反対や否定的意見ばかり発言する技術者のリーダーや管理職に必要な一言

日々の技術的な業務はもちろん、
チームミーティングやディスカッションで若手技術者は自らの意見を述べにくい状況にあります。

 

 

若手技術者に対して積極的に発言させることは、
彼ら、彼女らの成長を後押しし、
技術者としての独り立ちを早めるという観点で大変重要になります。

 

 

 

しかし上記のような若手技術者の課題以前に、
技術者のリーダーや管理職の姿勢がそもそも若手技術者が発言しない主因となっていることもあります。

 

 

 

 

 

議論の効率化と自らの優位性を示したがる技術者リーダーや元技術者の管理職

 

 反対や否定的意見ばかり発言する技術者のリーダーや管理職は、断定せず君はどう思うと問いかける。

Photographed by Christina Morillo

 

 

 

 

個々人のスキルにバラツキはあるものの、
リーダーや管理職になっている技術者や元技術者は、

 

 

「技術者としての経験が長い」

 

 

という事実があります。

 

 

 

 

経験が長いから優れた技術者である、
常に正しいことを技術的に判断できる、
ということと必ずしも同等ではありませんが、
経験が長いというのは事実です。

 

 

 

この事実に対して必要以上の執着やプライドを持つリーダークラスの技術者や、
管理職の元技術者が居るのが実情といえます。

 

 

 

リーダーや管理職が優位性を示す典型例

 

この経験という事実を自身の優位性として示したいという深層心理も働くことで、
若手技術者に対して多い発言が、

 

「技術的な知識の不足や誤解に対する指摘」

 

です。

 

 

・こんなことも知らないのか

 

 

・お前の技術に対する知識は何年前のものだ

 

 

・最近の学校はこんなことも教えないのか

 

 

といった発言は典型例です。

 

 

 

上記の発言をしたリーダーや管理職の多くは、
自らの優位性を示したいという意識を自分では認識していないため、
あまり深い意味なく「知らないの?」というニュアンスで発言している場合が多数派のようです。

 

 

 

しかし自尊心が低い上に、
専門性至上主義にとらわれている若手技術者にとっては大変苦痛と感じるはずです。

 

 

 

この苦痛を味わう、もしくはそのリスクがあるのであれば

 

 

 

「発言するのを控えよう」

 

 

 

となってしまうでしょう。

 

 

 

 

若手技術者から見ると技術的知識の無さを指摘されるのは、

 

「自己否定」

 

 

というように映るからです。

 

 

 

 

リーダーや管理職にそのような意図が無いにもかかわらず、

 

 

 

「否定的な意見」

 

 

 

として捉えらえることが多いのは、
上記のような若手技術者の捉え方によるものも大きいといえます。

 

 

 

 

もどかしく感じる遠回りな技術的議論に対して結論を示してしまう

 

若手技術者の中には、自らの考え方をきちんと述べる方々も居ます。

 

 

これは望ましいことだという考えをもつリーダーや管理職もいることでしょう。

 

 

しかし、若手技術者の技術的な発言の多くは経験不足もあって

 

 

「もどかしく、遠回り」

 

 

と感じることが多いようです。

 

 

 

 

そうすると右往左往している議論にいらだったリーダーや管理職は、、

 

 

 

「これはつまりこういうことだ」

 

 

 

「こういう風に進めろ」

 

 

 

と結論や判断を述べてしまいます。

 

 

 

 

リーダーや管理職の心理の根底にあるのは

 

 

 

「無駄な議論をせずに”効率的”に進めたい」

 

 

 

という気持ちです。

 

 

 

 

しかし、既述の通りリーダーと管理職の考えがすべてにおいて正解とは限らない上、
若手技術者を成長させたいのであれば自らの考えをひとまずアウトプットさせるという我慢が必要だということに、
リーダーや管理職が気が付くことがポイントとなります。

 

 

 

成長したいという熱意のある若手技術者は、
必ずしもリーダーや管理職の助言や判断を求めているわけではないのです。

 

 

議論を通じて自らの考えがあっているのかという検証を行っているだけなのです。

 

 

 

効率的に業務を推進する事に対して貢献できた、
と感じるリーダーや管理職の前向きな気持ちとは裏腹に、
肝心かなめの若手技術者の成長阻害を助長するというのは皮肉といえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

反対や否定と捉えられがちなリーダーや管理職の発言の最後に「と思うが、君はどう考えるか」とつける

 

仮に上記で述べたことをリーダーや管理職が理解していたとしても、
言い方は簡単には変えられず、また受け止める側の若手技術者の考え方も容易には変化しません。

 

 

その一方で、若手技術者が技術的な議論に対等な立場で参加して議論を活性化させるには、
若手技術者がリーダーや管理職の意見に耳を傾けながらも、
それを踏まえて自らの考えをきちんと述べることも必要です。

 

 

このような流れを作る話のやり方の一つに、

 

 

「…と思うが、君はどう考えるか」

 

 

という語尾をつけるというものがあります。

 

 

 

 

 

 

最終判断を自分に求められることで意見を言うという経験が身につく

 

知識量の不足に対する指摘や、結論を示すというリーダーや管理職の発言は、
言ってしまえば一方通行です。

 

 

これだとリーダーや管理職の意見以外は発言が無いという、
技術系の組織では致命的なトップダウンの組織になってしまいます。

 

 

一部のカリスマのような技術者を除き、
偏った組織体系にしてしまうと、技術系の組織は必ず弱体化します。

 

 

その下にいる技術者たちは、
上層にいる技術者以上には伸びず、
加えて指示待ちのタイプに陥るためです。

 

 

 

 

しかし上記を含め、
色々なことがわかっていてもなかなか若手技術者に発言させることが難しい、
と感じる技術者のリーダーや管理職の方も居るでしょう。

 

 

 

そのような方々に実践いただきたいのが、

 

 

 

「…と思うが、君はどう考えるか」

 

 

 

という文言です。

 

 

 

 

最後に「…と思う」という断定を和らげる表現を付加し、
「君はどう考えるか」と意見を述べることを若手技術者に促すという意味があります。

 

 

 

 

これにより、リーダーや管理職に対し断定されていないという安心感と、
どう考えるかという意見を求められたことによる自身の発言動機を得ることができます。

 

 

 

これが最後につけば、否定や反対ととられる可能性のある発言にも、
議論の余地を付与することが可能となるのです。

 

 

 

まずはこのような言葉の付加という小さなことから始めることは、
多くのケースにおいて習慣化するにあたって妥当かと思います。

 

 

 

 

 

「いや」、「違う」といった反射的な発言は慎む

 

上記の取り組みをするにあたり、一つだけ注意すべき点があります。

 

 

それは、

 

 

「否定的な意図から始まる発言は控える」

 

 

ということです。

 

 

 

 

若手技術者の意見の中には、明らかに間違っているもの、
誤解しているものもあります。

 

 

 

そのようなものに触れると、ついつい否定的な返答から入りたくなるのがリーダーや管理職の本音でしょう。

 

 

 

 

ただ否定的な返答を繰り返していると、これが結果的に

 

 

「意見を求めるというのは表向きで、否定しかしない」

 

 

という印象を若手技術者に与え、議論するという基本スキルが身につかないことになります。

 

 

 

従って意見を求めた以上、反射的な否定応答だけはしない様、
リーダーや管理職の方々はご注意ください。

 

 

 

 

技術系チームの強化には長い時間と、何よりリーダーや管理職の「忍耐」が必要です。

 

 

 

色々言いたい中で、まずは相手が若手であっても断定をせず、
意見を述べさせるということを繰り返しながら、
若手技術者が成長しているか否かについて注意深く見守ることが、
長い目で見た場合の技術系チームの成長につながります。

 

 

 

ご参考になれば幸いです。

 

 

 

 

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