添削された内容のコピー/ペーストという作業では何も力が付かない

 

添削指導されたことをコピー/ペーストしているだけでは力が付かない

 

 

 

技術者は様々な場面で、上司等のベテラン技術者に添削による指導を受けることがあります。

 

 

特に若手のうちは様々な技術業務が不慣れなため、
確認と添削が不可欠です。

 

 

 

確認や添削が必要なものとして、

 

 

・スライド資料

 

 

・議事録

 

 

・技術報告書

 

 

などがあります。

 

 

 

しかし、このような確認と添削を受ける若手技術者側の認識に問題が多いことも事実です。

 

 

 

 

 

確認や添削を引き受けてくれる上司ばかりではない

 

まず若手技術者を中心に、誤解している部分があります。

 

 

それは、

 

 

「年長者は若手の面倒を見るべき」

 

 

という考えです。

 

 

 

 

この考えは一般的に見えれば確かに常識です。

 

 

 

しかし、それなりに経験の多い技術者にも様々な状況があるのも事実です。

 

 

 

定年まで充実した仕事をできる技術者は少数派になりつつある

 

基本的に企業にとって経費的な負担として最も重いのは人件費です。

 

 

もちろんすべての企業に対して合致するわけではありませんが、
年齢と共に上昇する給与を支払うよりも、
体力と柔軟性のある若い従業員を雇いたい、
というのが基本的な企業の考え方です。

 

 

これは従業員という目線ではなく、
企業組織を維持発展させなければならないという経営者の目線から言えば、
ある意味当然といえます。

 

 

 

この雰囲気は年長者の従業員であるベテラン技術者に”のしかかる重し”となることも多い。

 

 

 

そうすると、定年まで安心して働けるという道筋が見えにくくなり、
言いようのない不安に駆られることあります。

 

 

具体的に退職を促されているケースも水面下では行われている事実を踏まえれば、
致し方ない部分もあります。

 

 

 

果たしてこのような状況で、若手技術者の面倒を見ようという意識がベテラン技術者に芽生えるでしょうか。

 

 

 

それ相応の人格者であれば可能だと思います。

 

 

 

結局は若い技術者を育てないと、組織の将来が無いとわかっているからです。

 

 

 

しかし、上記のベテラン技術者の苦境を考えれば、
若手の面倒を見るよりも雇用を維持するための保身に走る、
という考えは頭から否定はできないのです。

 

 

 

自分が超えられるかもしれないという恐怖

 

自尊心の低い傾向にある技術者気質は、
年齢を重ねても根本的に変わらないこともあります。

 

 

その場合、上述した自分の居場所がなくなりつつあることを感じている技術者が、
自らの立ち位置をより厳しいものにするかもしれない次世代の若手を育てることに、
意識する、していないによらず警戒することがあります。

 

 

このような警戒心も当然ながら若手技術者を育てようという方向に進む際の大きな障害となるでしょう。

 

 

 

基本的には若手技術者は放置、
最悪の場合は理不尽なパワハラに発展する可能性さえあります。

 

 

 

忙しすぎるベテラン技術者

 

そもそも論として時間が全くない多忙なベテラン技術者も居ます。

 

・優れた技術を有する

 

・頼りにされやすい

 

・自分で仕事を抱え込む

 

・仕事を的確に振り分ける等のマネジメントができない

 

といったいい点、悪い点がありますが、
共通するのは時間が足りなくなるという状況です。

 

 

 

自らの時間が減ってくれば、若手技術者に目が向かなくなるのは当然です。

 

 

このようなベテラン技術者は、高い視点を持っている、または性格的に面倒見がいい場合を除き、
若手技術者に対して指導をするということは少ないでしょう。

 

 

 

いずれにしても若手技術者は上記の背景も感じながら、
確認や添削をしてくれる上司であるベテラン技術者の存在を認識することが重要です。

 

 

 

 

 

指摘事項に対してコピー/ペーストを繰り返す若手技術者達

 

これまで多くの技術者の指導に濃淡はあれ関わってきましたが、
その多くで見受けられるのは

 

「コピー/ペースト(コピペ)の乱用」

 

 

です。

 

 

 

 

こういう意図があって、こういう風にした方が良いという説明まで加えて一例を示しても、
例えば字数制限のある技術報告書等に関して、

 

 

 

「ご指摘いただいた通りに直すとスペースに入りません。」

 

 

 

「スペースに入るような文章を教えてください」

 

 

 

ということを何の悪気なく述べる若手技術者はかなり多いです。

 

 

 

 

これらの思考の根底にあることを色々と調査をしてみましたが、
多少の違いはあるもののその考えの根底にあるのは、

 

 

 

「業務を効率的に進めたい」

 

 

 

という一言に尽きるというのが現段階での私の考えです。

 

 

 

「指摘したことに対して議論しても、
また違う指摘がされるかもしれないので面倒だ。
であれば、言われたとおりに直しておこう。」

 

 

上記のような考えで日々の業務を進めている若手技術者は、
残念ながら多数派であるというのが現状です。

 

 

 

生産性、業務効率といった言葉が正義のように語られる昨今では、
その前提となる技術者としての基礎力醸成には時間がかかる、
ということに目を向けられる人が減っていると感じます。

 

 

 

そして外的情報に影響されやすい若手技術者達は、
上記の情報を鵜呑みにする。

 

 

 

しかし経験が浅いので自分なりの解釈を見いだせずにわかりやすい要素、

 

 

「仕事を短時間で多く前に進めた方が良い」

 

 

という所だけを主観的に抽出し、それを正義と思い込んでいるのです。

 

 

 

 

 

コピー/ペーストは単なる”作業”

 

私は年に数回、大学で講義を行います。

 

 

この講義では最近オンライン授業が導入されているため、
ここ1、2年は課題を予め電子データで用意して共有する形で、
その課題に取り組んでもらうということを行いました。

 

 

課題取り組みは講義中しか時間が無いので、
今までの対面前提での講義では講義終了ぎりぎりまで取り組む学生が殆どでした。

 

 

しかしオンラインになってからその状況は激変。

 

 

ものすごいスピードでオンライン上にて提出される事例が増えました。

 

 

 

 

そして、その回答も比較的よくできている。

 

 

 

何故かを色々考えた結果、理解できました。

 

 

 

「学生の多くが、私の問題文をコピー/ペーストして提出していた」

 

 

 

のです。

 

 

 

学生にとっては

 

 

「課題を早く提出するという効率化は重要」

 

 

と考えるでしょう。楽して単位を取った方が良いからです。

 

 

 

実はこの思考回路は、若手技術者がコピー/ペーストを繰り返すのとあまり違いはありません。

 

 

 

どちらも共通するのは、

 

 

「効率を求めすぎる故に、成長できる機会を頭を使わない作業で”浪費”している」

 

 

ということです。

 

 

 

若手技術者と、20歳前後の大学生にあまり違いはないというのは衝撃かもしれません。

 

 

 

 

 

プロである技術者に求められるのは自分の考えで指摘を解釈できる力

 

上記で述べた大学での講義の話には続きがあって、

 

 

「何故、そのような答えを記載したのか説明してください」

 

 

と学生に説明させることで、コピー/ペーストが頭を使わない作業であって、
自らの成長につながっていないということを認識させたのです。

 

 

 

多くの学生が返答に詰まりました。

 

 

自らの頭を使って導き出した答えではないので当然です。

 

 

 

対面授業の時は、課題に対して何かしら自らの答えを記述した学生は、
自らの意見を述べていました。

 

 

この意見に対して、講師である私と議論が始まり、
そこで初めて色々な知見を吸収するという実感を持ってもらったと思います。

 

 

 

合っている間違っているはそれほど重要ではないのです。
大学レベルになれば、模範解答のない問題も多くあります。

 

 

 

理解してほしかったのは、

 

 

 

「結局自分の頭を使ってアウトプットを出さないと、成長できない」

 

 

 

という自己研鑽の考え方のみです。

 

 

 

 

学生を例にしましたが、若手技術者も基本は同じです。
言うほど学生の考えから変化していないのです。

 

 

 

 

 

大学の学生に対する指導は”義務”/企業での若手技術者指導は”能動的取り組み”

 

大学の講師は学生の学費で給与が賄われるため、
教えるということについて「義務」があります。

 

しかし、企業に属するベテラン技術者の給与の中に

 

「若手技術者の指導」

 

 

という明細項目は存在しないでしょう。

 

 

 

書かれていない以上、ベテラン技術者は若手技術者を指導する義務はありません。

 

 

 

それでも指導するということは、既述の通り何かしらの危機感や使命感があり、
それに基づく能動的行動を実行しているに過ぎないのです。

 

 

 

ここまで意識が向けばいかに「コピー/ペースト」という作業が無意味か、
と理解いただけるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回はコピー/ペーストという作業のもたらす弊害に加え、
若手技術者を指導するベテラン技術者の状況についても解説しました。

 

 

 

若手技術者は、確認、添削してもらったことに対して、
コピー/ペーストという作業を一日も早く辞め、
自らの知見として吸収する姿勢で取り組むことが求められます。

 

 

 

 

 

 

技術戦略支援事業

⇑ PAGE TOP