言うことをきかない 頑固さと仕事を完遂できない弱さを併せ持つ若手技術者たち
公開日: 2015年4月19日 | 最終更新日: 2024年7月7日
タグ: OJTの注意点, 仕事の遅れる若手技術者, 技術者人材育成
表向き大人しい、または人当りのいい若手技術者であっても、
技術者という職業を選ぶ時点で自らの仕事にこだわりがあるのが一般的です。
そのため、
「こういう風にしたらいいと思う」
といった助言に耳を傾けない ( 言うことをきかない ) ことが多々あります。
そして助言を聴かないという強靭な頑なさがある反面、
「組織の求める成果を上げられない」
という基本スキルに劣っているケースが多々あります。
本コラムに関連した当社事業
業務命令だけでは技術者育成にはつながらない
もちろん必要に応じて、
「業務命令」
を発令して上司の意図通りに強制的に動かすということもできます。
多少の時間がかかったとしても、成果を出せる上司の言うとおり動かせば、
仕事を完遂することはできると思います。
ところが業務命令で動く若手技術者は、後に、
– 言われたことしかできない技術者
– 上層部に不信感を募らせ、不満のために口を動かし続け、手を動かせない技術者
というどちらかの技術者へと変質し、30歳を超えてしまうと
「自ら課題を発見し、それを解決する」
という最重要スキルを有する技術者へ育成するのは極めて困難となります。
このような技術者が増えてしまうと、
いつまでたっても技術者指導者層が実務もこなす管理職となり、
時間がなかなか捻出できないために余裕がなくなるために、
– 組織がさらに目指すべき将来戦略
– 最適な組織体制検討
– 人員採用・配置
といった本来行うべき管理職の仕事ができなくなってしまいます。
その一方で、助言も聴かず成果を出せない若手技術者を放っておくわけにはいきません。
では、どうしたらいいのでしょうか。
この苦境を脱するには2通りのアプローチがあります。
どちらのアプローチがいいのかは、技術者指導者層である上司の方々が、
育成される若手技術者をどのように感じているのかというので2通りに分かれます。
1.ポテンシャルがあり、将来的には組織の中核を担える可能性が高い
頑固で人のいうことも聴かず、まだ経験も浅く荒削りなスキルのために成果を出していない。
それでも時折見せるセンスを感じ、育っていくイメージを浮かべることができる。
いわゆる、期待できる若手技術者の場合です。
このタイプの若手技術者については、
「ある程度の裁量を与えて仕事を任せ、成果を出すための最小限のフォローをしながらプレッシャーにさらす」
というアプローチが最適です。
いわゆる、「梯子をはずす」といったイメージです。
最前線のプレッシャーにさらされながら、自分の持っている手持ち札を自由に使いながら、
何とか仕事をやり切るという経験こそが、全体を俯瞰して見るスキルを得るために必須の経験です。
守り育てるという方向ではなく、裁量という自由度を与えながらも、
成果を求められるというプレッシャーを感じさせるという、
厳しい環境にさらすというイメージです。
もちろん未経験であるゆえ、強い精神的苦痛を感じることもあるため、
言動に異常が出た場合は業務負荷を下げるなどのフォローも必要です。
これは、若手技術者が這い上がってくるのかという「賭け」の要素も入ってきますが、
育成する側もこのくらいの危機感を持って仕事をしないと、ポテンシャルのある若手技術者を育てることはできません。
2.将来前線を担える可能性が低い
残念ながら学歴、年齢にかかわらず将来的に前線で戦える力を身に付けられない技術者もいるのは事実です。
見切りをつけるタイミングは難しいところですが、
このような若手技術者は「間接業務遂行能力」を徹底的に鍛えることが組織として重要です。
例えば、
– データ入力のような時間のかかる定常作業
– 装置や設備の保守管理といった管理業務
– チームメンバーが愚痴を言いたくなった時にそれを聴いてあげられる聞き役のメンター的業務
といったものです。
どれも高い給与を払ってまで….と言いたくなる仕事ですが、
組織としては非常に重要な仕事です。
このような間接業務をこなしてくれるメンバーがいれば、
他の前線で戦う技術者たちの時間を捻出させることができるのです。
そして、何かあった時に愚痴を聴いてくれる人というのは、
仮にその人が組織として成果を上げられていなくても、
他のメンバーの精神的バランスを取るといった観点からも重要な存在です。
頑固で助言を聴かない一方で、成果も出せない技術者はどちらの方向で活かせるのか。
そのような観点で若手技術者の育成を考えると、
技術者人材育成のブレークスルーを見出すことができるかもしれません。
本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い
技術者であっても個々人の有する特異不得意の領域にはかなりの偏りがあります。
一般的な人材育成では、技術者としての職種特性を念頭に置いたキャリアプラン検討は難しいかと思います。
技術者には今回ご紹介したものを一例とすると、前線に立てるタイプとそうでないタイプがいることを示しています。
既に述べた通りどちらがいい悪いということはなく、
それぞれ力を発揮できる領域で活躍してもらえるよう、
仕事を設計するのがリーダーや管理職の重要な仕事だと考えます。
この見極めに効果的なものの一つが、
「数値データの整理と視覚化を設定期限内にやらせる」
です。
この業務は技術者としての特性を見極めるのによく使う手段です。
今回ご紹介した分類でいうと、技術者は以下のどちらかに近い挙動を示すと思います。
1.ポテンシャルがあり、将来的には組織の中核を担える可能性が高い
・期限通りにアウトプットを出せる
・仕事を進めるにあたり、直属のリーダーや管理職だけでなく、他部署と相談をする
・「自分はこのように考えてみた」と、指示以上の提案をしてくる
・プレッシャーに強い(ように見える)
2.将来前線を担える可能性が低い
・数学的な内容を多く盛り込んだまとめ方をする(検定、標準偏差/CV値、確率密度関数等の数学的な内容を盛り込む)
・相談ではなく、一人で推進しようとする傾向がある
・細かいことを調べることを苦にしない
・期限を守れない
・プレッシャーを避けようとする(ように見える)
このように書くと後者が悪いように見えてしまいますが、
前線を担えなくとも数学的な知見を応用しながら丁寧にデータを扱える、
ということは技術者にとって大変重要なスキルです。
その強みを最大限に活かす意味でも、
最前線に配置するよりも間接業務遂行能力で力を発揮してもらう方が、
技術者育成の観点では妥当です。
このような立ち位置の技術者は数学を中心に、
日々精進することが必須となります。
一方で最前線を担える可能性のある技術者はプレッシャーをかけつつ、
複数の人間と協業する一方で、自分の意見をきちんと言えるよう、
業務を設計し、割り振ることがリーダーや管理職に求められます。
技術者育成では上記のような適性を見る業務をNDA締結の上、OJTで設計し、
リーダーや管理職の方々と協業しながら若手技術者に実践いただき、
その結果をヒアリング、評価しながら、
各技術者のスキルアッププランをご提案させていただいております。
最後に
当社では、研究開発を行う技術者向けの技術者育成コンサルティングを提供しています。
技術者育成コンサルティングでは、技術報告書の書き方、技術テーマ企画書の作成法、技術専門知識の能動的学習法、技術プレゼンといった、技術業務の基本スキルの習得を目指す育成やその支援を行います。
中長期目線での契約の場合、NDA締結の上、
実際に技術チームの打ち合わせなどに参加し、
実務における技術者の方々の取り組み姿勢を客観的視点から確認します。
加えて技術者との個別面談を複数回実施し、
技術者としての資質判断の一助となる情報提供を、
管理職に対して客観的、かつ技術的視点から行います。
技術者の資質や実務力の判断についてのご要望、ご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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