研究開発を担う若手技術者に売れる製品を開発してほしい

公開日: 2026年6月15日 | 最終更新日: 2026年6月15日

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研究開発を担う若手技術者に売れる製品を開発してほしければ当事者意識を持たせる技術業務を自由にやらせてみる

 

今回は研究開発を担う若手技術者に売れる製品を開発してほしい、
とリーダーや管理職が考える際、若手技術者に行うべき指示について考えます。

 

 

 

 

 

時に売り上げへの貢献を強く求められる技術部門の苦悩

 

“売れる製品を開発してほしい”。

 

 

経営陣からの圧力により、技術部隊のリーダーや管理職が売り上げを求められることも珍しくありません。

 

(株式を公開している企業のやオーナー企業の場合)経営陣の背景にある株主からの要求の強さを考慮すれば、致し方ない部分もあると思います。

 

 

 

私個人の考え方は技術者が売り上げを意識しすぎると市場ニーズに迎合することになり、
結果として既に競合が居るようなレッドオーシャンの領域で消耗戦に陥るケースが多いと思います。

 

こうならないよう活用されるのが生成AIですが、
他も同じものを使うことで結局同様の状況に陥るリスクはむしろ以前より上がっている可能性もあります。

 

 

さらに問題なのが技術者個人でいえば、
技術の本質という技術者の普遍的スキルにも関連する技術の本質を突き詰めるという姿勢の低下と、
最終的には技術チームという組織の技術力低下です。

 

 

技術部隊が売れるものを作ってほしいと要求されるほど、
実は逆の方向に進み、技術チームを弱体化させることになってしまうのです。

 

 

 

※関連コラム

 

技術者の評価で売上/利益を重視するリスク

 

 

 

 

 

効率は技術者育成に加え、製品開発でも時に”悪”となる

 

技術者の普遍的スキルの醸成を筆頭とした技術者育成に”効率”の考え方を入れてはいけない。

 

 

 

これは何度も繰り返し述べてきたことです。

 

分かりやすい効率を最初から求めることが、
結果として非効率であるためです。

 

 

技術者育成の本質は、

 

「被育成者である当人が”能動的”に成長するような状態にする」

 

ことです。

 

 

能動的成長の軌道に乗せるには、必ずある程度の時間が必要です。

 

 

ここまでもっていくことができなければ、
本当の意味での企業組織内で活躍する戦闘力のある技術者にすることはできません。

 

 

同様に売れる製品を開発してほしいという社内要望とセットでよく出てくる単語が”効率”です。

 

 

できる限り短期間で製品を開発してほしいという流れになることを考えれば自然です。

 

製品開発も効率を求めつつ売り上げという分かりやすい目標設定をすると、
前出の様な足元を弱体化させる道に逸れることとなり、
結果として非効率になるのです。

 

 

効率化が求められるからこそ、
”わかりやすい”効率に陥らないよう注意が必要です。

 

 

 

 

 

当事者意識は開発業務推進力発揮の大前提

 

では売れる製品を技術者に開発してもらうにはどうすればいいのでしょうか。

 

 

最重要なのは

 

「担当する技術者に当事者意識を持たせること」

 

であると私は考えます。

 

 

 

当事者意識をもって技術業務に取り組まなければ、
技術的な課題に直面した時にそれを乗り越え、
最後までやりきるということができないというのがその理由です。

 

 

売れる製品の開発という高尚な目的の達成は、

 

「当事者である技術者が技術業務を完遂させる」

 

ことが”必要条件”であることに疑いの余地はありません。

 

 

技術者育成の観点からも重要な点であり、
技術者を育てたいのであれば当事者にそう思わせることが出発点なのです。

 

 

 

当事者意識を持たせるには

 

当事者意識を持たせるには市場ニーズなどの外部由来情報出発ではなく、

 

「技術者の関心のあること、興味のあることを出発点として技術テーマ(の一部)を担当させる」

 

のが一案です。

 

 

 

リーダーや管理職は技術者の関心ごとや興味があること、
積極的に取り組む技術領域を注意深く考察し、
どのような技術テーマであれば当事者意識をもって業務をできそうかを注意深く観察する必要があります。

 

 

社運をかけて開発を行った製品が、
後にロングセラーになったという事例は枚挙に暇がありません。

 

 

このような開発の現場は技術者の思いだけではないとは思いますが、
少なくともこれができないと会社が無くなってしまうなど、
社員一丸となってやりきるという気持ちになっていたケースが多いものと考えます。

 

このような例をみてもポイントとなるのは当事者意識といえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

売れる製品は時に無駄から生まれることもある

 

”技術者たちの思いの重要性は理解できる。
しかし、それに基づいて製品開発の企画を組み立てていては売れるものはできないのではないか。”

 

 

”技術者の当事者意識を持たせることに配慮しすぎた開発を行っても、
それは市場ニーズとかけ離れて”無駄”なのではないか。”

 

 

多くのリーダーや管理職が考えるところでしょう。

 

 

上記のような話は当然妥当な側面もあります。

 

 

ただ開発というものを改めて考えていただくと、

 

「1つのヒット商品の背景には数十、数百の失敗作や試作がある」

 

のは珍しくないことはお分かりいただけるかと思います。

 

 

 

ある程度は数を打たなければならない前提は今も変わらないことを考えれば、
技術者たちが当事者意識を持てる技術テーマをベースに製品開発を行い、
まずは数を打つことが結局のところ売れる製品開発には重要であり、
私個人の考えとしては”効率的”だと思います。

 

 

 

このようにして数を打つ、つまり複数の技術業務を完遂するという”実践経験の積み重ね”は、
技術者にとって最重要の”知恵”、つまり知っている知識を応用して具体的な実践計画の立案とその実行に不可欠な知見を身につけることにつながります。

 

 

 

無駄と考えられることはすべてが無駄なのではなく、

 

「技術者を成長させる」

 

という側面もあるのです。

 

 

 

技術者個人の成長が売れる製品開発に向けた土台となる

 

上記の経験を通じて成長した技術者は、
自然と自分がやってみたい技術テーマを企画できるようになってきます。

 

 

 

この流れができて初めて売れる製品の開発の前提である、
能動的に様々な技術業務にチャレンジする土壌が醸成されるのです。

 

 

 

では”研究開発を担う若手技術者に売れる製品を開発してほしい”とリーダーや管理職が考えた場合、
どうしたらいいのでしょうか。

 

 

 

 

 

若手技術者が興味を示した技術業務に関連する技術テーマを基本とする

 

若手技術者が対象であったとしても、当事者意識の醸成が重要なのは同じです。

 

 

 

若手技術者との面談に加え、日常的な技術業務への取り組み姿勢をよく観察する

 

若手技術者がどのような技術に興味があるかを紐解くにあたり、
個別面談を考えるリーダーや管理職の方がいるかもしれません。

 

 

当然それも選択肢ではありますが、
自らの考え方、特に本質部分の言語化が苦手な若手技術者は個別面談だけで見出すのは容易ではありません。

 

 

ここでリーダーや管理職に実行いただきたいのが、

 

「日常的な技術業務への取り組み姿勢の観察」

 

です。

 

 

 

例えば材料試験を一例の業務として取り上げます。

 

若手技術者の傾向と当事者意識を持たせやすい技術テーマについて考えます。

 

分析関係

 

”材料試験の試験片の構成成分に関する質問が多く、
何からできているかについて興味を持っている。

 

その分析技術を複数示したところ、
熱心にそれらに取り組んだ。”

 

 

このような若手技術者には”組成分析”等に関連する技術テーマから取り組ませるのがいいかと思います。

 

目で見てわからない組成を知りたがる知的好奇心が、
分析によって満たされることを念頭に、
新しい製品開発の中で材料分析に関する部分をその若手技術者に担ってもらう、
というのが一案です。

 

分析手法は特定領域に限定せず、
XRF、FT-IR、NMR、ICPなど、有機や無機など広く取り組ませ、
技術の幅を広げることを念頭に若手技術者に業務配分させるのが肝要です。

 

 

 

データ解析関係

 

取得した材料データを多角的に解析し、
データを描写するグラフの選定もセンスがいい。

 

 

このような若手技術者には、
取得するデータの回帰分析を担当させるという考えもあります。

 

確率密度関数の選定からモデルフィッテイング、
得られたデータから何を言えるかの考察といった業務を担当させるのが一案です。

 

 

 

治具設計

 

材料試験を行うにあたり、試験規格通りではできない試験もあります。

 

 

ここで試験規格にこだわらずに、自ら工夫して治具設計してデータを取得することができた若手技術者には、
治具設計を担当してもらうことも選択肢となるでしょう。

 

 

新しい製品開発には今までにない工程が出てくる可能性もあり、
そのような場面では必ず治具が必要となります。

 

このような柔軟性が求められる場面で、業務の設計を担当させることも一考の余地はあるでしょう。

 

 

※関連コラム

 

若手技術者が試験規格の内容以外を受け入れずに意固地になる

 

 

以上は一例ではありますが、
各若手技術者にとって関心の高い業務を与えられれば、
若手技術者がそれを効率よく推進してくれる確率が高まります。

 

 

その業務が何かを若手技術者の言動や業務推進姿勢を観察の上で見出し、
新製品開発に関わる技術テーマやその一部の当該業務を担当させることで、
若手技術者の当事者意識の高さを維持させながら技術業務の実践経験を積ませること肝要です。

 

 

 

 

 

若手技術者の関心に基づく技術業務は全体の2-3割にする

 

技術業務全体の配分を考えるリーダーや管理職にとって、
当事者意識の維持のためとはいえ若手技術者の関心のある業務だけで、
業務配分を行うことはほぼ不可能です。

 

 

若手技術者から見れば無意味、雑用と思われるような、
例えば事務仕事や発注業務なども技術チーム運営の観点から言えば重要です。

 

 

このようなことも念頭に、
リーダーや管理職は前出の技術業務の負荷配分は全体の2-3割程度までとし、
基本的にはリーダーや管理職が必要と思われる業務を担当させる業務設計手法で問題ありません。

 

 

日々行う技術業務の中で当事者意識を持てる技術業務が少しでもあることは、
当事者意識醸成だけでなく日常業務に対するモチベーション維持にも効果があります。

 

 

 

 

 

技術報告書作成は”必ず”行わせる

 

前出の通り当事者意識をもって取り組める技術業務は、
若手技術者をモチベーションを高めことができます。

 

 

関心がある技術業務については、時に若手技術者から様々なアイデアが出て、
それに応じた様々な業務が行われる可能性もあります。

 

 

これをそのまま放置すると、
技術者は言ってしまえば”好き勝手”に迷走することにもなりかねません。

 

 

 

そこでリーダーや管理職が是非若手技術者に行わせたいのが、

 

「技術報告書の作成」

 

です。

 

 

ここには主に2つの意味があります。

 

 

 

技術の伝承は活字媒体である技術報告書が確実

 

技術報告書の重要な役割は複数ありますが、その一つが

 

「技術の伝承」

 

です。

 

 

 

この役割を担えるのは、媒体でいえばやはり技術報告書です。

 

 

行った業務の記録を残すためにも、
技術報告書を若手技術者に作成させ、
技術者の普遍的スキルの一つである技術文章作成力を高めることは不可欠です。

 

このような取り組みは結果として企業の技術力の向上にもつながっていきます。

 

 

 

行ったことを活字化させることで若手技術者の頭を整理させる

 

最重要の観点はここでしょう。

 

 

実際に行った技術業務の詳細は、
今回の例でいえば若手技術者しか知りません。

 

 

この詳細を適切に報告させるには、

 

「若手技術者の頭の中を整理する」

 

必要があります。

 

 

 

しかし自らが最も多くの情報を持っている時ほど第三者に説明をすることが難しく、
その理由は説明をする当事者の頭が整理できていないことによります。

 

 

 

技術報告書の作成という実業務の活字化はこの頭の整理に大変効果があり、
技術者の普遍的スキルでいえば前出の技術文章作成力に加え、
論理的思考力、すなわち自らを第三者目線で客観的に見つめる力を養うことができます。

 

 

 

今回事例として示した技術業務は若手技術者自身が当事者意識を持っていることが多く、
得てしてやらされている感が出やすい技術報告書作成業務に対し、
若手技術者が能動的に取り組む条件が整っているとも言えます。

 

 

 

この機会を逃さずに技術報告書作成を若手技術者の業務に取り入れることで、
新製品開発の礎となる試行錯誤の能動的実行に加え、
技術者育成の効果を得るという一石二鳥の取り組みにすることが可能となります。

 

 

 

売れる製品の開発に貢献できる粘り強く技術業務に取り組む若手技術者は、
こうして生み出されていくのです。

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

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