技術者の技術専門用語習得に効果的な議事録作成
公開日: 2022年5月23日 | 最終更新日: 2022年5月25日
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技術者は専門性至上主義という知っていることこそ正義、
という思想を有しています。
この専門性至上主義を有する技術者に対する対応については、
過去にコラムやメルマガで何度か取り上げたことがあります。
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この手の考え方は、研究開発に関連する部署の技術者を中心に示す思考の癖とも言えますが、
これが結局のところ技術者育成を遅らせる弊害の一因となり、
結果として若手技術者が最も欲しい技術専門用語の習得を遅らせている、
ということを理解しなくてはいけません。
とはいえ、考え方を変えるというのは言うほど簡単な事ではありません。
では、どのようにして技術専門用語習得に取り組んでいくべきなのかについて、
順を追って述べてみたいと思います。
技術専門用語は重要ではないが、技術的な会話内容の理解に不可欠な要素
技術者育成の観点だけからいうと、
技術専門用語の習得というのはそれほど優先順位の高いものではありません。
最も重要なのは、技術業界不問の5大要素からなる技術者の”普遍的スキル”の醸成であり、
ここが最優先なのは不変というべきです。
・関連コラム
技術者の普遍的スキルとは何か(機械設計/日刊工業新聞社 連載)
ただし、技術専門用語について見逃してはいけない”役割”があります。
それは、
「技術専門用語は、技術的な業務内容に関する議論や説明の構成要素になっている」
というものです。
つまり、専門用語の勉強は技術者にとって普遍的スキル醸成に比べれば優先順位は低いものの、
あまりにも技術専門用語がわからないと、
「技術的な業務に関する議論の内容が理解できない」
という問題が生じます。
よって、専門性至上主義云々に関わらず、
会話に必要な用語習得というのは若手を中心とした技術者にとって不可欠といえます。
若手技術者は専門用語習得にむけまず調べることから始めてしまう
若手技術者が専門用語習得をしようとする場合、
まず自分で調べるということを行う傾向にあります。
専門書を調べるというのであればまだいいですが、多くの場合
「インターネット検索をして調べる」
ということで対応しようとします。
インターネットを活用した検索活動は、基本的には大変有意義です。
多くの情報について、簡単に手に入るということは、
一種の革命ともいうべきレベルに該当します。
インターネットの情報は情報を取りに行く技術者の力量を試す側面がある
しかし忘れてはいけないのは、
「インターネット上の情報は玉石混交である」
ということです。
書籍のように校閲が入るわけでもありません。
インターネット上の情報が悪いというわけではありませんが、
「情報を取る側の人間のスキルが試されている」
という側面があるのです。
特に経験の浅い若手技術者は、情報の質を見極める知見があるとは考えにくく、
鵜呑みにしてしまうかもしれません。
加えてより大きな課題は、
「気軽に入手した情報は身につきにくい」
ということでしょう。
お金でいう”あぶく銭”と一緒なのです。
技術者が技術専門用語を身につけるには議事録作成が最も効果的
ではどのようにして技術者は技術専門用語を身につけるべきでしょうか。
結論から先に言うと、
「議事録の作成」
です。
社内外の打ち合わせに参加した際、
議事録を残すと思います。
この議事作成を技術者に対応させるのです。
つまり、書記としての役割を担ってもらうということになります。
打合せ中というのは技術専門用語も含め、様々な言葉がスピード感をもって飛び交います。
議事録作成に注力すると議論に加わりにくいというデメリットもありますが、
技術専門用語の習得に苦戦している段階の技術者は、
議論に参加するしないという観点よりも、
「打合せで繰り広げられる議論についていき、理解に必要な技術専門用語を覚える」
という方が大切です。
スピード感という緊張状態での用語把握が技術専門用語習得の近道
上記の通り、打ち合わせの議事録作成においてはスピード感が求められるため、
言葉を漏らさない様、メモをする、タイピングしていくというのは力量が必要な業務になります。
この緊張感が技術専門用語習得のポイントです。
時間的制限もなく、リラックスした状態で技術専門用語を調べるというのは、
頭にストレスがかかりにくいため、脳が活性化しにくい。
しかし、議事録となると聞き逃すと議論の記録という目的が達成されないため、
常にその作成には緊張感が伴います。
この状態で、技術専門用語を含む議論の概要を、
まず活字という形で書かせることが大切です。
最初は技術専門用語の意味が分からなくてもいいのです。
それよりも、
「頭を緊張状態に置いたままで、活字という形でアウトプットさせる」
ということが重要なのです。
これこそが技術専門用語そのものを覚えるという第一歩です。
議事録は適宜議論を止めて、内容を出席者に確認してもらう
活字としてアウトプットした後は、その意味と内容を理解しなくてはいけません。
内容を理解できていないと技術専門用語を言葉として知っている、
というだけになります。
これは実行力を伴う知恵ではなく、
単なる知識にすぎません。
技術専門用語の内容理解に大切なのは、
「議論をタイミングを見て止めて、議事内容に加え、技術専門用語の意味を出席者に確認してもらう」
という行動です。
書記を務める技術者が、議論を中断させるというのは大変勇気のいることです。
しかし、話の流れを見ながら話を止めて差し支えない、
というタイミングを見計らい、
「今までの議論の内容についてこのように議事を残しましたが、内容に加筆修正が無いかご確認ください」
と画面越し(プロジェクターやPC画面等)に見せるのも一案です。
画面が無ければ、口頭で概要を述べるとういう事もあるかと思います。
このようにして、まずは議事の内容に問題が無いかを見てもらう(または聴いてもらう)のです。
その確認が終わった上で、
「○○という用語ですが、その意味についてご教示ください」
といった形で話を向けるのです。
この一連の流れは、常に相手がいることなので緊張感があります。
このように緊張感を維持しながら解説してもらったことは、
記憶に定着しやすい。
そして何より、打ち合わせの出席者も
「当たり前に使っている言葉の意味が分からない技術者もいるのだ」
と理解することもできるでしょう。もしかすると、別の機会にはこの言葉の解説をしてくれるかもしれません。
このように、出席者全員にとっても気づきとなるのです。
技術専門用語の意味の解説をしてもらえなかった場合、専門書などで調べ、後日合っているか確認を打診
場合によっては打ち合わせ時間が短い、発言者の技術者の方々に時間が無い等の理由で、
技術専門用語の確認をお願いできる状況に無いかもしれません。
そのような場合は、一度持ち帰り、
自分なりに調べるのが良いと思います。
調べる際はできるだけインターネットに依存せず、
専門書等を使うのがポイントです。
そして、調べて自分なりに答えがわかった段階で、
改めて技術専門用語を発言した技術者か、
または、その技術専門用語がわかりそうな上司などに確認をすることで、
技術専門用語の意味を正しく理解する、ということが望ましいと考えます。
尚、当然ですが説明する技術者側も正しい説明ができることが求められる、
ということを加筆しておきます。
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いかがでしたでしょうか。
技術専門用語習得は、技術業務推進の基礎力の一つとして重要である一方、
その習得は「頭への緊張感」という前提条件によって、
効率が高まるということを述べました。
ただし、繰り返しになりますが技術専門用語は技術者育成という観点でいうと第二段階。
優先すべきは技術者の普遍的スキルであることを再確認し、
このスキルが高くないと上記の取り組み(技術専門用語の習得への活動)ができないことに気が付くことも重要です。
ご参考になれば幸いです。
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