若手技術者に自分を超える技術者になってもらいたいは正しいか

異業種技術で若手技術者を専門家に

 

 

若手技術者を部下に持つリーダーや管理職が若手技術者に望むのは、自分のわかる技術領域での成長です。

 

 

これはリーダーや管理職の方々自身が意識している場合に加え、意識していない場合もあるようです。

 

 

この心理の背景を考察の上、留意点について解説します。

 

 

 

 

 

元技術者は自ら得意と自負する技術領域で心理的安全性を維持しようとする

 

リーダーや管理職の多くの方々が望むのは、若手技術者の成長による戦力化です。

 

 

一刻も早く仕事を任せ、任せられた若手技術者が能動的に動くことで課題を見つけ、
その解決方法の検討と実施までできるようになってもらいたいことを考えれば当たり前といえます。

 

 

ただここでマネジメントをきちんと行うことや技術者育成に熱意のあるリーダーや管理職ほど、
陥ってしまう思考の癖があります。

 

 

それが、

 

「自分が得意とする、知っている技術領域の内部で若手技術者が動いてほしい」

 

というものです。

 

 

 

この心理の根底にあるのは、知っていることこそ正義という専門性至上主義です。

 

若手技術者を指導するリーダーや管理職の多くも技術者であることを考えれば、
若手技術者と同じ思考回路を部分的に持っているのは致し方ないことです。

 

 

自分の知っている技術領域であれば、

 

 

「もし若手技術者に何か問題が生じたとしても、自分から適切な助言や提言、場合によっては実務フォローができる」

 

 

という

 

 

「心理的安全性が維持された状態」

 

 

を求めるリーダーや管理職の心理的背景にあると考えられます。

 

 

 

心理的安全性は、

 

 

「一般的に自らの意見が言いやすいという状態」

 

 

という意味で用いられる場合が多いです。

 

 

 

しかし、技術者にとって”技術的指導権を握り、

技術的誤りの検知できる状態”で発言できるという観点から、
私は既述のリーダーや管理職の考え方は心理的安全性を求めていると解釈して問題ないと考えています。

 

 

 

※心理的安全性に関する参照ページ

 

心理的安全性とは?ぬるま湯組織との違いや高める方法を解説(NECソリューションイノベータ)

 

 

 

 

 

自分のコピーのような技術者を育てるだけでは技術組織は必ず停滞する

 

技術を売りにする企業にとって、自社が培ってきた技術的強みを伝承するということは大変重要です。

 

それが生命線であることに変わりは無いからです。

 

 

※関連コラム

 

技術伝承の難しさ

 

 

しかし、それだけにこだわりすぎてしまうのは将来性という観点からは懸念があります。

 

 

その理由を2点ほど挙げたいと思います。

 

 

 

理由1:技術は組み合わせによって向上、前進する

 

単独技術で企業組織が生き残るのは難しい時代になりつつあります。

 

かといってトレンドワードに流されて、自社技術とあまり相性の無いものを取り入れるというのも違います。

 

 

 

あくまで

 

 

「自社が培ってきた既存技術を徹底的に高め、伝承する」

 

 

という前提で、

 

 

「自社の既存技術と関連する他技術への展開を検討する」

 

 

という考え方が重要です。

 

 

 

 

このような動きをすることで技術的な視野が広がり、
異業種技術協業のような取り組みができるようになります。

 

 

この異業種技術協業こそが技術系企業が生き残り、成長するにあたり必須の考え方であると私は考えています。

 

 

 

自社技術だけにこだわっていては技術的視野が狭くなっていくため、

 

 

「技術的広がりという流れは出てこない」

 

 

のです。

 

 

異業種技術については過去に何度か取り上げたことがあります。

 

 

※関連コラム

 

第11回 技術的な飛躍に不可欠な異業種技術への好奇心 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

異業種技術協業に必要な顧客を求める+顧客になるという考え方

 

若手技術者にとって 異業種企業との連携 において最重要の姿勢

 

 

 

若手技術者を部下に持つリーダーや管理職は、
上述した状況を念頭に若手技術者育成に取り組まなくてはいけません。

 

 

 

理由2:自社既存技術と異なる技術領域で若手技術者を第一人者とすることでモチベーションを高めるのが第一歩

 

これも最近、様々な顧問先での若手技術者を見ていて感じることです。

 

全体的に若手技術者のモチベーションが上がり切っていないのです。

 

その理由の一つは、自らが戦力となっていないことに関するジレンマであると思います。

 

 

 

技術領域に依存しない技術者の普遍的スキルを既に持ち、
器用に成長していく若手技術者もいます。

 

 

 

普遍的スキルは私が最重要視するスキルで、
当社で展開する技術者育成における最重要の要素と位置付けています。

 

 

 

これはこれで重要なのですが、実情を踏まえると

 

 

「若手技術者の普遍的スキル醸成には時間が必要」

 

 

であることから、リーダーや管理職が若手技術者育成においてまず取り組むべきは、

 

 

「若手技術者の”モチベーション”を高める」

 

 

ことです。若手技術者達が当事者意識をもって仕事をする環境づくりが先です。

 

 

 

若手技術者のモチベーション向上に向け、
既に周りに百戦錬磨の技術者、リーダー、管理職のいる技術領域ではなく、
そこから派生する技術領域の検討を任せるのが一案です。

 

 

 

異なる技術領域であればリーダーや管理職だけでなく、
周りの技術者にとってもわからない部分も多いため、

 

「主担当である”若手技術者が第一人者”」

 

になります。

 

 

 

これにより、若手技術者は組織内で”専門家”とみなされます。

 

 

 

専門家とみなされれば組織内での立ち位置を確立することになり、
帰属意識も高まります。

 

 

 

帰属意識を高めることは、企業組織として最も手痛い”離職”を回避できる確率が高まります。

 

 

 

ここまで述べてきたような理由から、
リーダーや管理職は自分たちの強みとする技術にこだわらず、
関連する異業種技術領域に若手技術者を挑戦させる戦略が重要となります。

 

 

 

 

 

未知の技術領域に挑戦する若手技術者を丁寧にフォローする

 

ここまでの話を踏まえると、未知の技術領域がフィールドとなっていくことから、
リーダーや管理職が技術的観点から助言や指示をしにくいと感じる場合もあると思います。

 

自らが経験してきた技術であればともかく、
未知の部分が多い技術では言えることが限られるからです。

 

そういう意味ではこの状態になってリーダーや管理職も、
技術領域に依存しない普遍的スキルが求められるといえます。

 

知らない技術領域の話であっても、何が本質で、
それが自社にとってどのような切り口で必要かを理解する必要があるからです。

 

 

 

わからずに迷うという意味では若手技術者も一緒です。

 

 

 

リーダーや管理職は若手技術者を放置するのではなく、
進捗状況はどうかと声がけすることに加え、
もし課題や問題を感じればいつでも相談に来るように伝えることが必要です。

 

 

折角、若手技術者のモチベーションを高めることを狙って取り組ませたのに、
その若手技術者が行き詰まって自信を無くしては元も子もありません。

 

 

 

 

 

未知の技術領域に取り組むにあたり若手技術者に求められる前提条件

 

ここで述べたことはすべての若手技術者に当てはまるというよりも、

 

 

「リーダーや管理職が期待する技術を最低限は理解」

 

 

できており、かつ

 

 

「日々の業務で求められる雑用をこなせる」

 

 

という段階に到達している若手技術者が対象になることは言うまでもありません。

 

 

 

どこを最低限のラインとみなすのか、
どこまでの雑用ができればいいのかはリーダーや管理職が基準を作る必要があります。

 

 

 

ここでの注意点は上記の基準を低めに設定することです。
どうしてもリーダーや管理職は若手技術者達に求める基準を上げがちです。

 

 

 

 

実務経験が無い以上、いきなり高いレベルを求めるのは酷です。

 

 

基準をある程度低めに設定してモチベーション向上のきっかけとなる取り組みに触れさせることが、
若手技術者を組織の一員として機能させる重要な流れだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

 

一般的に技術者育成というと、

自社の基幹技術を土台にリーダーや管理職の強みとする技術を身につけさせ、
自分の分身のような技術者を育てようとすると思います。

 

 

もちろんこれがすべて間違っているというわけではありません。

 

 

むしろ基軸が無くなることを避けるという意味では、
現段階での強みとする技術を軸にする事は、
対極的視点での企業戦略として妥当と言えます。

 

 

 

その一方で若手技術者に求められるのは、
柔軟性とスピード感を武器とした

 

 

「自社の基幹技術の高付加価値化」

 

 

です。

 

 

 

 

この役割を早期に若手技術者に担わせるという柔軟性が、
今後の若手技術者育成戦略として重要になってくると感じます。

 

 

 

 

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