業務を抱え込む若手技術者心理の背景と技術チームプレー理解への一歩

業務を抱え込む若手技術者に技術的な会話でチームプレーを理解させる

 

 

業務を抱え込む若手技術者心理の背景と技術チームプレー理解への一歩ということについて考えてみたいと思います。

 

 

あるベンチャー企業の経営者に対するインタビューの中で、興味深い”課題”が述べられていました。

 

製品開発を早めることを目的に大手企業の社員を迎え入れチームビルディングを進めたものの、声の大きさでチームをまとめるという姿勢によって現場社員(恐らく技術系社員)との距離が生まれたというものです。

 

 

トップダウンのやり方がうまくいかなかったということなのでしょう。

 

 

結果として組織としての推進力が低下し、製品開発が遅れに遅れてしまったそうです。

 

この企業は後に破産したと述べられています。

 

 

 

ベンチャー企業だったため結果が大きなものとなりましたが、
これがある程度の規模の中企業、大企業であっても、
チーム瓦解等の類似の事象が起こっているのではないでしょうか。

 

 

 

明確には述べられていませんが、製品開発を行う企業であったことを踏まえると、
上記は技術チームの話だと考えます。

 

技術者を抱える技術チームで上記のような問題を起こさないため、
リーダーや管理職は若手技術者とどのように向き合うべきかについて考えます。

 

 

 

 

 

若手技術者の多くは技術的課題を”自分”で解決しようとする

 

「何故、若手技術者は自分の所に聴きに来ないのだろう。」

 

 

「どうして相談せずに若手技術者は、勝手にその方向に進んでしまったのだろう。」

 

 

このような気持ちを持った元技術者のリーダーや管理職の方も多いかもしれません。

 

 

 

リーダーや管理職から見て上記のような印象を与える若手技術者の方々は、
どちらかというと真面目に業務に取り組むタイプで、
将来的には戦力となる可能性を秘めています。

 

 

しかし、企業の技術者として働いてもらうには問題となる行動パターンと言えます。

 

この行動パターン、すなわち「若手技術者の自分で解決しようとする心理」を助長しているのは、
学生時代の経験にあると私は考えています。

 

 

 

 

 

若手技術者達が抱え込むのは教育の影響も否定できない

 

「若手技術者の自分で解決しようとする心理」について、考察をしてみたいと思います。

 

 

 

日本の教育でもトレンドとなりつつある思考型教育

 

日本における教育は長らく暗記型教育が支配的で、
それが新しい考え方を生み出すことを阻害してきたという考え方が潮流と感じます。

 

これに関する歴史的な背景の一つに軍政が関係しているなどの話も見られますが、この辺りの議論展開への深入りは技術者育成の今後を考えるにあたって本質につながると考えにくいため、ここでは不要かと思います。

 

 

少なくとも暗記型教育ではなく、

 

 

 

「自分で考えるという思考型教育が重要である」

 

 

 

という考えが、実践できているかは別として一般的には重要だと言われています。

 

 

 

ただし、思考型教育と言いつつ、本質を見失っているように見える部分があることには注意が必要です。

 

 

少なくともある程度の知識量、できればそれに加えて実践経験が無ければ、
地に足がついた本質的な思考はできないからです。

 

 

この辺りは過去のコラムでも取り上げたことがあります。

 

 

 

※関連コラム

 

これからの技術者に必須の思考型教育とは

 

 

 

考えさせる教育は自分で抱え込むことを肯定

 

ここで触れておかなければならない点があると思います。

 

 

それは、

 

「考えさせる=一人で考え込む」

 

という方向になっているということです。

 

 

ここに、

 

 

「他の人に相談し、議論する」

 

 

という考え方はほとんどありません。

 

 

 

特に企業で技術者として雇用されるような若手技術者の方々は、
自分で考えることが得意、または好きな方が多いと思います。

 

 

このような教育の経験は、

 

「問題は自分で解決する」

 

という考え方を刷り込ませることになるのです。

 

 

 

教育という観点だけでいうと、思考型教育にもいいところはたくさんあります。

 

 

今の潮流がすべて間違っているとも思いません。

 

 

 

 

しかしながら思考型教育が企業における業務という最前線において、
思考型教育という教育方針が若手技術者の

 

 

「抱え込む」

 

 

という考え方を助長している可能性があると考えています。

 

 

 

 

 

若手技術者に相談するという選択肢を理解させる

 

そのような背景も踏まえ、リーダーや管理職は早い段階で若手技術者に

 

「上司に相談をしていい」

 

ということを理解させることが重要です。

 

 

これが技術チームプレー理解の第一歩となります。

 

その為には、リーダーや管理職が数点理解すべきことがあります。

 

 

 

聴きに来ないという考えは捨てる

 

特に技術的に優れているリーダーや管理職によくみられる発言の一つに、

 

「若手技術者達は聴きに来ない」

 

というものがあります。

 

 

その一方で本心からそう思っている場合は稀で、

 

 

「聴きにくれば色々相談に乗る」

 

 

という考えを持っている方が殆どです。

 

 

 

つまり拒否をしているわけではなく、待っているのです。

 

 

当社の顧問先企業のリーダーや管理職クラスの方々に加え、
講演や学会で出会ったこれらの立場の方々と直接話をして感じていることになります。

 

 

そして私が問題だと考えているのが、
上記のような考え方を有している、
どちらかというと若手技術者育成に重要な指導ができるリーダーや管理職が、

 

 

「若手技術者から話しかけにくい」

 

 

という印象を外に与えていることです。

 

 

 

結果として若手技術者達は、聴きに来ないと考えているリーダーや管理職との会話を避ける傾向にあるのです。

 

 

 

元々一人で考えることを教育で求められてきた若手技術者が、
この心理的障害を乗り越えて話しかけるのは大変な労力と勇気がいることなのかもしれません。

 

 

 

自分たちの時代は、今まではこれでよかったからという従来の文化の全肯定はしない

 

百戦錬磨のリーダーや管理職は、その立場になった時点で多くの方が社内的に評価をされてきたと思います。

そしてそのような自分を作り上げてきた環境は必要なものだ、
という盲信があるのも事実です。

 

しかし、客観的にみて本当にそれが正解だったかどうかはわかりません。

 

 

たまたま当時、現場にいた若手技術者達に合っていただけかもしれません。

 

 

時代背景がその文化に合致していたのかもしれません。

 

もしくは時間を経て当時の経験が脚色されてしまっており、
現実は違っていたということも否定できないのではないでしょうか。

 

 

 

昔は昔、今は今。

 

 

 

リーダーや管理職も若手技術者の頃に感じていたこのことを、
改めて認識することが重要なのかもしれません。

 

 

 

 

 

一日一回、リーダーか管理職が若手技術者に技術的な質問を投げかけるのが第一歩

 

若手技術者にチームプレーを理解させるには、
お互いの信頼関係を構築するしかありません。

 

このためには若手技術者に何かを期待するのではなく、リーダーや管理職が歩み寄るのが不可欠です。

 

リーダーや管理職の方々が自分の考え方ややり方に固執すると、
冒頭ご紹介したような組織の破綻につながる恐れがあるからです。

 

 

やり方は色々ありますが、まず最初に行うこととしては

 

「一日一回、リーダーや管理職が若手技術者に技術的な質問を投げかける」

 

です。

 

 

技術的な質問というきちんとした内容でなければならないと考えるかもしれませんが、
すごく簡単なことで良いと思います。

 

関連する学会誌や新聞を読んで初めて出てきた単語の意味を聴く、
指示した業務の結果について質問をする、といったものが話題の一例です。

 

 

 

若手技術者は専門性至上主義という知っていることこそ正義という考え方であるため、
技術的な質問をされると自分が専門家として扱われていると認識し、
モチベーションを高める可能性が上がるためです。

 

 

もし技術的な話題を用意するのが難しいようであれば、

 

「調子はどうだ」

 

といった単なる声かけでも構いません。

 

 

重要なのは、

 

「一日に一回は話しかける」

 

 

「続ける」

 

ことにあります。

 

 

リーダー/管理職、または若手技術者が出張や有休等で不在な場合は仕方ありませんが、顔を合わせられる時間があるのであれば一言二言の会話でもいいので続けなくてはいけません。

 

 

 

昼休み以外の小休憩の時間といった隙間時間をうまく使うといいでしょう。

 

 

このような会話の中で仕事に関する相談事項が、
若手技術者から出てくるかもしれません。

 

 

 

これを繰り返すことで、話しかけても大丈夫だという雰囲気を醸成し、
若手技術者から相談しやすい関係性を作ることが肝要です。

 

 

リーダー/管理職と若手技術者の会話の障壁が下がれば、
技術チームとしての機能は必ず向上すると思います。

 

 

 

 

 

若手技術者と会話ができるようになったら技術的な議論までもっていく

 

もし若手技術者との会話がそれ相応にうまくいくようになったのであれば、
次の展開も見据える必要があります。

 

 

 

次の展開は

 

 

「技術的な議論」

 

 

です。

 

 

 

相談というのはあくまでリーダーや管理職が若手技術者に対して助言を行い、
若手技術者がその助言に基づいて業務を推進するという意味合いが強くなります。

 

 

 

これだけでは指示待ちの技術者を増産することになりかねません。

 

 

 

よって、助言を行うだけでなく、

 

「対等な目線で議論を行う」

 

ことが求められるのです。

 

 

 

少しずつで構わないので、

 

「技術の上に人は平等」

 

という考えで、立場を超えた技術的な議論をリーダー/管理職とすることができれば、
近い将来、若手技術者は必ず戦力として成長します。

 

 

このような流れにつなげていくことを念頭に置くと、
日々の会話の意味をリーダーや管理職の方々も理解いただけるのかもしれません。

 

 

 

※関連コラム

 

若手技術者を指示待ち技術者にしないために

 

 

 

若手技術者を組織における戦力とするためには、
対面でのちょっとした会話の蓄積が不可欠です。

 

 

オンラインツールが進化していますが、
状況が許す限り対面で話をする機会を見極め、
若手技術者が一人で抱え込むという考え方を変えさせなくてはいけません。

 

 

このような危機管理が、結果的に技術チームの連携を強化することにつながります。

 

 

 

若手技術者達との一日一回の会話という小さな一歩の積み重ねが、
技術チーム強化の本質なのです。

 

 

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