若手技術者の暴走や立ち止まり回避に効果的な 技術評価計画 Vol.115

技術評価計画 は若手技術者の効率的な業務推進の切り札

 

若手技術者が同じような技術評価を繰り返す、調べるばかりで前に進まず、業務推進効率が低いという場合に効果がある 技術評価計画 について、その背景と中身について考えてみたいと思います。

 

 

 

若手技術者の中には、
表に出すかどうかは別として、早く成果を出したいと急ぐ方もいます。

 

この言動の深層心理は

 

「社内において自分の存在価値を高めたい」

 

という所からくる場合が多いと感じています。

 

 

そのような心理は決して悪いわけではなく、
むしろ早く貢献したいという側面もあるため、

 

 

「任せながらもフォローする」

 

 

という技術マネジメントの基本を踏まえながら、
ここは若い力を引き出す意味でもチャンスを与えるべきだと思います。

 

 

 

若手技術者が前線に立って起こること

 

実際に若手技術者が動き始めて業務を進めるにあたり、
問題なく事が進むことはあまりなく、
色々なことが起こると思います。

 

 

その中で最も多く起こるケースは主に2つです。

 

「同じようなこと、不必要なことを繰り返す迷走」

 

または、

 

「自分が理解できないと進めず、完全に停滞する」

 

 

のどちらかです。

 

 

 

 

それぞれについてどのような状態なのか見ていきたいと思います。

 

 

 

 

 

同じようなこと、不必要なことを繰り返す迷走とは

とりあえず前に進むというパワープレー型の若手技術者に多いパターンです。

 

 

 

何もしないよりはいいのですが、
進み方に問題があります。

 

 

 

何故ならば、

 

 

・思いついたところ

 

 

・自分が興味あるところ

 

 

・自分がわかるところ

 

 

という

 

「完全に主観で走り始める暴走」

 

がその出発点にあるからです。

 

 

 

主観で走り始めた方向が、技術業務推進のあるべき方向性と合致していれば何の問題もありませんが、経験が浅い若手技術者が技術テーマを俯瞰的にみて、しかるべき方向を見定めるということはほぼ不可能です。

 

 

これは能力という話ではなく、

 

 

「経験していないためわからない」

 

 

という経験不足による問題です。

 

 

 

とはいえ、暴走したことによって過ぎ去った時間は戻ってきません。

 

 

働き方改革による業務時間管理の強化や感染症拡大による在宅勤務の浸透など、
今まで以上に業務時間の大切さが叫ばれる昨今、
限られた業務時間を無駄にするのは最小化したいというのが、
マネジメントの本音だと思います。

 

 

 

 

 

自分が理解できないと進めず、完全に停滞するとは

 

実務にこだわる技術者に多いアクションです。

 

 

最もわかりやすい応答例は、

 

 

「わからないことが多いので、まず本などで調べ始める」

 

 

等の、

 

 

「わからないと納得できず、または怖くて進めない」

 

 

という技術職固有の

 

 

 

「専門性至上主義が優先的になった状態」

 

 

 

です。

 

・わからない

 

 

・教えてほしい

 

 

という単語を発することができず、抱え込んでしまいます。

 

 

 

自分が

 

「知っている」

 

 

「わかっている」

 

 

ということを周りに認知してもらう、
という技術者としての自己存在認識に対する欲求がその深層心理にあります。

 

 

その為、周りと協業しながら、
未知の部分でも前に進むということが無いのです。

 

 

 

若手技術者が

 

 

「わからないことを調べ、前に進むヒントを得ようとする」

 

 

という能動的アクションそのものは大変いいことです。

 

 

 

ただしここで問題なのは、

 

「時間軸という概念が欠落している」

 

ということです。

 

 

 

時間が無限にあれば一人で抱え込んで、納得いくまで調べた上で進んでもいいと思います。

 

 

しかし上述の通り、今は時間をあまり無駄にできない時代になってしまっています。

 

 

自分で何も考えずに聞いて回る、
ましてや人に丸投げするだけではいけませんが、
同じくらい抱え込んでしまうのも問題です。

 

 

尚、丸投げするということに関する弊害は以下のコラムでも述べたことがありますので、
そちらをご覧ください。

 

※ 技術者にとって回避したい 丸投げ 思考

 

 

 

 

若手技術者が前に進む際の道しるべとなる技術評価計画立案こそが解決の鍵

暴走してしまうにしても、抱え込むにしても、
若手技術者に起こりがちなこれらの問題を回避することは、
マネジメントにとって不可欠の取り組みといえます。

 

 

では、マネジメントはどのように若手技術者を導けばいいのでしょうか。

 

 

結論から先に言うと、

 

 

「技術評価計画を立案させる」

 

 

ということになります。

 

 

 

 

始める前に、どのような技術評価や技術業務で前進するのか、
ということを明文化させるのです。

 

 

具体的には以下の内容が網羅されているのが重要です。

 

 

1. 技術評価の目的

 

 

2. 技術評価で得たいアウトプット

 

 

3. 技術評価のマトリックス表

 

 

4. それぞれの技術評価概要

 

 

5. 評価計画概要

 

 

 

 

それぞれについて詳細を説明します。

 

 

 

1. 技術評価の目的

ここがずれてしまうことが多いのが技術者です。

そもそも何のために評価を行っているのか見失わないためにも必ず明文化する必要があります。

迷ったら目的に立ち返るという技術業務の鉄則を理解させる効果もあります。

 

 

 

2. 技術評価で得たいアウトプット

このアウトプットは上記の技術評価の目的と1:1の関係に無くてはいけません。

 

目的からずれたアウトプットが示されていないか、
目的に書かれていない不要なアウトプットが示されていないか、
といったことを確認するのがポイントです。

 

 

 

3. 技術評価のマトリックス表

全体の評価を見渡すために作成します。

 

 

全体として一体何をやるのか、
そこに必要なものは何なのかという

 

「技術評価全体像を見渡せる」

 

 

ということが最重要です。

 

 

これにより、実務を行う若手技術者の視点を高くし、
そして広げることができます。

 

 

 

4. それぞれの技術評価概要

マトリックス表に書かれたそれぞれの評価は、
一体何なのかについてより詳細を示します。

 

 

技術評価手順にまで踏み込んだ記載が求められます。

 

 

 

5. 評価計画概要

詳細の計画は必要ありません。

 

 

ただ、およそどのようなステップをどのような時間軸で行うのか、
ということを記載します。

 

 

最も大切なのは

 

「どのような流れで評価は進んでいくのか」

 

そして、

 

「いつまでに結果が出るのか」

 

ということです。

 

 

 

 

 

技術評価計画 による効果

 

目的を理解した上で予め全体を見渡し、それをいつまでに推進し、
最終的なアウトプットはいつまでに必要なのか、
ということを若手技術者が理解すれば、

 

「勢いに身を任せた暴走」

 

 

「調べるばかりで前に進まない」

 

 

ということは回避できます。

 

 

 

何をすべきかを常に計画に立ち返ることで、
道筋から大きくずれることはなくなるでしょうし、
計画の段階である程度は調査が完了しているはずなので、
調べるばかりで前に進まないという状況は回避できます。

 

 

そして何より

 

「それがいつまでに必要なのかを理解することで、必要に応じたSOSを出せるようになる」

 

という技術者として学ぶべき必要なタイミングで助力を得るということも理解できるようになります。

 

 

さらに、マネジメントとしても計画に照らし合わせながら進捗状況を把握することも可能となります。

 

 

過去のコラムでも計画の重要性について何度か述べたことがあります。

 

 

詳細は以下をご覧ください。

 

※ 若手技術者から想定した時間軸でアウトプットが出てこない

 

 

※ 技術評価業務の 定性的・主観的 報告を改善するためには

 

 

 

 

 

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

 

 

パワープレー型にしても、慎重型にしても、
計画を一度理解させることで業務推進効率が上がることが期待されます。

 

 

状況が刻一刻と変化する中、
計画が無いと下への指示事項もぶれることとなります。

 

 

仮に変更などが生じるとしても、
常に計画と照らし合わせながら話をすることで、
計画のどこを変えるのか、それによってどのような波及が想定されるのか、
といった議論も可能になります。

 

 

まずは若手技術者に業務をやらせる際には、技術評価計画が重要である。

 

 

 

このことを改めてマネジメントの方に理解いただければと思います。

 

 

 

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