若手技術者がOJTで育たない

 

技術者のOJTは対外試合で

 

 

企業において人材は大変重要であり、その育成方法にはOJT、
つまり実務を通じて成長してもらうという考えが一般的です。

 

 

その中で技術者というのはどのような業務内容だとしても、
技術的業務の推進を通じての専門用語をはじめとした知識習得もある程度は不可欠であり、
また、設備を動かす、評価機器を動かすといった身の安全に関する注意が必要なことから、
育成においてはOJTが重要視される傾向にあります。

 

 

しかしながらOJTで様々なことを経験させたとしても、
技術的な内容を何度教えても身につかず、
ミスも多い上に、仕事の送れが目立つ、
といった感想をお持ちのマネジメント側の意見も多いようです。

 

 

今回はこのような状況をどのようにして脱するかについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

元技術者の行うOJTの問題点

 

以下、若手技術者の育成に当たる方が、
元技術者であるマネジメントであるという想定で話を進めます。

 

 

若手技術者の指導に当たるのは、その多くはマネジメントです。

 

 

そして、技術者の育成には技術的な専門性と経験がある程度必要になるため、
教える側も「元技術者」になります。

 

 

 

元技術者の口癖「自分の頃はもっと大変だった」

 

元技術者によくある思考回路として、

 

 

「自分の頃はもっと大変だった」

 

 

というものがあります。

 

 

 

恐らく、育成する側に回っている元技術者の方々も、その上の方から、

 

 

「自分の頃はもっと大変だった」

 

 

という話を繰り返し聞かされたのだと想像します。

 

 

 

 

残念ながら、上から受けた教育というのは、
意識している、していないは別として浸透してしまっていることが多々あります。

 

 

 

主観で定着してしまった考えには客観性が欠けることがある

 

しかし問題なのはその考え方が浸透してしまったという事実ではなく、
自分の頃は大変だったという判断が、

 

「あくまで主観的であり、客観的ではない」

 

ということに気が付いてない場合が多いことです。

 

 

 

発言している方が昔の方が大変だったと思えば、
それはそのように発言するでしょう。

 

 

 

しかし、客観的にみて本当に当時のその方々が大変だったかというと、
それは別問題のケースが多くあるのです。

 

 

 

つまり、得てして元技術者たちは

 

「自分たちの経験は今の人たちに比べると大変である」

 

という

 

「脚色をしがちである」

 

ことに気が付かないのです。

 

 

 

このことが、元技術者の方々が若手技術者に強く当たる傾向を示す一因となります。

 

 

若手技術者に対する高圧的な言動が、正当化されるためです。

 

 

育成する元技術者の方々は、まずこの部分を認識することが肝要です。

 

 

 

 

 

言いにくい若手技術者には手加減する一方、言いやすい若手技術者への言葉は鋭くなる

もう一つ問題があります。

 

 

上記のような主観的脚色に彩られた経験は場合によってはエスカレートしてしまうことです。

 

 

より具体的には、

 

「育成という名の叱責中心の接し方になる」

 

のです。

 

 

 

もちろん、叱責は時に必要です。

 

 

 

しかし、叱責は時に感情論となり、
正しいことを言うにしても言葉にとげがある、
追い込むような表現になることが多くあります。

 

 

叱責もあくまで育成のためです。

 

 

そのためには理解してもらうという前提を忘れてはいけません。

 

 

 

理解してもらうには、不必要な圧力を若手技術者にかけて緊張を高めるのではなく、
ポイントについて要点を絞って伝えることが重要です。

 

 

 

ここで育成を行う元技術者の方々の中には、
そのような叱責を行わないケースもあります。

 

 

それは、

 

「若手技術者が顔にあからさまに出るか、すぐに反論をする場合」

 

です。

 

 

 

 

このような若手技術者に対しては、言っていることが相手に対して不快になっている、
ということがわかるため、どこかで踏みとどまる傾向にあります。

 

 

 

期待が大きく、反論の少ない若手技術者への育成は手厳しい傾向に

 

一方で問題は、

 

「言いやすい若手技術者」

 

です。

 

 

 

育成に関する注意や助言に対して、
大人しく「はい」を繰り返す、といった方が一例です。

 

 

言っている側から見ると、

 

「大して効いていない」

 

となり、

 

「もう少し言っても大丈夫だろう。自分はもっと大変だったのだ。」

 

という考えに行きつきます。

 

 

しかし、表から見てわかりやすいか否かだけであり、
技術者の内面に対する影響は言うほど変わらないのです。

 

 

この見極め不足が、技術者の人材育成において若手技術者を追い込む一因となります。

 

 

 

 

 

社内は主観が入るため、社外の力を活用する

 

ここまでの話を一通り読んだ育成を担当する元技術者の気持ちを代弁すると、

 

「忙しい合間を縫って、自分の時間を使った上にそのような気遣いをするのは割に合わない」

 

ということではないでしょうか。

 

 

 

恐らくそれは事実だと思います。

 

 

 

そして、元技術者の上司たちも同じ気持ちだったと思います。

 

 

そのため、元技術者の方々の中には上司に放ってかれたという、
いわゆる放任タイプの方の下にいたケースもあるでしょう。

 

 

ただ、育成の本質は

 

「若手技術者を戦力に育て、組織としてのパフォーマンスを上げる」

 

ということに尽きます。

 

 

 

よって、簡単には放任主義になるわけにもいかないのです。

 

 

その代償は結局自分に返ってきます。

 

 

ではどうするのか、というと一つの考え方は、

 

 

「育成に外の力をかりる」

 

 

ということになります。

 

 

 

自社だとある意味身内であるため、言わなくてもいいことまで言ってしまう、
当たりが必要以上にきつくなるなどの問題があるからです。

 

 

 

 

 

顧客やパートナー企業とのやり取りを任せるのが第一歩

 

若手技術者の育成に外部の力を活用する方法として、最も一般的なものが、

 

「外部企業の技術者と仕事をさせる機会を与える」

 

というものです。

 

 

 

例えば顧客の企業や、共同研究開発を行っている企業、
導入設備のアフターサービスを行っている企業など、
自社の業務と関係する「外部企業」がその一例です。

 

 

 

そして、この外部企業の技術者とのやり取りを、
若手技術者に任せるのです。

 

 

外部企業の方々は、社外の方になるため客観的な姿勢と視点を持っています。

 

 

思い込みや、自らの過去に照らし合わせて何かを求めるということは基本的になく、
あくまでお互いの仕事を前に進め、成功させるという共通目標を達成することに注力の上、
若手技術者に接するはずです。

 

 

実はこのようなやり取りこそが、

 

「若手技術者にとってのOJTとしては、最も育成効率が高い」

 

といえます。

 

 

 

客観的な姿勢で接せられることにより、
若手技術者も緊張感が解け、
本来行うべき業務に集中できるようになります。

 

また、わからないことを聴く、確認するということもやりやすいでしょう。

 

 

技術者が言ってしまいがちな、

 

「なんでこんなことも知らないのだ」

 

という専門性至上主義によるプライドを深くえぐるような傷を与えることは、
外部企業の技術者の方々においてはまずないからです。

 

 

当然ながら、内心でどう思われているかはわかりませんが、
少なくとも外部企業の技術者の方々はそのようなことを言う義理も必要性も無いと考えているため、
まず言いません。

 

 

このような、育成の障害になりがちな主観を排除することが、
外部企業の技術者とのやり取りでは容易に到達できる可能性が高いのです。

 

 

 

 

 

外部企業の技術者とのやり取りは任せることはあっても、相談には乗る事がポイント

 

実際に若手技術者が外部企業とやり取りを始めると、
様々な問題が生じます。

 

そのような問題に若手技術者だけでは対処できないことは多々あります。

 

 

 

上記の通り「任せる」というと完全に放任するケースもあるようですが、
若手技術者が迷っているとき、問題を抱えていると見える時には声をかけ、
適切な助言を与えることが肝要です。

 

 

合わせまして何かをやろうとしている際にそのゴールがぶれていなければ、
仮に元技術者の方々の考えるルートと違っていても、
それを許容する寛容性も重要であることを加筆しておきます。

 

 

細かく修正を加える必要も無いのです。

 

 

 

 

 

人との接触が難しくなっている昨今。

 

 

そのような今だからこそ、その重要性が再認識されているのも事実です。

 

 

 

若手技術者をOJTを基本として育成するにあたっては、
今回ご紹介したような外部企業の技術者とのやり取りを活用するということを通じ、
人と人との関係というアナログベースでのやり取りを取り入れる、
という戦略が重要といえます。

 

 

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