景気後退局面 での技術者育成

 

技術者育成は継続こそが鍵

 

 

 

消費税増税に加え米中貿易摩擦や新型コロナウィルス等、
昨今は景気後退をうかがわせるニュースが多く飛び込んできています。

 

実際に当社と関係のある企業や、
その関連企業でもその影響を受けている事例を聴く機会が増えるなど、
上記のニュースが実感なりつつあります。

 

 

今日のコラムでは 景気後退局面 での技術者育成というものについて、
マネジメントの観点に加え、少し視点を上げて経営者の目線からも考えてみたいと思います。

 

 

 

 

景気後退局面 での株主の要望や経営者の方針の傾向

景気後退局面 に入ると、
株価の低下を防ぎたい(配当金という概念もあると思います)という株主や投資家の意見はもちろん、
資本金の取り崩しを防ぎたい経営者の考え方により、

 

 

「企業から出ていくお金を抑制する」

 

 

という方向に企業が動くことが殆どです。

 

 

景気後退局面では、

 

 

「選択と集中」

 

 

というスローガンのもと、様々なものを止めるという動きになるのではないでしょうか。

 

 

 

 

これはマネジメントはもちろん、一般の従業員である技術者の方も実感されることが多いと思います。

 

 

技術テーマであれば、売上に直結しにくい要素研究を止める、

 

 

生産テーマであれば、設備投資を抑える、

 

 

ということが行われると考えます。

 

 

 

 

技術と直接関係ない部分であれば

 

 

管理テーマであれば、残業代の圧縮や出張日当の削減、

 

 

といったことが一例です。

 

 

 

 

当然ながら企業を維持発展させるためには資金が不足しては元も子もないので、
上記の動きをすべて否定することはできません。

 

 

 

 

しかしながら、マネジメントはもちろん、経営者もしていくつか考えなくてはいけないことがあります。

 

 

 

 

 

 

ハードへの投資抑制は内容によっては妥当

 

設備投資、つまりハードへの投資抑制は経営的にも理にかなっている部分があるといえます。

 

 

設備は稼働していなければコストにしかならないため、
余剰設備への投資を抑制するというのは理解できます。

 

 

唯一ハードに関する投資で景気後退局面でも継続すべきは、

 

 

「インフラ関係の設備と現在稼働している設備のメンテナンス」

 

 

です。

 

 

インフラ、例えば建屋から始まり、ガスや上下水道の配管、電気関係、
さらには稼働している設備の伝送や駆動部品といった製造業を生業とする企業の血肉となる部分に欠陥があると、
突然製造設備が停止して生産販売する製品供給が滞るということになります。

 

 

 

そして何より重要な、

 

「従業員の安全」

 

というものにリスクを背負わせる可能性もあるのです。

 

 

 

 

ガス漏れ、関電、地震による建屋崩壊、設備の破損等がその一例です。

 

 

 

景気後退局面であっても、
このような事が起こらない様、
投資を続けるのは必須といえます。

 

 

 

ただ、このような部分を除いては、
ハードに対する投資はそれほど必要ではないといえます。

 

 

 

 

 

ソフトへの投資に関する盲点

その一方で、ソフト(主に人や技術)への投資は全く別物です。

 

 

例えば要素技術の開発や研究を止めてしまっては、
自社技術の醸成風土を退化させるという、
技術的な企業としては致命的な流れを作ってしまいます。

 

 

技術系の企業で要素技術を持たないのは、

 

 

 

「戦場で使う武器や防具をすべて捨てる」

 

 

 

というのに等しいでしょう。

 

 

要素技術を持たない企業は、
規模が大きくともことごとく表舞台から退散していきます。

 

 

尚、技術系企業を辞め、ホールディングズのような形で投資会社になる場合はこの限りではありません。

 

 

ただこの場合は、技術系企業の時とは比較にならないリスクマネジメントと、
異次元のスピード感が必要になります。

 

 

この業界のプレーヤーは例えば、以下のサイトで見ることができます。
https://baseconnect.in/companies/category/307c9f2e-d339-4166-82c1-076abd98a3ef

 

 

 

 

技術系の製造業の企業におけるもう一つのソフトが、

 

 

「技術者人材育成」

 

 

です。

 

 

企業というのは人でできています。

 

 

そして技術系の企業の基本となるのはやはり技術者です。

 

 

上記の戦場の例を使うならば、技術者人材育成を辞めてしまうことは、

 

 

「戦場で闘える人がいなくなる」

 

 

ということとも言えます。

 

 

戦い方を教え、戦うための準備を教えることこそ、

 

 

「自ら課題を抽出し、その課題解決に向け能動的に動く」

 

 

という技術者育成における最重要の要素です。

 

 

 

また昨今のAI、IoT、FA、5Gなど、
これらの技術の基本となるのもそれを使う技術者があって初めて力が発揮されます。

 

 

この辺りは以前、以下のコラムでも述べたことがあります。

 

 

※ 技術者が生き残るのに必要な 普遍的スキル とは

 

 

ここにおける投資を辞めるというのは、
企業にとって生命線を絶つに等しいです。

 

 

 

 

何も言わなくても育つ技術者への依存はこれからの企業にとっては危険

 

 

技術者の中には、

 

 

「特に教育らしい教育をしなくても成果を出せる」

 

 

という方も居ます。

 

 

手のかからない優秀な技術者という印象です。

 

 

これは、様々な技術者を見てきて私も実感していることです。

 

 

 

しかし、だからと言って技術者人材育成への投資は必要ないと判断するのはあまりにも危険です。

 

 

このように教育をしなくとも自然に育つ技術者は、

 

 

「市場ニーズが高い」

 

 

という紛れもない事実があります。

 

 

 

技術的スキルはもちろん、それに加えその技術者が自らのスキルを的確に伝える力があれば、

 

 

「ヘッドハンターと呼ばれる採用のエージェントが一本釣りをしてくる」

 

 

というのが当たり前の世界です。

 

 

これはそのようなシステムを用いて採用をしている企業であれば実感していることだと思います。

 

 

「人手が不足しているのは一部の業界、人材の不足はすべての業界に当てはまり、より深刻である」

 

 

といわれる昨今の日本において、
スキルのある人材は現職よりも好待遇で引き抜かれるのが常識になりつつあります。

 

 

 

 

このため自然に育つという技術者に依存するのは、
企業のリスクマネジメントとしては危険といわざるをえません。

 

 

 

 

ソフトへの投資は細くすることはあっても継続することが最重要

ではソフトへの投資に関し、企業はどのようなスタンスで臨むべきなのでしょうか。

 

 

結論から先に言うと、

 

 

「細くすることはあっても継続する」

 

 

ということです。

 

 

人材育成を企業がものにするには、

 

 

「企業文化にする」

 

 

のが最重要です。

 

 

組織は必然的に楽な方に流れるようにできています。

 

 

何故ならば楽をしたいという個々人の意識の蓄積が、
組織という大きなベクトルをそちらに向けてしまうからです。

 

 

技術者育成に関し、楽な方向を向くということの一例は以下の通りです。

 

 

– 書く時間がかかるので技術報告書の作成を辞める

 

 

– 技術的な議論は時間がもったいない、面倒なので結論を急ぐ

 

 

– 今までの技術的経験でわかる業務範囲に閉じこもる、新しいことはやらない

 

 

効率だけを求めるのであればない話ではありませんが、
私の考えではこのような技術者の行動を良しとする経営者のいる技術系の企業に先は無いと思います。

 

 

何故ならば、

 

 

「危機感の有る優秀な技術者から企業を去るのが目に見える」

 

 

からです。

 

 

経営以前に、技術者という最重要の基礎から崩れていくのです。

 

 

 

 

 

景気後退局面こそソフトへの投資を

 

「景気後退局面に入ると見かけの売り上げは下がるが、時間的余裕はできる。このタイミングで本格的な技術者人材育成に取り組み、それを企業のシステムとして構築したい」

 

 

最近お会いした経営者の方の言葉をほぼそのまま転載しました。

 

 

 

このような考えが最後に私もお伝えしたいことです。

 

 

大企業だけでなく、中小企業は内部留保をある程度抱えています。

 

経営的な観点から言うと内部留保を使うのは、まさにピンチをチャンスととらえるこのようなタイミングです。

 

 

 

経営者に当事者意識があれば、まず自らその覚悟を示すことが必要です。

 

 

 

経営者の中には、従業員には色々な制約をつける一方で、自身の役員報酬を変えないというケースもあるのではないでしょうか。

 

これは、覚悟の無さを示す好例です。

 

 

 

自らの痛みを伴わない改革を行う経営者は、どこかで本当の意味での当事者意識に欠けており、そのような気持ちの隙が結果的に会社という存在自体を危うくしてしまう結果になります。

 

 

 

このような苦しい時ほど、技術者育成や要素技術の醸成に少額でも継続して投資を行い、
攻めるタイミングになったその時に爆発的な力を発揮できるよう準備することが求められます。

 

 

苦しいのは自社だけでなく、他社も同じです。

 

 

ここの踏ん張りが会社の命運を分けるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

技術系の製造業企業において技術者という人材と要素技術というソフトは生き残りの要。

 

 

 

ここをどのように継続して強化していくかということが、
世界中の企業の経営者に求められていると思います。

 

 

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