技術報告書を提出する際に気を付けること
公開日: 2023年2月27日 | 最終更新日: 2023年2月27日
2023年2月26日の埼玉新聞に”AIと絵本を創作”というテーマの記事がありました。
これはAIを活用しながら絵本を作るという小中学生が取り組むイベントに関する取材記事です。
この中で大変興味深い話が掲載されていました。
それは、
「AIが様々な仕事を担うようになると、指示が無いと動けない人間には厳しいものになる。」
というもの。
人が人を使役する時代の終わりとの記述もありましたが、この文言は今の企業指導において大変強く感じていたことでした。
この感覚は技術者育成でも同じで、やはり技術者である以上、決められたことをやればいいという考えを脱し、少しずつでも自発的に考え、物事を進めていくことが必須の時代になっています。
研究開発の技術者はもちろんですが、製造や生産に関わる技術者も同じです。
そして、この技術者の自発的な活動を形として残す代表的なものが、
「技術報告書」
になります。
今日は技術報告書を提出する際に気を付けること、という観点から考えてみます。
技術報告書作成と技術者の自発性との関係
最初に何故技術者の自発的な活動と技術報告書に関係があるのかについて考えてみます。
技術報告書をAIで書くことは現段階では難しい
技術報告書は多種多様な技術評価手順とその結果、そこから考える考察という新たな知見から構成されます。
AIがさらに進化して技術者の普遍的スキルに迫るようになればわかりませんが、
今AIが得意としているのは基本的に過去の知見に基づいた考え方や記述、そして描写です。
技術報告書は行った技術評価やそこから得られた結果を徹底した事実に基づいて細かく記載することに加え、
そこから考えられること、更には次の一手として何を行うべきかという提言を含めて記載することが求められます。
技術報告書に記載されるような情報は特殊な技術評価や実験がその骨格になっていることも多いことから開示情報が限られ、何よりAIに的確な見本となるような技術報告書自体もあまり多くない現状では、AIがそこに適した力を発揮することは現段階では難しいと考えています。
技術報告書作成業務に関する逆風が強いからこそ技術者の自発的行動が必要
加えて行った事実と結果の詳細を記述し、そこから得られたものを考えた上で記述するというのは作成者である技術者にとって大変な労力です。
言われているからといった考え方で技術報告書を作成しようとすれば、
技術者は他の業務が忙しいからといった言い訳を盾に後回しにすると思います。
更には管理職やリーダー、そして経営者の中には技術報告書作成という作業時間をコストとして考えることもあり、
そのような業務を推奨しないことさえもあります。
つまり技術報告書は技術者にとって高度で高負荷な業務である一方、
それを行わないことを環境が認めやすいという成果物です。
それでも技術報告書を作成しようとする技術者に求められることは、最終的には自発的行動なのです。
自らの考えをまとめ、それをわかりやすく第三者に伝えることで必要に応じた協力を仰ぎ、
行った事、得られた知見を企業組織の技術知見として蓄積させる媒体として技術報告書が重要である、
ということを作成者である技術者自身が理解したことに伴う自発的行動が無ければ技術報告書が生まれることはありません。
AIに限りませんが、様々な技術が進化することで場合によっては使役が正義と考える技術者が存在価値を失う一方、
効率だけを求めずに技術報告書のような成果物を求めて日々の技術的業務に取り組むという愚直な姿勢が、
今以上に貴重なものになっていくと考えます。
技術報告書作成において第一歩は基本構成の構築から
技術報告書作成における留意点に話を戻します。
小説等の物語を創作する場合、人によっては考えながら書くというライブ型と呼ばれる取り組み方も多くあります。
例えば著名な作家だと有川浩氏は自らがライブ型であると公言しています。
音楽の作詞や作曲もなどもこの色が濃いといえます。
しかし、技術報告書に関してでいうと間違いなく、
「先に基本構成を決める」
ということが必要です。
考えながら書くというやり方では、行った技術評価などの全体を把握し、それと1:1になるように結果という事実を詳細に記載、その上でどの観点を考察として取り上げるかを決めるというのは極めて難しいでしょう。
そのため、まずは目次に該当する部分を若手技術者が作成し、
それを確認者や添削者であるリーダーや管理職が確認することが第一歩です。
この辺りは過去のコラムでも取り上げたことがありますので、詳細はそちらをご確認ください。
・関連コラム
提出する技術報告書は必ず最終版
基本設計である目次、つまり項目名称が決まったら実際に書き始めます。
書き方が全く分からない場合は別として、作成者である技術者は
「自分の中では最終版であると確信できるものを提出することが絶対である」
ということへの理解が求められます。
技術報告書作成経験が少ない技術者の報告書
NGの例を以下に示してみます。
・記述が途中の箇所がある
・作成者が提出前に見直しを3回以上行っていない/印刷しての確認を行っていない
・フォントサイズやフォントが揃っていない
・本文中の文字に黒以外の色を使う
・図表のキャプションが抜けている
・句読点が抜けている
・内容理解を助ける図や写真、表が無い
上記のようなものが一つでも入っているような技術報告書を作成していると、なかなか普遍的スキルの一つである技術文章作成力が向上しません。
常に文章の最高品質という限界に挑戦する姿勢を続けることでしかスキルは向上しないのです。
技術報告書を作成する技術者は上記を理解し、
確認や添削をするリーダーや管理職は上記を技術者に理解させることが必要です。
冒頭示したような時代の変化があったとしても、技術者が存在意義を失わないための取り組みの一つとして技術報告書作成を取り入れる場合のご参考になれば幸いです。
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