手技術者に対して口頭で情報を伝え、
それをその場で紙やホワイトボードに書かせます。

 

 

 

若手技術者はその内容を基本に、
相談や提案に関して必要な情報を盛り込んだ資料作成に取り組むこととなります。

 

 

こうすれば相談事項の解決、
または提案の前進に何が必要なのか若手技術者は理解の上で、
資料作成等の業務を進めることができます。

 

 

 

リーダーや管理職の事前対応は、
結果として技術者の普遍的スキルの一つである、
若手技術者の企画力醸成支援につながるといえます。

 

 

 

このような技術者育成を通じ、
若手技術者が積極的に相談や提案を行う雰囲気を作ることができるでしょう。

 

 

技術部隊の活性化に加え、
若手技術者の定着率を高めるにあたり、
上記の対応は効果があると考えます。

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

資料を作っておいて、という指示はリーダーや管理職としては大変楽ですが、
若手技術者の普遍的スキルの鍛錬には適していません。

 

 

 

若手技術者が相談や提案をする際、
どのような情報が必要なのかを自ら試行錯誤し、
報告書やスライド資料に落とし込むことは、
技術業務推進では不可避の対応でしょう。

 

 

 

 

その成長を若手技術者に促す意味でも、
リーダーや管理職は今回紹介した事前議論の場を設定し、
求められる情報明確化の支援をすることが、
技術者育成の観点でいうと本質と言えます。

 

 

 

是非、職場で実践いただければと思います。

 

 

 

 

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