自社の 要素技術 のレベルが上がらない

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今回は製造業企業における要素技術の醸成戦略と、それに伴う技術者育成について考えます。

 

 

 

 

企業では後回しにされることもある要素技術

 

情報があふれる現代においては、いわゆるトレンドに人、時間、お金を使う傾向が顕著に出ており、
結果が出るまでに時間のかかる技術の基本、いわゆる要素技術が後回しになることが多々あります。

 

企業は大学ではないというのは正論である一方、
小さな要素技術を生み出す力と、
それをしかるべき場所で発信できる力が無ければ、
自社技術はじり貧の道をたどるでしょう。

 

効率だけで実現できる技術は、
お金で買う時代だからです。

 

 

では、技術者たちは要素技術を育むために何をすればいいのでしょうか。

 

 

 

 

要素技術醸成に向けた戦略では査読付きの科学誌への論文投稿が効果的

 

やはり小さなことでも要素技術を生み出し、
それをきちんとした技術情報で発信するためには、

 

 

「査読付き国際科学誌に論文を掲載させる」

 

 

ということが最も効果的です。

 

 

 

国内や海外でも地元密着の学会では不十分です。
このような学会では村社会になってしまっているケースが多く、
指摘内容も重箱の隅をつつくような内容で本質では無い可能性がある上、、
その学会の重鎮と知り合いか等、技術と無関係な要因が影響を与えるなど、
仮に掲載されても論文の価値に疑問符がついてしまう可能性があるためです。

 

 

国際科学誌はどこが良いかはその業界によりますが、
Elsevier、Springer、Natureといった出版社が出版している論文が代表的です。
もちろん日本発の論文もあります(例:高分子学会の Polymer Journal 等)。

 

このような国際科学誌に対し、中堅技術者が企業で取り組む研究開発業務の一部を、
知的財産保護のため必要な知財を抑えた上で論文投稿し、
各専門家の査読を受け、必要に応じて技術的な議論をする。

 

 

これこそが自社技術の専門性を高める最良のアプローチといえます。

 

 

 

 

技術的に客観的な視点に基づいた査読者との議論は技術者のスキル向上に効果的

 

国際科学誌の編集者は、査読者をその道の専門家を世界中からランダムに選定する上、
一般的に査読者は執筆者がどこの組織か、どこの国かといったことは無関係に、
純粋な技術的観点で掲載価値があるかを判断します。

 

昨今は応用研究に主軸を置いた学術論文もあるため、
科学誌の方向性が発表したい内容と合致したところを探索の上、
投稿することで妥当な技術議論ができるうえ、掲載確率も高まるでしょう。

 

 

そして上記のような中堅技術者の取り組みに対し、
若手技術者をサポートさせるということが極めて重要です。

 

 

 

 

若手技術者は科学誌への論文投稿に挑戦する中堅技術者の支援を担当する

 

若手技術者の最優先で取り組むべき業務は、

 

– その組織で当たり前の通常業務をきちんと理解し、自分でできるようにする

– 中堅技術者の業務(主に雑用業務)を担い、時間捻出を助ける

 

の2点です。

 

つまり時間の多くは若手技術者にとって、

「言われたことをきちんとこなす」

ということが業務の大部分になります。

 

 

これは極めて重要なことで、
若手技術者が今後大きな仕事を行うにあたっては必要不可欠な取り組みといえます。

 

 

しかし、このような取り組みだけでは若さと柔軟性のある技術者の強みを生かしきれないのも事実です。

 

そこで上述したような

 

「国際科学誌に論文を投稿する」

 

という極めて高い専門性を必要とする取り組みを見せるのです。

 

 

このような経験を若いうちにすることで、

「この企業に居れば、自分の専門性を武器に世界で勝負できる」

ということを認識させることができるようになります。

 

国際科学誌に論文を投稿するということは、
常に視線が外を向き、その内容について第三者目線による判断が必要である、
という技術者にとって極めて重要な素地を育むことになります。

 

 

 

 

売上と利益ばかりに目を向けた短期視点だけでは要素技術は育たない

 

しかしながらこのような流れを作るには、
技術部隊を率いるマネジメントの取り組みも極めて重要です。

 

 

企業の売り上げや利益につながるような日々の業務や開発を進めるのは当然ですが、
それだけでは本質的な技術が育たないということを認識し、
将来的な技術競争に勝てないということを予測しなくてはいけません。

 

 

技術者を抱える企業の生き残りには要素技術が重要であることを再認識し、
その要素技術を育てるための使命の一つとして、
上記のような技術者育成体制を企業内に構築することが肝要です。

 

 

 

 

 

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