技術専門用語が満載の難解な技術プレゼン資料

技術者を筆頭とした技術系社員は技術的専門性を生かした技術業務を行うことが普通です。

 

特に研究開発のように新しいことを創出するということを生業とする職種の技術者は、
場合によっては上司も全く知らない技術領域まで踏み込むことがあります。

 

 

そのため、技術テーマ推進状況や評価結果といった技術情報共有を行う技術プレゼンの場において、
スライド資料の内容が見る側として難解と感じることがあるかもしれません。

 

 

今日はこのような状況への対策について技術者育成の観点から考えてみたいと思います。

 

 

技術者のプレゼンをわかりやすくするには企画が重要

Photographed by Pavel Danilyuk

 

 

 

 

 

技術専門用語を使わざるを得ない状況と使いたがる技術者の心理

 

そもそも何故技術者の作成する技術プレゼン資料には技術専門用語が多くなるのでしょうか。

 

理由の一つ目は既述の通り、技術専門用語を使わないと内容の説明ができないことによります。

 

 

技術専門用語は多くの技術業務の基本的内容をわかりやすく説明するための要素であるため、
ここは避けられないでしょう。

 

 

 

しかしもう一方で存在するのが

 

 

「技術専門用語を使いたい」

 

 

という技術者の深層心理です。

 

 

 

技術者は専門用語という知識量で自らの優位性を示したがる

 

個人差は当然ありますが、教育課程において知識量で評価されてきた経験を有する技術者達は技術専門用語を知っていることを重要視します。

 

これがいわゆる専門性至上主義です。

 

 

本来の専門性というのは技術専門用語を知っているという一側面だけではなく、
それらの知見を活用して具体的にどのような行動をするべきかを考えるという知恵に昇華し、
その知恵を使いながら実行動に移すことができるところまでを指します。

 

 

知恵と実践力が企業に求められることを考えれば、
技術専門用語に関する知識というのはスポーツでいえば準備運動ができるという意味合いとなります。

 

 

 

教育との関係、技術専門用語へのこだわりなどは過去にもコラムで取り上げたことがありますのでそちらも合わせてご参照ください。

 

 

 

※関連コラム

 

専門知識の向上 に貪欲な若手技術者への必要な助言がわからない

 

これからの技術者に必須の思考型教育とは

 

 

 

 

 

技術プレゼン資料内で技術専門用語の取り扱いはどうすべきか

 

ここでは技術プレゼンにおける技術専門用語の取り扱いについて、
対策の理解に必要な背景から入ってみたいと思います。

 

 

 

スライド資料を用いたプレゼンに技術情報共有を依存する技術者たちの危うさ

 

日本企業に限りませんが、業界問わず、情報の共有にはスライドを用いることを良しとする潮流があります。

 

短時間で高密度な情報を共有する等のセミナー、学会、社外への説明等へのスライド活用は理解できますが、社内の情報共有をスライド資料に依存することは正直なところ技術者育成の観点では望ましくありません。

 

 

技術プレゼンに向けたスライド資料の構成や内容の妥当性は、

 

 

「徹底した技術文章作成力に裏付けられた企画書」

 

 

ができて初めて担保されるためです。

 

 

 

伝達すべき技術情報をどのような順序で伝え、その中でどのような結論に聴講者を誘導するのかという、

 

 

「俯瞰的な視点のバイブルとなる企画書」

 

 

をそれなりの精度で作成できる技術者は、当社での企業指導の実感からは少数派であると強く感じます。

 

 

 

このような状況で、スライド資料の作成方法といったテクニックに関する情報が氾濫していることに危機感を感じます。

 

 

 

技術者が本質的なスキルである普遍的スキルを習得するには、
まず地道に技術文章作成力を技術報告書という題材を使って鍛錬すべきでしょう。

 

 

※関連コラム/連載

 

技術者の作成するプレゼン資料がわかりにくい

 

第12回 技術テーマ立案に不可欠な技術者の「企画力」鍛錬の勘所 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

 

技術プレゼンの流れを予め決める企画書を作成し、技術専門用語を抽出するのが対策の第一歩

 

技術者が技術プレゼンを行うにあたって、スライド資料を作成する前に行うべきは企画書の作成です。

 

企画書の書き方などは過去のコラム、連載、登壇したセミナー等で取り上げていますのでそちらをご参考にしていただきたいのですが、ここで重要なのは企画書を作成した際に出てくる技術専門用語の抽出です。

 

 

論理的思考力が高く俯瞰的に物事を見ることのできる技術者であれば上記の抽出は難なくできますが、普通は技術者自身にとって当たり前の話であるため何が技術専門用語に該当するのか見えない可能性が高いです。

 

 

そのため、一度企画書を周りの技術者に見てもらうという第三者視点を活用するのも一案です。

 

 

このようにして企画書に現れる技術専門用語(と技術者自身、または周りの技術者が認識したもの)が何なのかを理解します。

 

 

 

技術専門用語をわかりやすく説明するには専門書や辞典を活用した事前準備が必須

 

抽出された技術専門用語について、多くの技術者は説明できると感じるはずです。

 

 

しかし、実際に技術専門用語を説明しようとすると、

 

 

 

「説明そのものが技術専門用語が多くわかりにくい」

 

 

 

という印象を技術プレゼン聴講者に与えることも多いでしょう。

 

 

 

このような状況を避けるため、

 

「専門書や辞典を活用して、技術専門用語の本質を理解する」

 

という取り組みが不可欠です。

 

 

 

今一度何となく理解している可能性もある技術専門用語を調べ直すことで、
技術専門用語に対する本当の意味での理解に到達することが技術者に求められます。

 

 

これは技術専門用語理解という取り組みを一例とした、技術者育成の取り組みとして大変重要なものになります。

 

 

 

技術専門用語をスライド資料中にて”一文”で解説し、それを技術プレゼンにおいて口頭で補足説明する準備をする

 

技術専門用語を正確に理解できた後に行うべきは、

 

「技術用語解説をスライド資料に追加し、口頭で概要を説明する」

 

ということです。

 

 

 

技術専門用語をだらだらと説明すると間延びしてスライド資料がわかりにくくなるため、
端的にかつ重要な部分を説明することが求められます。

 

 

 

よって、スライド資料中で技術専門用語解説に求められる分量はせいぜい一文です。
一言でもいいかもしれません。

 

 

そして補足が必要な内容については技術プレゼンなので口頭で補足説明すれば問題ありません。

 

 

この一文(または一言)で説明するというのは言うほど簡単ではなく、
技術者の普遍的スキルの一つである論理的思考力を生かした要点抽出という作業が必要となります。

 

このような取り組みを技術者が行うことで技術プレゼンに用いられるスライドは理解しやすいものとなり、
技術プレゼン資料として求められる情報の浸透と拡散という役割を担えるようになるのです。

 

 

※関連連載

 

第4回 技術者は論理的思考力をどう鍛えるか 日刊工業新聞「機械設計」連載

 

 

技術プレゼンに使用するスライド資料を作成する技術者に向けた指導のご参考にしていただければと思います。

 

 

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