技術者に将来求められる意外な資格

技術者は法律知識に関する資格取得を考える

 

 

 

技術者育成に関する議論において、技術者の取得すべき資格という話題になることがあります。

 

 

 

技術者は資格を取ろうとすることに時間を割くよりも、

 

 

「徹底した実業務を通じた試行錯誤」

 

 

に時間と労力を割くべきというのが私の考えです。

 

 

 

 

 

これを若いうちに経験させるのが技術者育成の基本中の基本だからです。

 

 

 

若手技術者の時代の実践経験不足は、その後の技術者としての成長に悪影響を与えます。

 

 

 

この辺りは以下のようなコラムでも取り上げたことがあります。

 

 

 

※関連コラム
やらなくてはいけないでしょうかと発言する若手技術者は組織の荷物となる

 

上記のような議論があるものの、
今回は技術者が取得を前向きに検討してもいいと考える意外な資格について考えたいと思います。

 

 

 

 

 

技術者の本質的なスキルに直結するのは資格化するのが難しい

 

世の中には技術という単語が含まれる資格も複数存在します。

 

そしてこれらを取得することで専門性を有しているという一つの指標になることも事実です。

 

 

 

それだけでなくその資格を有していないと事業運営に支障が出るような必須のものもあります。

 

 

このことから技術者の資格取得は全面的に否定すべきものではありません。

 

※関連コラム

若手技術者に技術的な 資格 を取らせるべきか否か

 

 

その一方で技術者が自発的に行動し、課題解決できるようになるために不可欠で、
かつ本質的なスキルである「普遍的スキル」は資格化することは大変難しいのが実情です。

 

 

 

資格化が困難な最大の理由は普遍的スキルが知識量で計測できないこと

 

技術者の普遍的スキルの資格化を最も難しくしているのは知識量で判断が難しいということでしょう。

 

普遍的スキルは、

 

・論理的思考力

 

・技術文章作成力

 

・グローバル技術言語力

 

・異業種への好奇心

 

・企画力

 

 

という主に5つのスキルから構成されます。

 

 

 

※関連コラム

第1回 技術者の普遍的スキルとは何か 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

これらのスキルの多くは試験などで評価することは極めて難しく、
実業務での成果物をもって個別に評価内容を判断するしかありません。

 

 

またグローバル技術言語力のように一部のスキルには知識が求められるため、
これらのスキル発揮において知識があるに越したことはありませんが、
ここでも実際の技術者に求められるのは知識量ではなく、

 

 

「わからないときは自ら調べる、他の技術者に相談する」

 

 

といった、

 

 

「徹底した当事者意識を土台とした積極性、そして探求心」

 

 

です。

 

 

 

 

知らないことは調べればいいですし、わからなければ他の技術者に聴いてもいいのです。

 

 

 

もしくは対価を支払って外部企業に相談、または指導を受けてもいいでしょう。

 

 

 

技術者が知っていることで対応できる業務はそもそも多くありません。
新しいことに取り組もうとすればなおさらです。

 

 

 

このように目の前の仕事を前に進める積極性に加え、
何より技術を知りたい、突き詰めたいという探求心がなければ、
そもそも技術者の普遍的スキルを活かす場面さえないのです。

 

 

 

上記の話を踏まえれば、普遍的スキルはもちろん、その前提条件である心構え等は資格化することが容易でないことは想像がつくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

技術者が身につけるべき資格化可能な知見は法律に関するもの

 

その一方で、ここ数年様々な業種の技術者の指導を行っていて課題と感じることがあります。

 

 

それは、

 

 

「技術者の法律に関する基礎知識の欠落」

 

 

です。

 

 

 

技術的な業務と法務は無関係に感じる方が多いかもしれませんが、
これからの技術者には不可欠なものになると考えています。

 

 

その理由について考えます。

 

 

 

異業種技術が技術の発展に不可欠な時代では協業が不可欠

 

技術者の普遍的スキルの一つ異業種への好奇心がありますが、
今の時代において自社単独の技術で何かしらの付加価値を見出すのは困難になりつつあります。

 

異業種協業については過去のコラムでも取り上げたことがあります。

 

 

 

※関連コラム

異業種技術協業に必要な顧客を求める+顧客になるという考え方

 

 

このような協業においては契約をベースにした共同研究開発、
特注設備の設計と製造等が想定されます。

 

 

 

例えば共同研究開発ではプロジェクト単位で方向性を明確に定めることに加え、
それを2社間の合意事項にするため契約書を締結することが求められます。

 

 

 

大きな企業であれば法務部門があるので、契約に関する業務は担当者に依頼すれば問題ないでしょう。

 

 

ただ多くの中小企業では法務部門は存在せず、顧問弁護士さえもいない企業もあります。

 

 

 

このような状態だと法律を土台とした議論や交渉を技術者が担当せざるをえません。

 

 

 

そして技術者は法務に関する基礎知識を土台に外部企業とのプロジェクトを設計することが求められます。

 

 

 

法律の基礎知識を有する技術者は極少数

 

当社の話を例に出します。

 

当社の技術者育成事業では契約を締結する企業の相手が総務、人事、経営者が多いため契約に関する議論で問題はあまり起こりません。

 

その一方で当社では技術専門性の高い業務の支援や指導を行う事業も展開しています。
当該事業では契約を締結する際の交渉先は技術者になることが多くなります。

 

 

ここでは正直なところ、議論がかみ合わないことが大変多いのが実情です。

 

 

その一番の原因は技術者に法律的な観点や知識が殆ど無いことにあります。

 

 

 

例えば当社が「契約形態として準委任契約を締結したい」と述べても、「検収に値する成果物は何か」という話をする技術者が居るのが一例です。

 

準委任と請負の違いが理解できていないのです。

 

 

 

このように、技術者は異業種協業どころかそれ以前の社会人として理解すべき法律の知識がない状態で日々の仕事を進めている可能性があるのです。

 

 

 

 

上述した法務部門が無く、しかし技術者を抱える企業においては懸念される事態だと考えます。

 

 

 

この事態を踏まえた上で、技術者の資格を考えると一つの選択肢が見えてきます。

 

 

 

 

 

法務は資格で表現する業務に適している

 

これまで何度か述べてきた通り、技術者の行う技術的業務は基本的に

 

 

「答えのないものを突き詰めることで、既存技術の発展や新しい技術の発見」

 

 

というものを目的としたものとなります。

 

 

 

できるかわからない要素があるからこそ、付加価値を生み出せるのです。

 

 

 

その一方で技術者が今後身につけることが望まれる法律に関する基礎知識は、
年々内容の更新はされるものの不変の前提知識がその土台となります。

 

 

 

例えば憲法を最上位に、民法、刑法、行政法がその下に位置し、
さらにその下に特別法が位置しているという構成は不変です。

 

 

 

このような位置づけの知識は技術者にとってのグローバル言語力で、
業界不問の普遍的知識である数学のそれと似ています。

 

 

 

数学は医療、機械、化学、情報、航空宇宙、建築等、
どの業界でも必ず求められる技術的な知見の一つなのです。

 

 

技術者は法律の専門家ではないので法律の細かいところを覚える必要はありませんが、

 

 

「資格試験対策を通じて法務というものに技術者を触れさせる」

 

 

ということは、技術者を抱える中小企業では求められる取り組みだと考えます。

 

 

 

 

そして法律に関する知識は技術業界に依存しない普遍的な位置づけにあることも認識しておく必要があります。

 

 

 

 

 

法務に関連する資格例

 

技術者が法務に関する資格取得を目指すものとしてどのようなものがあるでしょうか。

 

 

ビジネス実務法務検定試験(R)というのが一例です。

 

 

 

※参照サイト
ビジネス実務法務検定試験(R)

 

 

 

技術者であれば三級で十分だと思います。

 

 

 

技術者が法律の基礎知識を身につけ、そしてその知識を活用することで技術者として活躍できるフィールドをより広げることも可能となると考えられます。

 

 

 

法律というのは職種によらず、年齢によらず全員が理解すべき生活の基盤の一つと言えます。

 

 

そして法学部や法科大学院などの一部を除き、学校教育で法律を学ぶことはほとんどありません。

 

 

 

しかし技術者と言えど社会人の一員として法律の事を全く知らないというのは、
社会のルールを知らずに社会で暮らしているということと同じです。

 

 

このような視野の狭さが、技術者としての力量に負の影響を与えている可能性は否定できません。

 

 

 

資格を取ることを目標にするかは個々人によりますが、
特に法務部門を持たない企業においては技術者に法律に関する基礎知識に触れさせるきっかけを、
資格というものを通じて与えることは重要だと思います。

 

 

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