設備部品選定において部品メーカの高価または入手困難な推奨品を用いるべきか迷う若手技術者
公開日: 2026年1月26日 | 最終更新日: 2026年1月26日

技術者が行う様々な実験や試験において、
消耗品を購入することは珍しいことではありません。
パスツールピペット、シャーレ、チューブなどはその一例です。
もう少し高価な消耗品として、設備に関連する”部品”があります。
ベルト、ベアリング、パッキン、センサ、ヒューズ、ドリルなどがそれに該当します。
今回は一例として、このような設備部品を選定するにあたって、
若手技術者育成につながるリーダーや管理職の接し方について考えます。
設備部品についてはメーカ推奨品や特注品を示されることが多い
設備部品というのは前述の通り設備とつながるものであるため、
そのメーカに問い合わせをして設備仕様を伝えたうえで、
当該メーカ側の推奨部品を提案してもらうこともあります。
メーカ推奨品は特注等の高価なものであることも
これはすべてに当てはまるわけではありませんが、
メーカ推奨の部品が特注等の”高価”なものになることもあるでしょう。
高価でなくとも納期が長い、または入手が難しいこともあります。
予算、並びにスケジュール的に問題ないのであれば、
メーカ推奨品というのが最適解となるでしょう。
しかしどちらかが難しいとなった場合、
メーカ推奨品という選択肢を選べなくなる可能性もあります。
メーカ推奨品でなければならないかどうか迷っている若手技術者には成長のチャンスとなる
「メーカが推奨しているので」
と若手技術者が入手情報に基づき忠実に動くことは決して悪くありません。
しかし研究開発を担う技術者として”欲しい”のは、
「本当にメーカの言う通りなのだろうか」
と疑問を持つことです。
疑うのが良いという意味ではなく、
「メーカからの情報は本当か否かは、自分の目で確かめてみたい」
という、
「疑問の背景にある知的好奇心」
が技術者としての成長に重要なのです。
技術者の普遍的スキルでいう、異業種技術に対する好奇心とつながる部分でもあります。
※関連連載/コラム
第11回 技術的な飛躍に不可欠な異業種技術への好奇心 日刊工業新聞「機械設計」連載
知的好奇心は本質を突き詰めるという技術者で最も重要な思考の原点
自分の目で見たい、知りたいと考えることは、
技術者育成で最重要の”成長したい”というモチベーションの源泉であり、
「本質を突き詰めたい」
という技術者で最も重要な思考の原点になります。
”メーカの言うことは本当だろか”というちょっとした疑問が、
実は技術者育成においても大変重要なのです。
技術の本質に対する理解の重要性は過去の連載でも言及したことがあります。
※関連連載
第2回 若手技術者が技術の本質を理解していない 日刊工業新聞「機械設計」連載/工場マガジンラック
疑問を持つ若手技術者にすべての答えを教えず、まずはやらせて報告させるのが技術者育成の基本
ここまで述べてきたような、疑問を持つ若手技術者に直面した場合、
リーダーや管理職は技術者育成という観点だとどうすればいいでしょうか。
代表的な進め方を上げると以下のいずれか(またはそれに似た形)になると思います。
経験に基づく回答の提示
リーダーや管理職の経験から、何が起こり、どのような結果になるかといった過去の情報を伝える。
結果の先回りによる判断基準の提供
リーダーや管理職もわからないので、一度検証するよう指示し、出てきた結果に応じた対応策を伝える。
放置と丸投げ
リーダーや管理職もわからないので、お前が何とかしろと投げる。
それぞれの概要と技術者育成の観点から取るべき修正点を述べます。
リーダーや管理職の経験から、何が起こり、どのような結果になるかといった過去の情報を伝える
経験が豊富なリーダーや管理職がよく取る言動です。
リーダーや管理職にとってやるまでもなく明らかなことについて若手技術者が迷っている場合、
それが非効率と感じる故に自分の経験を伝えて二の轍を踏ませないようにすることが、
このような言動をとる心理の底にあると思います。
しかしこれをやりすぎると、若手技術者は
「受け身」
となり、将来的に口だけの”評論家”になりかねません。
何故ならば、リーダーや管理職は実体験を有している一方で、
若手技術者は見聞で終わってしまうからです。
リーダーや管理職が良かれと思った言動は、
若手技術者の実体験の幅を狭めてしまうという弊害にもつながるのです。
ここはぐっと我慢して、リーダーや管理職と同じ経験をさせるくらいの度量が技術者育成には必要です。
技術者育成の基本は先回りの助言ではなく、
当事者による試行錯誤の実体験にあるのです。
リーダーや管理職もわからないので、一度検証するよう指示し、出てきた結果に応じた対応策を伝える
これは若手技術者を育てたいという気持ちが強く、
また技術者育成の基本を理解しているリーダーや管理職の応答に多いパターンです。
一度検証させるという意味で、前出のすべて回答を教えてしまう場合と比べ、
若手技術者に実体験を積ませようという意思があるため、良い形かと思います。
ただ、出てきた結果に応じた対応策を伝えるというところが、
やや先回りしすぎです。
このような対応策は若手技術者が試行錯誤、
時に失敗をしながら捻出するものであり、
リーダーや管理職が手を出すところではありません。
最後の出口を指示してしまうことで、
「若手技術者が自らの手で業務を”完結”させる」
ことができなくなるのです。
ここは仮に案があったとしても、指示として示すのではなく、
若手技術者に問いかけることが肝要です。
若手技術者自身の口から指示に対する要望がある、
もしくはリーダーや管理職から見て完全に行き詰まるまでは、
若手技術者に試行錯誤させることが技術者育成という意味では効果があります。
リーダーや管理職もわからないので、お前が何とかしろと投げる
恐らく現実的には最も多いパターンかもしれません。
特に余裕のない技術部隊では、このような指示の出し方になりがちです。
実は若手技術者育成という観点では、時に必要な指示です。
若手技術者”自身”が何とかしないと何ともならない状況や環境に若手技術者が置かれれば、
その名の通り若手技術者が何とかするしかありません。
この実体験は大変厳しい経験となることも多いですが、
知識を活用して実行動に移せる知恵の醸成に不可欠です。
ここを耐えられるかが、技術者としての成長有無の分かれ道とも言えます。
ただ、毎回このような指示は若手技術者を混乱させ、
追いつめることにもなりかねません。
ここぞという時まで、若手技術者が何とかしなければならない環境は温存し、
それに向けての経過措置として、問いかけを中心としながらも若手技術者に対応方法などを考えさせ、
必要に応じてある程度の指示を与えることがリーダーや管理職に求められます。
では、冒頭述べた
「実験に用いる部品選定において部品メーカの高価または入手困難な推奨品を用いるべきか」
について若手技術者が迷っている場合、
リーダーや管理職は技術者育成の観点からどのような対応をすべきでしょうか。
欲しいのは”本当にそうだろうか”という再考の促しと、”どうしてみたいか”という問いかけ
仮に疑問を持たずにメーカ推奨情報を持ってきた若手技術者に伝えてほしいのが、
「本当にそうだろうか」
という再考の促しです。
それによって若手技術者が疑問を持つ、
またはそもそも疑問に思っている若手技術者に対しては、
「どうしてみたいか」
というリーダーや管理職からの問いかけが望ましいです。
まず、リーダーや管理職がどう考えるかではなく、
若手技術者に疑問を持たせ、その上で本人がどう考えているかを聴き出すことが第一歩です。
若手技術者がうまく答えられなくてもいいのです。
自分はこう考えるという意思表示をできる鍛錬を、
このような場面で繰り返すことが、
結果的に若手技術者自身の思考の整理につながります。
検証において注意すべきは効率や無駄の有無ではなく、安全性に問題が無いか
疑問を持たせる、または疑問を持つこと自体に自信を持たせた後は、
議論で終わらせることなく、実際に検証させることが重要です。
この検証は”若手技術者が何かをしてみたい”と意見させることが重要ですが、
ここでリーダーや管理職が留意すべき観点があります。
無駄が無いかや非効率ではないかといったことでは”ありません”。
何度も言うように、技術者育成に効率や無駄の削減といった議論はご法度です。
リーダーや管理職が重視すべきは、
「安全性に懸念は無いか」
です。
若手技術者が例えばメーカ推奨部品以外を実際に試したいとします。
その検証のやり方について明らかな危険性がある場合、
それはどのような理由があれど実行させてはいけません。
危険の理由をきちんと説明し、
検証を中止、もしくは当該手順を変更させる必要があります。
製造業において、従業員の安全は何より最優先です。
想定される検証結果とそれが得られた場合、次のアクションをどうするかを述べさせる
例に基づき、メーカ推奨以外の部品が使えるかの検証方法を若手技術者に述べさせ、
安全性の懸念は無かったとします。
その上でリーダーや管理職に述べてほしいのが、
「想定される結果は何か」
という問いかけです。
イメージができていないようでしたら、ここはリーダーや管理職がある程度フォローするのは一案ですが、ある程度時間をかけてでも若手技術者に話をさせることが重要です。
このような議論は、必要に応じて技術チームのミーティングでの議題に上げるのも良いと思います。
想定が不十分であっても、このような試行錯誤の積み重ねが知恵の強化につながる
実際に検証を行ってみると色々なことが起こるでしょう。
メーカ推奨の部品が良いという明確な判断ができればいいですが、
予想されるのがどちらとも言えないといったグレーの判断が多いかもしれません。
グレーの場合どうするかはリーダーや管理職だけでなく、
ここでも技術チーム全体として議論するといったのも一案です。
またそもそも想定が甘くて、検証が失敗するということもあるでしょう。
このような議論や失敗を通じた試行錯誤こそが、
将来、若手技術者の知恵として昇華されることになります。
自分なりに考えて行ったことがうまくいかなかった、
という経験は一生の糧になります。
最後に
何かの情報を得たときに、それは本当だろうかと疑問に思えるのは、
技術者として重要な資質です。
しかしそれ以上に重要なのは考えるだけでなく、
それを”実行”を伴う実験等で検証できることです。
実践なくして知恵を得られないことを考えれば当然とも言えます。
リーダーや管理職は若手技術者が上記のような言動を自然にできるよう、
促すことが求められます。
答えや然るべきルートを伝えて指示通りに動かすのではなく、
自ら考え、得られるであろう結果を考えさせる一方で、
検証を実際に行わせることで自らの想定の甘さを体感させ、
判断をするために試行錯誤させる。
そのような動きを、問いかけを中心とした若手技術者とのやり取りで繰り返すことが、
結果的に若手技術者が技術の本質を見極めようとする思考の醸成につながります。
ご参考になれば幸いです。
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