研究開発を担当する若手技術者が試作現場の技術者を下に見てしまうことがある

公開日: 2026年8月10日 | 最終更新日: 2026年8月10日

タグ: , , ,

研究開発を担当する若手技術者が試作現場の技術者を下に見てしまうことがある

 

今回は研究開発を担当する若手技術者が同じ社内の試作現場の技術者を下に見てしまうことについて、
技術者育成の観点から対応を考えます。

 

 

 

 

 

業種で下に見る若手技術者は伸び悩む

 

これは重要なところなのではじめに述べておきます。

 

 

理由はどうあれ、職種で人を下に見るような若手技術者は伸び悩む傾向にあります。

 

 

技術者以前に社会人として、そして人として問題があることを踏まえれば当然かもしれません。

 

 

 

人を下に見る技術者は協力を得られなくなる

 

伸び悩む理由は単純です。

 

周りからの協力を得られなくなるからです。

 

 

若手技術者のうちはスケールも小さく、難易度も高くない技術業務が多いでしょう。
しかしある程度年齢を重ねて中堅技術者になってくると、
自分だけで完結するような仕事は少なくなります。

 

 

例えば研究開発を担う技術者の場合、
今回の事例で示す試作を担当する技術者の力をかりることが増えます。

 

 

このようなケースにおいて、
もし研究開発を担う技術者が試作をする技術者に対して前出の様な態度をとっていたら、
試作を依頼しても気持ちよく対応してくれない可能性もでてきます。

 

 

一つひとつは小さなことですが蓄積していくことで、
結果的には技術業務の遅れといった問題につながっていきます。

 

 

周りからの協力を得られなければ仕事が滞りやすくなり、
仕事が滞ることは実践経験の不足につながり、
その不足が技術者の普遍的スキル向上の足かせになるのです。

 

 

 

 

 

研究開発と試作は密接な関係にある

 

製造業における研究開発は試作と密接な関係があります。

研究開発は基礎データの取得や解析など、
現物が無い、若しくは実形状の前段階の形態での評価が主となります。

 

 

製造業企業が最終製品にするには、
実形状かそれに近い状態にしなければなりません。

 

 

このような量産前の試作品を作るのが試作部の役割の一つです。

 

 

ある程度の規模の企業であれば社内に試作機能を有しています。

 

 

今回想定しているのも、同じ会社内に研究開発と試作の各部署がそれぞれ共存している企業での話となります。

 

 

 

 

 

研究開発を担当する若手技術者は知識量の優位性を感じていることが多い

 

研究開発を担う若手技術者は、何故試作部の技術者を下に見ることがあるのか。

 

 

その答えに近づくために必要なのは、
知っていることこそ正義という専門性至上主義の考え方です。

 

 

研究開発を担う部署に配属された若手技術者は、
学生時代に勉強してきたという自負を持っていることが多い。

 

 

その自負の裏付けとなっているのは知識量です。

 

 

 

研究開発を行う部署に配属されたのは、
自分の知識量を評価された結果であり、
考えることこそが使命だ、といった思考を持っていることも、
上記のような考え方の背景にあります。

 

 

 

企業に入ると自分の学生時代の知識が役に立たないことに焦りを感じる

 

実際に企業に入った後、研究開発を行う部署に配属された若手技術者は、

 

「自分が学生時代に身につけた知識が実際の技術業務では使えない」

 

ことに気が付くと思います。

 

 

 

企業における技術業務に必要なのは例えば学生時代の研究室生活と異なり、
技術専門知識を活用した単独での活動ではなく、
より幅広い知識に裏付けられた実行力を伴う知恵と周りの社員との連携です。

 

知恵は当事者意識をもって多くの実践業務を経験して初めて培われるもので、
入社してあまり時間が経過していない若手技術者には無いものです。

 

 

ただ当人たちはそれを理解しておらず、知識の優位性を活かせないことに焦りを感じるのです。

 

研究室生活ではあまり求められない”周りとの連携経験”の不足も、
若手技術者の焦りを高める一因となります。

 

このような焦りが学生時代の知識量の優位性という切り口で、
試作を担う技術者に対峙するきっかけの一つになってしまいます。

 

 

リーダーや管理職は前出の様な問題を研究開発を担当する若手技術者に感じた場合、
どのような対応をすべきでしょうか。

 

 

 

 

 

研究開発を担う若手技術者を試作業務に触れさせ、当該業務理解を深める

 

第一歩は試作業務に触れさせることです。

 

どれだけ話を聴いたとしても実際に行わないとわからない、
やはり百聞は一見に如かずです。

 

どのような形で若手技術者に試作業務に触れさせるかがポイントとなります。

 

 

 

試作業務経験をさせる短期間の研修も一案

 

様々な企業でも取り組まれている可能性があるのは、
実際に試作業務を研修として体験させるというものです。

 

 

これは試作業務の理解という観点で大変効果がある上、
試作業務を担当する技術者との関係を構築できるという意味でも有意義です。

 

 

※関連コラム

 

技術系新入社員が配属されたら真っ先にやるべきことは何か

 

 

 

実際の技術業務に絡めた試作業務の継続的な体験の方が効果的

 

前出の研修は短期間で、ある程度用意されたルートに基づいて行われる教育の意味合いが強いです。

 

 

研究開発を担う若手技術者に試作業務をきちんと理解させるには、
自分が担当する技術業務に関連した継続的な体験の蓄積が重要となります。

 

 

 

試作が必要な研究開発の技術業務を若手技術者にあてがい、体感させる

 

リーダーや管理職がやるべきは、

 

「試作が必要な研究開発の技術業務を若手技術者にあてがい、試作業務を体感させる」

 

ことです。

 

 

 

様々な研究開発テーマの中で試作を行う段階にある技術業務を選定し、
それを若手技術者に担当させ、その上で試作業務に触れさせるのが一案です。

 

 

 

試作業務の一部を若手技術者に担わせる

 

若手技術者に試作が必要な技術業務をあてがった後は、

 

「試作部に迷惑にならない範囲で試作業務を実際に担当させる」

 

ようにしてください。

 

 

 

社内に試作部を持っているような企業では、
通常、研究開発部からの試作は”依頼”と言う形で完結してしまうと思います。

 

この場合、研究開発を担う若手技術者は試作業務を見聞きすることはないと考えられます。

 

 

 

依頼という形で自分の手を離れたらおしまいではなく、
依頼状を持ちながら試作業務に関わっていく流れを作ります。

 

 

 

試作部への事前の根回しと調整は必須

 

リーダーや管理職に求められるのはここです。

 

試作部の立場から言えば、
現場のルールや設備を知らない素人同然の若手技術者が入ってきて作業を手伝うというのは、
作業効率の低下はもちろん、何より怪我のリスクがあるため回避したいのが本音です。

 

 

前出の業務担当を若手技術者に選定する前段階で、
研究開発部のリーダーや管理職は試作部の同リーダーや管理職に、

 

「うちの若手技術者が試作依頼に行くので、○○の作業の一部を手伝わせてほしい」

 

と要望を出し、試作部からの了承を得ておくことが重要です。

 

 

 

この調整は人脈の無い若手技術者には難しいため、
リーダーや管理職に支援してほしいところになります。

 

 

 

数回で終わらせず、継続的する

 

前出の試作業務の体感は数回という単発で終わらせず、
継続させることが重要です。

 

 

これは当該業務の理解を深めるために不可欠な要素です。

 

 

 

 

 

試作業務の継続的な体験を通じた若手技術者の育成効果

 

大きく分けて2点あります。

 

一つは知恵の醸成、もう一つは試作部の技術者達との信頼関係構築です。

 

 

 

実践経験は将来、若手技術者にとっての知恵につながる

 

自分の担当している研究開発業務を通じた試作体験は、
若手技術者にとって知恵の醸成につながる貴重な経験となります。

 

構造解析や取得した材料データを踏まえて作成した図面も、
実際にその形に作ろうとすると想定外の問題が起こるかもしれません。

 

ここでどうやって問題を解決するかといった取り組みを、
試作業務を担当する技術者と研究開発を担当する若手技術者が共に試行錯誤する。

 

 

このような体験は、若手技術者を評論家にさせない貴重な”実践経験”となります。

 

  • 実際のモノづくりではこのような点に配慮しなければならなかったのか。
  • 現場で物を作る人は、こういう部分を見ているのか。

 

このような体験の蓄積はまさに知恵の源泉そのものであり、
知恵を獲得した若手技術者は、将来、様々な問題に直面した場合に、

 

「具体的な行動計画を提案」

 

できるようになります。

 

 

 

知恵の醸成は技術者育成の根幹と言えます。

 

 

 

試作業務の手伝いをする若手技術者は試作部で顔を覚えてもらえる

 

若手技術者が試作業務を手伝っている様子は、
実際に担当している技術者以外の目にも止まるはずで、

 

「あの若手技術者はよく現場に来ているな」

 

という印象を持たれるようになります。

 

 

 

このように顔を覚えてもらうことは、
人と人の間の信頼関係構築につながります。

 

 

社内人脈は冒頭述べた通り仕事の幅とスケールを大きくするのに不可欠です。

 

若手技術者が大きなテーマを動かせるようになるためにも、
このような取り組みを通じて顔を広げることが重要です。

 

 

 

知恵をみにつけ、試作部との信頼関係を構築できた若手技術者は人を下に見ない

 

当然ですが知恵をみにつけた若手技術者は専門性至上主義を乗り越えたため、
既述の焦りもなくなります。

 

さらに人間関係を中心とした信頼関係ができれば、
相手を下に見るといったことは決してないでしょう。

 

試作業務の難しさや重要性、
それに取り組む人を理解したからこその視点だと思います。

 

 

 

今回は研究開発を担当する若手技術者が試作現場の技術者を下に見てしまうことがあるという課題について、技術者育成の観点から解決法の一案をご紹介しました。

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

技術者育成に関するご相談や詳細情報をご希望の方は こちら

技術者育成の主な事業については、以下のリンクをご覧ください:

技術戦略支援事業

⇑ PAGE TOP