技術者のイノベーションと 企画力2: 企画力 発揮のための3大要素
公開日: 2019年4月8日 | 最終更新日: 2019年4月6日
タグ: イノベーションと企画力
前回の連載コラムでは、イノベーションの基本となる 企画力 とそれが創造力と誘導力という力から構成されることを説明しました。
※ 技術者の イノベーション と 企画力 1:企画力とその盲点
今日は企画力がその力を発揮するための要素について考えてみます。
技術者が誤解している 企画力 発揮のための要素
当社の講演や研修などで、技術者に対し以下の質問をよくします。
「あなたにとって企画力を発揮するために必要な要素は何だと思いますか」
殆どの技術者は、
「専門知識」
またはそれに類似する答えをします。
やはり技術者は専門性至上主義が常に付きまとっていることがわかります。
※専門性至上主義に関する参考コラム
若手技術者の専門性に関する 執着心 をモチベーションの原動力に
当然ながら専門知識の蓄積につながる
「最前線での実務経験」
は極めて重要です。
この場合に重要なのは「最前線」という部分です。
他の人が実務をやっているのを他人事のように横から口だけ出す、
問題が起こった時に人に押し付けるといったようなスタンスの実務経験は、
技術者にとって価値が無いと断言します。
人に仕事を振るだけの仕事が以下に技術者にとって問題かは以下の所で述べたことがあります。
自らの責任をもって完遂した業務こそ、
本当の意味での専門知識がみにつきます。
最前線での実務経験の大切さと関連する内容については以下の所でも述べていますので合わせてご覧ください。
つまり、頭で考えたり、本を読んだりではなく、
予想もつかないところで実際に起こる様々な問題や課題をいかにして乗り切るのか、という泥臭い経験は企画力の醸成にも必須のベースといえるのです。
企画力発揮のための3大要素
結論から先に言うと企画力発揮のための要素は3つあります。
それは、
– 熱意
– 自由
– 資金
の3つです。
当然ながらこれらの要素が完全にそろう環境は少ないのは言うまでもありません。
しかし、この3つの要素がそろうと企画力を発揮する環境が整った、
ということを意味することは知っておいた方が良いでしょう。
以下、それぞれの要素について見ていきたいと思います。
企画力発揮に最重要の「熱意」
まずはここがすべてでしょう。
これが無いと資金や自由があっても絶対に企画力は発揮できません。
会社から言われたから。
そのような発言をする技術者は絶対にいい企画を立案できません。
他人事のスタンスで取り組む技術者は、企画を考える業務に携わる資格がありません。
「何としても自分で考えた企画を成立させる」
という強い危機感と責任感に裏付けられた当事者意識こそが、企画の優位性を示す「創造力」と、それを後押ししてくれる味方を増やすための「誘導力」という企画力を輝かせる力となります。
当事者意識無き企画は意味がなさないということは、
本コラムをお読みいただいている方にもご理解いただけることだと思います。
こういう話をすると若手技術者の中には、
「自分は成果を出すために大学で専門性を学び会社に入った」
という前置きの上で、
「自分にチャンスが回ってこないのは、会社の体質が古いからだ」
といった旨の発言をすることがあります。
このようなことをいう若手技術者について、
気持ちはわかりますが企画を立案し、それを実行するような状態には無い、
ということを自ら対外的に示していることになります。
上記のような熱意をもって自らの創造力と誘導力を駆使しながら企画を立案できる前提条件として、
既に社内で何らかの成果を出した、または信頼を獲得している
ということを忘れてはいけません。
企業の基本は組織プレーです。
どんな企業に入ったにしても、まずは組織に貢献しなくては企画を立案するチャンスが巡ってくるわけはありません。
この辺りは以下の所でも書いてありますので、
合わせてご覧ください。
※ 新入社員 の技術者育成において徹底すべきこととは
※ やりたいことができない という発言をする若手技術者
技術者の企画力の強烈な追い風となる「自由」
あくまで熱意、及びその熱意を周りが理解できる状況が整ったという前提でありますが、企画力を大きく引き上げるのが「自由」です。
2014年に朝日新聞に載っていた中村修二博士のインタビューが印象的です。
独創的な研究を生み出すには何が必要だと思うか、
という質問に対し、以下のように答えていました。
「私も日亜化学でできたというのは、入って十数年は良いベンチャー企業だったから。創業者がお金を出し、一切干渉しないという理想的な環境だった。(中略)個人で自由にできるから独創的な発明ができる。」
当然ながら進捗を会社組織側が管理することは大切です。
しかし、必要以上に上司や組織が干渉すると、
企画力の中で重要な「創造力」に悪影響を及ぼします。
やると決めたら基本的には担当者に任せるという「自由」も、
企画力発揮には重要なのです。
製造業(工学系)の企画には「資金」が必須
理論を重視する企画であれば、
物によってはPC一台で色々なプロジェクトを進めることも可能かもしれません。
しかし、実際にものづくりをやろうとなると、
大なり小なり資金が必要となります。
自社に設備などがない場合は外注を使う必要もあるでしょう。
製造業の企業であるにもかかわらず、
予算をほとんど付けない企業は意外にも多いです。
当然ながら限られた予算内で様々なことをやるというのも技術者の大切な仕事です。
しかし、成功するかしないかわからない企画に対して予算をつけるのは、
一種の「投資」であり、お金をかけずに成果を出せというのは、ものづくり系の企業の場合、極めて酷な話です。
どこで投資回収するのか、ということは当然ながら技術者がきちんと考えるべきですが、そもそも論として
「企画にお金をかけずにイノベーションを生み出せ」
というのは今の時代において武器を持たずに戦場に行けということに等しいです。技術の進歩速度は加速度的に上昇しており、最低でもそこにキャッチアップするための準備にお金を出さないと、企業にとって新しいお金を生み出すイノベーション技術仕込みのスタートラインにも立てません。
いかがでしたでしょうか。
今日は企画力がその力を発揮するための3大要素について説明しました。
創造力と誘導力から成る企画力ですが、
それの後押しをする3つの要素の存在も重要であることがお分かりいただけたと思います。
技術者育成において企画力の醸成は必須であり、
グローバル競争に直面する企業にとって必要不可欠のソフトとも言えます。
技術力で勝負する企業にとってイノベーションが必要であることに疑いの余地はない一方、その基本となる技術者の企画力をいかんなく発揮してもらうためには、技術者当人の当事者意識はもちろん、経営者側、マネジメント側にも資金や自由というものを準備する必要があるのです。
ご参考になれば幸いです。
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