正解を求める若手技術者の問題

正解に固執する若手て技術者は様々な問題がある

 

 

 

最近の若手技術者の特徴として良く言われるものの一つに、

 

 

「正解を求めすぎる」

 

 

というものがあります。

 

 

 

 

今回はこのような若手技術者が増えている背景から入り、
当該技術者をどのように軌道修正すべきかについて、
マネジメント側の観点から考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

効率化への過信と情報過多が正解に執着する一因

 

何故正解を求める若手技術者が増えているのでしょうか。

 

この原因には様々な説があるようですが、
技術系企業の指導や支援を通じて感じたことを中心に述べてみたいと思います。

 

 

 

効率化という呪縛

 

最初に思い当たるキーワードが、

 

 

「効率化」

 

 

というものです。

 

 

 

良く言われる生産性向上等はじめ、
非効率なものは悪であり、無駄を省き、できる限り高効率で物事を進め、
捻出した時間でプライベートを豊かにするといった、
働き方改革やワークライフバランスといった考え方がそれを加速させていると感じます。

 

 

 

氾濫する玉石混交の正解

 

そして玉石混交の情報にさらされ、
その中には正解はこれだ、といった論調のものも多い状態にあることは、
今や多くの人にとって理解しやすいことだと思います。

 

 

 

当然ながら無駄なことをやりたくないのは、技術者ほぼ全員の共通認識でしょう。

 

 

 

また、その中で正解についての情報があればそれに飛びつきたくなる気持ちもよくわかります。

 

 

様々な年代の技術者に浸透する正解への執着

 

さらに言うとこの考えは実は若手技術者だけではなく、
中堅、ベテランの技術者にも浸透しているとも感じてます。

 

 

株主やオーナーからの「企業業績向上」という命題に対応するため、
無駄というぜい肉を落として効率を上げ、
筋肉質な体制にするのが「正解である」と盲信し、
下に対して高効率な考え方、やり方を指示するのがマネジメント以下の正義となっているはずです。

 

 

周りも上も「正解に固執する」といった状態では、
若手技術者も同様の考えに陥るのは無理もありません。

 

 

 

 

 

技術者の仕事の多くに正解は無い

 

大前提として理解しなくてはいけないことがあります。

 

 

それは、

 

 

「技術者の仕事の多くには正解がない」

 

 

ということです。

 

 

 

 

「正解がわからないからこそ、新しい技術が生まれる」

 

 

と考えれば当然です。

 

 

 

これは研究開発のようなテーマ単位の話だけでなく、
製造や品質保証等のどちらかというと日々同じことを行うことの多い部署であっても、
小さな改善への取り組み等、正解かどうかではなく、
やる価値があるといったことの実現に向け試行錯誤するはずです。

 

 

少なくとも、正解がない仕事だからこそ前進があるということに気が付くことが肝要です。

 

 

 

 

 

技術系の仕事で唯一正解としてわかっているのは定理になっているもの

 

しかし技術系の仕事で興味深いところは、
明確な正解もあるということです。

 

 

 

それは、

 

 

「定理となっているもの」

 

 

です。

 

 

 

 

定理というのは、真であることが証明されている命題、
または公理から導かれるものの中で特に重要なものといった表現をされるもので、
これは基本的に覆らない「正解」と解釈できます。

 

 

よって、ここでいう正解には定理の証明に用いられる補題や定理から導かれる系も含まれます。

 

 

過去にも「技術的理論に基づいた考え方が重要だ」ということを述べたことがあります。

 

 

 

理論の多くは定理(または系)となった要素を含む場合が多く、
少なくとも定理の要素は正解として扱うことができることから、
技術者は理論に基づいた思考が重要なのです。

 

 

・関連コラム

技術的な理論や評価結果無しに 選択肢から排除 してしまう

 

 

 

 

 

正解か否かは実際に頭や手足を動かさないとわからない

 

当たり前といえば当たり前ですが、
正解か否かは実際に技術評価等の技術業務を行わないとわかりません。

 

 

より正確には、この場合の正解というのは

 

 

「実務を行う技術者が知りたいことがわかる」

 

 

ということです。

 

 

 

場合によっては例えば同じ技術評価を行ったとしても、
知りたいことがその評価目的によって変化します。

 

 

このようなことを色々と考えることは大切です。

 

 

 

ただし考えているだけでは、上記の定理を除き本当に正しいことなのかはわかりません。

 

 

 

思考実験を繰り返すだけではアウトプットを得ることはできないのです。

 

 

 

 

 

正解を求める技術者2大問題は立ち止まってしまう/やらない理由ばかりいう

 

正解を求める若手技術者の大きな問題は2つあります。

 

 

1つは

 

「立ち止まる」

 

です。

 

 

 

具体的には、こうではないか、ああではないかといった思考実験を繰り返すだけで、
一向に実行動に移さないという状態です。

 

上記の通り正解かどうかは実際に技術評価等を行わないとわかりません。

 

 

2つ目は

 

 

「やらない理由ばかりいう」

 

 

です。

 

 

 

 

これはやっても無駄だ、参考図書や論文でこのような結果が出ている等、
主張の基本に”実業務回避の意思”が鎮座している状態を言います。

 

 

 

効率化が最重要視されがちな昨今では、

 

 

「業務時間を圧縮したことにより効率化に貢献した」

 

 

といったわかりやすい成果を出した技術者は評価されるでしょう。

 

 

 

 

しかし繰り返し述べた通り、実際に正解か否かがきちんわからないままにしてしまうと、
技術業務を通じた重要な知見が得られない可能性があるのです。

 

 

 

目先の効率化の実現というものと引き換えに重要なものを見逃しているリスクがあるということは、
正解ばかりを求める技術者には認識されないことが多いといえます。

 

 

 

 

 

正解に対する固執は若手技術者だけでなく、中堅、ベテラン技術者にも見られる

 

もう一つの問題は、若手技術者だけでなく中堅、ベテラン技術者、
そしてマネジメントも含めて正解に執着しているタイプの方が多いということです。

 

柔軟性のある若手技術者は、

 

「正解に固執してはいけない」

 

と軌道修正できたとしても、
周りの年長者の技術者が正解に固執しているようでは、
若手技術者はいつまでたっても正解に固執するという呪縛から解き放たれることは無いでしょう。

 

 

 

若手技術者への指導以前に、
中堅、ベテラン技術者、そしてマネジメントが正解に固執していないかを再確認することは必須といえます。

 

 

 

 

 

定理以外は技術評価計画を立案の上で実施し、結果を技術報告書としてまとめる

 

正解に固執するという文化を打ち崩すためには、

 

「抜け漏れなく評価を行い、何が正解か、何が不正解化を明確化する」

 

ということを

 

 

「まず、やってみる」

 

 

ということが大切です。

 

 

 

そして、もっと大切なのは何となく始めるのではなく

 

 

「実際に技術的業務を推進する前に技術評価計画を立案する」

 

 

ことです。

 

 

 

ここでも効率を求めてはいけません。

 

 

折角時間をかけて何かしらの業務を行うのであれば徹底した準備をし、

 

 

「後戻りのリスクを最小化する」

 

 

ということが極めて重要です。

 

 

技術評価計画は立案に論理的思考力をはじめとした技術者の普遍的スキルが必須であるため、
技術者にとっては負荷のかかる作業になります。

 

 

そのため当該業務を避けていきなり始めてしまうケースが多いのですが、
行き当たりばったりになることから結局はそちらの方が非効率になることが殆どです。

 

 

最悪のケースとしては結局正解か否かも判断できない、
という完全な無駄になるという可能性もあります。

 

 

・関連コラム
若手技術者の暴走や立ち止まり回避に効果的な 技術評価計画

 

 

 

 

また行ったものをやりっぱなしにすると、
その記録はどこにも残りません。

 

 

やはり適宜技術報告書として文書化し、
記録を社内の知見として蓄積するということがポイントとなります。

 

 

技術報告書作成も技術文章作成力をはじめとした高いスキルが求められ、
また作成者である技術者の方々が不慣れなうちは時間もかかりますが、
これを残しておくと同じような技術評価の再現を回避するなど、
後の世代にわたって高い業務効率貢献というメリットを企業にもたらすことになります。

 

 

 

 

 

 

 

正解を求めたいという気持ちは、
若手技術者だけでなく、技術者全体に蔓延しつつある考え方のような気がします。

 

 

特に中堅やベテランの技術者が正解に固執するタイプだと、
その考え方は若手技術者に強く影響を及ぼしてしまいます。

 

 

若手技術者が正解に固執しているのであれば、
マネジメントを含む中堅、若手の技術者の鏡として写しているだけという可能性もゼロではありません。

 

 

そのことも理解した上でマネジメント層は自己点検をした上で、
若手技術者を正解に固執せず事実を自分の目で見るという思考回路を構築させることが、
長い目で見た企業の目指すべき方向性になるのだと思います。

 

 

 

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