技術者の新卒採用の募集を出しても理系学生が応募してくれない

公開日: 2025年1月27日 | 最終更新日: 2025年1月28日

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新卒採用で優秀な理系学生を採りたければ担当させたい技術テーマとその推進期限を明確に伝える

 

 

今回は技術者の新卒採用の募集を出しても理系学生が応募してくれない、という問題について考えます。

 

 

 

 

 

急激に変化する理系学生採用事情

 

一昔前までは、新卒採用で優秀な学生が入社してくれないことが主な悩みでした。

 

 

しかし昨今は、

 

「そもそも募集しても理系学生が応募してくれない」

 

状態が急増しています。

 

 

 

当社は零細企業から従業員数万人以上の企業まで支援していますが、
上記の課題に直面する頻度について、
企業規模と強い負の相関がみられることを感じます。

 

 



企業知名度が、理系学生の応募のきっかけになっていることを考えれば当然の結果とも言えます。

 

 

 

 

 

昨今は採用活動においても専門のコンサルタントが付き伴走しながら助言を行うのが普通

 

新入社員を採りにくい状況が続く中で一般的になりつつあるサービスがあります。

 

 

採用募集活動を受託する企業に属する社員が、
コンサルタントとして採用活動を支援するというものです。

 

 



このようなコンサルタントの方々は、
昨今の学生側の要望を常にヒアリングして更新しており、
莫大なデータと人工知能などを用いながら、
適した採用文言を採用希望企業側に提案する、
というところまで行うようです。

 

 

良い人材は昔以上に奪い合いの状況です。

 

 

 

若手技術者と会話をして感じるのがエシカルへの強い関心

 

企業規模や業界を問わず、
若手技術者にある程度共通する考え方が、

 

「エシカルへの強い関心」

 

です。

 

 

 

エシカルとは、

 

「法的な縛りはなく、人間が持つ良心から発生した社会的な決まりごと」

 

とのことです。

 

※参照URL

 

一般社団法人エシカル協会

 

 

 

当社の支援する企業で実際に話をしていても、
若手技術者だけではなく、30代の技術者でも類似の考え方を示す傾向にあり、
これは教育の影響によるものかもしれません。

 



よって、エシカルについて企業はどのように取り組んでいるのか、
という姿勢を示すことは若手技術者の入社において重要な観点の一つになります。

 

前出のコンサルタントも、
この辺りに関する助言を行うことも多いかもしれません。

 

 

 

採用支援のコンサルタントが重視するのが働きやすさ

 

これは私が実際に非常勤講師をしている大学の学生と話していても感じることですが、
あまり厳しい仕事はやりたくない、
同じことをやるのであれば労働時間が短く、給与は高いほうがいい、
ということを望んでいます。

 

 



自分自身が学生の時を振り返れば似たようなことを考えていたと感じるため、
今の時代の学生だから、ということではないと思います。

 

 



そもそも本格的に仕事をしたことが無いという経験不足を考慮すれば、
致し方ないのではないでしょうか。

 

 

このような心理に訴えかけることを目指すため、
採用活動を支援するコンサルタントの方々は、
働き方やすさを前面に出すことを新卒採用を行う企業に提案することが多いようです。

 



よって以下のような項目の文言が、
新卒採用に関する情報として羅列されるのではないでしょうか。

 

  • 勤務時間、平均残業時間
  • 休日休暇
  • 待遇・福利厚生
  • 資格取得支援 等

 

 

若手技術者にとって大変重要な情報であるため、
記載することに全く異存ありません。

 

 

ただ募集する側が理系学生や第二新卒の若手技術者のように、
今後、”技術”で企業を担う人材であることを想定した場合、
果たして上述の情報で十分なのでしょうか。

 

 



ここから技術者育成の観点から、
理系学生に応募してもらい若手技術者として採用するために、
採用企業側はどのようなことに取り組むべきかについて述べます。

 

 

 

 

 

労働条件に関する情報だけでは、募集をかけている企業の”技術的な特徴”が何も見えない

 

理系学生の新卒採用において必ず理解しなければならない点は、

 

「理系学生は入社後、”技術”で企業に貢献する命題を抱えていると認識している」

 

ことです。

 

 

 

将来戦力になるような優秀な理系学生ほど、
本観点に関する意識が高いと考えます。

 

 

つまり技術に関する強い主張がないと、
名の知れた大企業を除き、
理系学生が応募をする確率は低下するはずです。

 



入社後に若手技術者として勤務することを想定している理系学生の方々から見ると、
技術に関する要望の情報が無ければ、
企業側が自分たちに対して技術的に何を期待しているのか全く分からないからです。

 

よって、採用要件の中に”技術的な観点”を入れるのが必須です。

 

 

 

 

 

技術的な観点は想定される”技術テーマ”の明示で担保する

 

技術的な観点とは何でしょうか。

 

 

ここで是非採用募集要件に入れてほしいのが、

 

「技術テーマの明示」

 

です。

 

 

 

以下のようなものは一例です。

 



「当社の基幹技術である○○を応用し、
△△という世界で前例の無い新機能を発現するための研究開発テーマに取り組んでいただき、
20XX年までに□□という製品を上市させるプロジェクトメンバーとして活躍いただきます」

 

 

注目すべき観点について触れたいと思います。

 

 

 

基本となる技術を有する一方で、それを土台に新しい技術創出に貢献してもらいたいという意思を示す

 

まず自社には技術があることを示します。

 

 



これは、採用する企業側に技術力があることを理系学生に理解してもらう一助となります。

 

 

その上で、

 

「今までにない”新しい技術”を創出してほしい」

 

という0を1にすることを求めると示します。

 

 

 

理系学生が就職する際にイメージするのは、
自分なりに何かしらの”成果”を出し、
それにより成長するという姿です。

 

 



特に新しいものを創出するというキーワードは、
研究開発に限らず優秀な理系学生を引き付けるにあたり重要な文言です。

 



同時に採用する企業側は、
若手技術者として入社した理系学生に対し、
実際に0を1にするチャンスを早期に与えることが求められます。

 

これが企業の理念でいう”挑戦”という一つの形です。

 

挑戦は掛け声だけでは意味がありません。

 

 

 

時間軸を入れる

 

具現化できる研究開発テーマには必ず期限があります。

 



過去のコラムや連載で何度も述べましたが、
若手技術者はこの時間軸の厳しい技術業務に取り組ませ、
実践を通じた”知恵”を身につけることが求められます。

 

 

これが若手技術者の即戦力化に向けた唯一の方法です。

 

 

※関連コラム

 

将来研究開発を担う若手技術者の育成には中長期の研究は適さない

 

緩慢な働き方で若手技術者の成長が実感できない

 

第10回 若手技術者があらかじめ決めた時間軸で期待する結果を出せない 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

入社間もない若手技術者にすべてを押し付けるというわけでは決してありませんが、
適宜リーダーや管理職がフォローしながらも、厳しい環境に若いうちにさらされることが、
結果として若手技術者自身も求める”成長”に直結するのです。

 



中長期の技術テーマではなく、
明確な時間軸の決まった短中期のものに一緒に取り組もう。

 

そんな誘いが理系学生の心に響くに違いありません。

 

 



多くの優秀な理系学生が大企業だけでなくベンチャー企業に流れるというのも、
上記の話の裏付けの一つと理解して大きな問題ではないでしょう。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

採用活動については人材育成というよりも、
採用に関連する研修が一般的なものとして認識されると思います。

 

恐らくこのような研修では、
技術系社員の採用戦略について具体的な手法まで話が及ぶことは多くなく、
労働環境などの発信方法について研修で学ぶということが考えられます。

 

これに対して技術者育成を採用活動に応用する場合、
当該育成の重要ポイントである、

 

「若手技術者に目指させる姿を明文化する」

 

ことに注力します。

 

 



自社の有する技術的強みや特徴を踏まえた上で、
技術テーマという技術軸を採用活動に応用する支援を行います。

 



これは若手技術者育成の先を見据えて、
リーダーや管理職を指導することにもつながります。

 



若手技術者にあてがう技術テーマを企画するには、
技術チームの戦略が明確化されていることが必要条件となるためです。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する具体的な技術者育成支援の例

 

技術者育成コンサルティングとして対応します。

 



当該コンサルティングの基本は若手技術者の育成指導と支援が主ですが、
技術系部門が採用活動も主導する必要のある中小企業を中心に、
当該育成の一環として管理職の方々に対して助言や提言を行います。

 

 

最初に技術チームの戦略と現在推進中の技術テーマについて、
リーダーや管理職からヒアリングを行います。

 

これはチームとして技術的にどこに向かおうとしており、
その進行に際し、今どのような技術的業務を進めているのかを理解するのが目的です。

 



そのうえでリーダーや管理職から、
仮に理系学生が入社した場合にどのようなテーマに関わり、
そこで何をしてもらいたいのかについて意見を聴かせていただきます。

 



その情報を踏まえ、
リーダーや管理職に作成いただいた新卒採用の文言の草案を確認し、
文言の修正をご提案します。

 

ご要望に応じて、技術者育成計画案を立案することも可能です。

 

 

上述の対応により、
入社から技術者育成への流れをスムースにすることが可能となります。

 

同時に定期的に技術テーマへの若手技術者の関わり状況、
そこで生じた課題や問題について、
リーダーや管理職の方々と議論の上、対応策を考え、実行することを続けていきます。

 

 

 

 

 

まとめ

 

人材育成方法について、共通項がありつつも技術職と総合職で違うように、
新卒採用も職種によって異なるアプローチが必要です。

 



特に優秀な理系学生を採用して即戦力化したいのであれば、
取り組ませたい技術テーマの明確化と時間軸の明示は必須になります。

 

 



このことは採用企業側、
すなわちリーダーや管理職側にも技術業務の明確化と、
入社間もない若手技術者にフォローしながらも、
本気で技術テーマに取り組ませるという覚悟が求められます。

 

 



まずは少しずつ仕事を覚えてもらえばいいというスタンスではなく、
できるできないは別として若手技術者を一戦力として技術テーマに取り組ませ、
技術業務の実践経験を積むことによる知恵の獲得を目指す。

 

 



これを新卒採用活動を開始する段階でリーダーや管理職側が理解できていれば、
新卒採用の文言に言霊が宿り、
理系学生を引き付けるに違いありません。

 

 

 

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