技術評価結果の生データ羅列の提出は技術者の仕事ではない

 

今日は

 

「技術者が評価を行った後、生データの羅列を結果として持ってくる」

 

ということについて考えてみたいと思います。

 

 

 

 

 

請負業務は成果物到達への時間が勝負

 

ギグワークは請負業務

 

 

働き方の選択肢が広がったこともあり、ギグワーク等の単発の仕事が増えてきています。

 

このような仕事は請負業務の定義になります。

 

限られた時間でどれだけの仕事をしたのか、
という成果物が明確であることもあり、
いかにして早く成果物を出すか、ということに全力で取り組むことになります。

 

 

つまり請負業務のすべてに当てはまるわけではありませんが、
単位時間当たりの成果物数が勝負となります。

 

 

 

 

 

技術者の業務は請負業務ではない

 

技術者の業務は請負業務ではない

 

 

冒頭紹介した

 

「技術者が評価を行った後、生データの羅列を結果として持ってくる」

 

というのは技術者が、技術的業務を請負業務と勘違いしている典型例です。

 

 

このような行動をする技術者の深層心理にあるのは、

 

「一刻も早く成果物を提出し、仕事で成果を出したと評価してもらいたい」

 

という考えです。

 

 

これは請負業務ではある意味正解です。

 

 

しかし、技術者の中でもオペレーターと定義される方々は別です。

 

この方々は長年蓄積した経験をフルに活用しながらも、
できる限り短時間で安定した品質の製品を具現化するという高度な業務です。

 

ここでは上記の通り時間あたりにいくつ製品を具現化できるか、
が求められるため完全に請負業務ではありませんが、
業務効率を求められることは不可避です。

 

技術者とオペレーターについては、以下のコラムでも取り上げたことがありますので、
ご一読いただければと思います。

 

 

技術者と オペレーター の違い

 

 

 

しかし、研究開発を行うような技術者は単位時間当たりの成果物ということにこだわってはいけません

 

技術者に求められるのは、どちらかというと、

 

 

「どのような技術評価をすべきか考え、それを計画立案の上実行し、得られた結果を第三者にもわかるようにまとめる」

 

という、

 

 

「企画→評価計画→評価実行→評価結果まとめ」

 

 

一連の業務を完遂することです。

 

 

ここでいう明確な成果物は、実は「評価結果まとめ」しかありません。

 

 

これはいわゆる「技術報告書」ということになるのです。

 

 

 

 

 

技術評価を言われたとおりに行い、出てきた結果をそのまま出すのは技術者ではご法度

 

こんな感じで評価をしてみては?

 

という定性的なマネジメントの指示をそのまま受け取り、

 

 

わかりました!

 

 

と元気良く応える若手技術者。

 

 

最も危険なコミュニケーションのパターンです。

 

 

 

・こんな感じとは、具体的にどのような手順なのでしょうか?

・求められているアウトプットは評価をする事だけなのでしょうか?

・そのような評価を行う背景は何でしょうか?

・そもそも評価を行う目的は何なのでしょうか?

 

 

当然ながら抽象的な指示を出すマネジメントに大いに非はありますが、
それをそのまま自己完結して走り出そうとする技術者側にも問題があります。

 

 

恐らく上記のような確認事項を行わないまま評価が進むと、
出てくるアウトプットのパターンの一つは単なるデータの羅列。

 

 

「こんな数字の羅列だけ見せられても何もわからないじゃないか!」

 

 

というのがマネジメントの予想される発言でしょう。

 

 

やはり、話がかみ合っていないのです。

 

 

 

 

 

評価方法、生データの視覚化、結果を踏まえて技術者として何を考えるか、が技術者は必須のアウトプット

 

マネジメントはどのようなアウトプットを予め要求すればいいのでしょうか。

 

結論から先に言うと、

 

 

・評価方法:具体的にどのようにして評価を行ったのかの詳細

 

・生データの視覚化:グラフや表を使い、視覚的にとらえる事を可能にする

 

・結果を踏まえての意見:実際に評価を行った技術者が結果を見て何を考えたのか述べる

 

 

の3点です。

 

これらの動機は単純です。

 

この3要素が揃えば、

 

「技術報告書の最低限の情報取得と、当事者意識醸成の鍛錬が可能となる」

 

からです。

 

 

最初の評価方法は技術報告書でいう実験項に該当します。

 

二番目の生データの視覚化は同報告書の結果の項です。

 

視覚化の一例として、技術報告書の作成におけるグラフ作成のポイントについては過去に以下のようなコラムで取り上げたこともあります。

 

若手技術者にデータの 相対比較 をやらせた際の検証が甘い

 

 

 

最後は、やらされた業務ではなく自分はどう考えたかを述べるところですので、
業務に対する当事者意識醸成につながります。

 

 

また、内容によっては考察に使える可能性があるのです。

 

 

マネジメントは当然ながら業務の背景と目的は理解しているはずなので、
若手技術者が上記の情報を提供できれば、
マネジメントが技術報告書を書くことも可能となります。

 

 

このようにして、マネジメントも技術的業務の指示をして終わり、
ではなく自分で業務を完結させるスキルを向上させることも可能となるのです。

 

 

マネジメントが見本となれば、その姿勢は若手技術者に必ず伝わります。

 

 

上記のような取り組みの積み重ねが、
チームを本当の意味での技術者集団にしていくのです。

 

 

 

 

 

技術者というのは新しいことに取り組む研究開発系の仕事が多いため、
成果が見えにくい仕事です。

 

そのため、承認欲求が満たされず請負業務的な成果を急ぐ傾向を示す場合もあるのです。

 

 

マネジメントはそのような若手技術者の深層心理を先回りし、

 

「技術者の成果物は企画→評価計画→評価実行→評価結果まとめの完結による技術報告書である」

 

と明確に伝えてあげることが重要だと思います。

 

 

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