作業効率向上を目的にノーコード/ローコードのアプリを製造業の若手技術者に作らせたい
公開日: 2026年7月27日 | 最終更新日: 2026年7月26日
タグ: OJTの注意点, メールマガジンバックナンバー, 働き方改革, 効率化, 技術者人材育成

今回は最近様々な製造業企業で一般的になりつつある、
作業効率向上を目的にノーコード/ローコードのアプリを若手技術者に作らせる、
という取り組みにおいて技術者育成の観点からリーダーや管理職が把握してい置きたい留意点を解説します。
ノーコード/ローコードのアプリの開発は製造業の技術者にとって身近なものになった
これまでアプリ開発にはシステムエンジニアやプログラマーを抱える専門業者に委託する、
または専任の社員を雇用することが一般的でした。
しかし時代は大きく変わりました。
その一つが、
「ノーコード/ローコードアプリ開発プラットフォームの浸透」
です。
今や義務教育の中でノーコードアプリを使う時代です。
Scratchはその一例でしょう。
このような時代の流れもあり、若い方ほどノーコード/ローコードのアプリ開発プラットフォームは身近であり、
「必要なアプリは自分で作る」
ことが当たり前になっていると感じます。
コードの詳細知識が不要になったことで製造業の技術者でもアプリ開発は当たり前になりつつある
このような時代の流れにおいて、
製造業の技術者もこのようなツールを持つことは当然の選択肢になりつつあります。
例えば何かを自動的に行うアプリが必要であれば、
該当するものを購入するか、専門業者に委託するしかなかったものを、
自分で開発できるようになったといえます。
自分で作るということは費用が安く済む可能性が高いことに加え、
過剰な機能の削減や自分に使いやすい調整などが柔軟にできることにつながります。
この手の選択肢が増えたことは、
製造業の技術者にとって強みになることはあっても、
弱みになることはないでしょう。
リーダーや管理職にとって作業効率向上は至上命題
※以下で述べる若手技術者や技術者は、システムエンジニアなどではなく製造業で研究開発、生産・製造などを行う技術者を指すとします。
働き方改革の流れもあり、定量指標の一つである労働時間削減は、ほぼすべて製造業企業において正義となっています。
ここで求められるものの一つは、
「作業効率の向上」
です。
作業は効率重視だが、技術的な本質を突き詰める技術者の取り組みに効率の考えはご法度
誤解している方も多いので、改めて触れておきたいことがあります。
技術者の業務で効率を重視するのは、あくまで”作業”です。
(技術)業務では”ない”ことが重要です。
研究開発を中心に、技術者の強みが活きる様々な技術業務、例えば
-
-
- 仮説の妥当性を確認するために実験をする
- 新たな技術テーマの企画立案をする
- 技術報告書を作成する
-
といったものは、だらだらといつまでも時間をかけていいものではありませんが、
「効率向上を最上位とした考え方を適用するのは間違い」
です。
時に時間をかけてでも実験を繰り返す、
技術的な議論を行うことに対して効率の話を持ち込んではいけません。
一方で作業はやることが決まり、それを”こなす”業務です。
これは業務量がそのまま成果となるため、確かに効率が重要です。
効率の話をすべき対象か否かは常に注意する必要があります。
アプリは作業効率向上に効果を発揮することがある
効率が重要な作業には、その内容によってはアプリが良い形で機能することがあります。
処理に必要な数学理論が決まっているデータ処理、
多くの画像から特定のものを検出する画像処理はその一例です。
技術者にとって解析済みのデータや検出済みの結果は重要ですが、
その過程は同じことの繰り返しになるため作業の定義となります。
このような業務フローの決まっている作業は、
アプリを使うことでその効率を高められる可能性があります。
技術業務の中でアプリを用いた効率向上が求められる作業について、
アプリを若手技術者に作らせる、すなわち開発させるとなった場合、
リーダーや管理職は技術者育成の観点からどのような点に気を付けるべきでしょうか。
アプリ開発着手”前”の留意点
アプリを若手技術者に作らせると判断した場合、
リーダーや管理職が留意すべき点をいくつか述べます。
アプリを作る目的を明確にする
何のためにアプリを作るのかを明確にすることが第一歩です。
どのような業務をターゲットにするのかがこれに該当します。
アプリで効率改善を実現したい対象業務
ターゲットとする業務を明確にします。
アプリは万能にしようとすればするほど大掛かりになるため、
できる限り業務内容を絞ることが肝要です。
特にアプリ開発の経験があまりない部署では、
機能を絞ることで本業務の早期収束を図ることが重要となります。
アプリ開発の期限設定
作業効率向上は確かに重要ですが、
技術者にとって最も重要なのは、
目の前の技術業務をきちんと遂行し、完遂させることです。
アプリ開発はあくまで”副”業務の位置づけとなります。
長期間にわたりだらだらとやることは、
技術者の普遍的スキル向上にもつながる技術業務の実践経験の蓄積の障害にもなりえます。
期限内に終わらなければスパッとやめるくらいのスタンスを、
リーダーや管理職は徹底することが重要です。
上記のアプリ開発開始”前”の話は、
一言でいえば一般論です。
技術者に限らず、社会人であれば当然の要素が多いでしょう。
技術者育成で重要なのは、アプリ開発”後”の取り組みです。
技術者育成で重要なアプリ開発着手”後”の留意点
若手技術者のアプリ開発”後”、リーダーや管理職は必ず報告をさせてください。
その報告の際、留意すべき取り組みを述べます。
アプリのフローを説明させる
ノーコードであればフロー、ローコードであればコードで行う計算などの処理の一通りの流れを、
若手技術者に説明させることが重要です。
アプリを作ることは言ってしまえば”作業”に近い部分が大きい。
その一方で処理のフロー(流れ)は、
「アプリを俯瞰して見る高い視点」
が必要となります。
これは、技術者の普遍的スキルの”論理的思考力”そのものになります。
アプリの内部ではどのような処理を行っているかを述べ、
その流れの概要を説明するイメージです。
説明は要点が分かればいいので、簡単なものでも問題ありません。
詳細よりも全体を捉えることが重要です。
アプリ開発を通じて気が付いたことを述べる
アプリを作っている最中に、生成AIを適宜活用することでコード作成に役立つことが分かった、
といった新しい発見があれば、新たな知見として報告させることも重要です。
これ以外にも、解析に用いる取得データのサンプリング速度を上げると、
より適切な結果が得られるようになったといった、
技術業務側に対する発見があるかもしれません。
このような内容でも問題ありません。
これも技術者の普遍的スキルの一つである論理的思考力の醸成が目的ですが、
アプリ開発という作業になりがちな業務をより高い視点から見つめ、
実業務にも生かせる技術的な発見や進展は無いかと意識させることがその狙いにあります。
開発したアプリは技術者間で共有し、技術チーム全体の資産とする
仮にアプリ開発がうまくいった場合、若手技術者の中には
「これは自分の成果だ」
と考えて抱え込んでしまうかもしれません。
これではアプリによる作業効率改善が、
若手技術者”個人”にとどまってしまいます。
技術チームとしては損失です。
そのため若手技術者個人の成果でもある一方、
リーダーや管理職の指示で動いた業務中で完成させたものであるため、
技術チームの資産であることを若手技術者に認識させることが目的になります。
若手技術者は開発したアプリを技術チーム内の技術者全員が使える状態にすることが求められます。
このような組織への貢献も、若手技術者に理解させるべき観点の一つです。
報告はリーダーや管理職だけでなく、技術チーム全体に対して行わせる
ここまで述べてきたアプリ開発に着手”後”の報告は、リーダーや管理職だけでなく
「技術チーム全体に対して行わせる」
ことが重要です。
アプリ開発を担った若手技術者は持ち前の専門性至上主義を発揮し、
「自分はアプリを開発できる専門性があるのだ」
と考える可能性があります。
特に技術業務という実務で成果が出せない若手技術者のうちは、
アプリ開発の様な技術チームとしては副産物の位置づけにあるものも、
新製品開発に該当する成果と当人は感じることさえあります。
この心理が前出の抱え込みにつながるのですが、
そうならないためには報告自体を技術チーム全体に対して実施させることで、
報告範囲を広げる戦略がリーダーや管理職に求められます。
生成AI利用の最大の課題は若手技術者を含む技術者達の孤立化にあると述べました。
上記のアプリ開発も概ね同じリスクが生じる可能性があるため、
必ず技術チームに対する報告という形式を確立することが重要です。
※関連コラム
生成AIで得た技術的専門知識の妄信と依存で孤立化する若手技術者
まとめ
製造業の若手技術者を含む技術者たちもアプリ開発という選択肢を持つため、
ローコード/ノーコードのアプリ開発プラットフォームに対し、
毛嫌いすることなく触ってみる柔軟なスタンスが必要な時代と言えます。
ローコードの場合もコード作成は生成AIの力を借りればそれほど難しくありません。
ただ重要なのはこのようなことを効率よく行うことではなく、
どのような流れで自作のアプリが動くのかというフロー概要を把握することです。
このような高い視点で物事を見る癖をつけることが、
技術者育成で重要な論理的思考力を高めることにつながります。
加えてアプリ開発は若手技術者や技術者個人のものではなく、
技術チームに貢献するために行っていることを強く認識させ、
抱え込ませず、組織の一部であることを理解させることもリーダーや管理職の重要な仕事です。
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