他に業務があるため対応できないと言う技術者 Vol.134
公開日: 2021年3月15日 | 最終更新日: 2021年3月12日
タグ: イノベーションと企画力, マネジメント, メールマガジンバックナンバー, 技術者の癖, 技術者人材育成, 生産性向上
マネジメントは今組織として優先順位の高いこの業務をやってもらいたいが、
「自分は他に色々やることがあるので、今それをやる余裕がありません」
ということを発言する技術者が周りにいないでしょうか。
これは実際に余裕が無いという場合もありますが、
「自分の興味のある業務、やりたい業務以外は後回しにしたい」
という技術者の思考に由来することが多くあります。
この辺りの詳細は以下のコラムでも述べたことがあります。
※これは 自分の仕事ではない という言動が若手技術者に見える
この状況において一番望ましくないのは、
「マネジメントが代わりに業務を進めてしまう」
です。
またそれ以外の対応としては、
・技術者達の言い分をそのまま聞き入れる
・力づくでやらせる
というものがありますが、前者は必要な業務が進まないという弊害、
後者は高負荷によって技術者自身がつぶれるという可能性もあるため、
業務を前進させるためマネジメントによる対応が求められる場面です。
マネジメントが推進していると現場の技術者は業務完結力が養われない
技術的なスキルも高いマネジメントは
「現場ができなければ我々でやるからいい」
という判断を下すことがあります。
緊急事態においてはそれも必要ですが、
これを繰り返すことによって生じる問題も理解しておく必要があります。
それは、
「技術テーマをやり切るという若手技術者たちの業務完結力が養われない」
ということです。
・自分が業務の最前線に立ち色々な仕事をやろうとすると誰かの陰に入りたがる
・業務が滞るとそれはマネジメントのせいである、顧客のせいであるという批判ばかりの評論家になる
・自分は悪くないと責任逃れの言動が多くなる
上記のような言動の見える技術者について、最も欠けているのは
「業務完結力」
です。
マネジメントが最後はしりぬぐいをしてくれるからいいだろう、
という他力本願な考えがあるのです。
能力有無に関わらず、技術者は仕事における責任から逃れたいという潜在意識があります。
これは程度の差はあれ誰でも持っている考えであるため、頭から批判してはいけません。
組織が個人に責任を負わせるという雰囲気がある等、環境が原因であることも多いからです。
マネジメントとしてはこのように個人に全責任を負わせるような雰囲気が組織に無いかをまず点検し、
必要に応じて是正するという取り組みは不可欠でしょう。
ただいずれにしても若手技術者のうちから
「いざとなればマネジメントがやってくれるだろう」
という考えが染みついたまま年齢を重ねると、40過ぎのベテランになった時に、
「これは誰かがやってくれるのでは?」
という自分自身の立場をわきまえない、大変違和感のある、
「プライドと外見はベテラン、中身は若手」
という技術者が出来上がってしまいます。
これはマネジメントとして是非とも避けたいことです。
技術者の言い分を聴きすぎると業務が停滞する
マネジメントが現場の意見に耳を傾ける、
またはそれなりにマンパワーが多く担当者を振り分けやすい、
という比較的マネジメント体制が機能している組織でみられるのは、
「現場技術者の言い分に応じる」
という対応です。
技術者が心身の不調を示唆する状況が見えるなど、時と場合によっては必要な対応です。
ただし現場の技術者の見えている視野の範囲はマネジメントのそれに比べると、
圧倒的に近視的であることを考えれば、
基本的には現場技術者に動いてもらうことが組織の姿勢として基本です。
マネジメントの役割は現場の言い分を最優先にするのではなく、
現場技術者の状況を客観的に確認した上で、
組織としての要望や方向性を上手く現場に伝え、
基本的にはその通りに現場を動かすことにあります。
現場の声ばかり聴いてそれを受け入れてばかりでは、
現場技術者は何かの理由をつけて業務から逃げ回るようになります。
その一方でマネジメントはマネジメントとしての業務に忙殺されるようになってしまい、
その結果として業務が停滞するという、組織としての問題に発展してしまいます。
力づくでやらせるという考えは現場を疲弊させる
熱血のマネジメントによくあるパターンです。
結論から先に言うと、力づくで物事を動かすのはある意味、
権限を上手く使えば誰でもできるのです。
極端な話でいえば、
「つべこべ言わずにやれ」
の一言で終わってしまいます。
このような指示に対して、きちんと
「具体的な手順としては最初に○○をやって、その後確認の上XXをやるということを考えていますが、それでいいでしょうか。」
という提案と確認のできる技術者が現場にいればいいですが、そうでない場合、
「いったい自分はどの優先順位で何をやればいいのだろう」
と途方に暮れるはずです。
これが繰り返されると心身に支障をきたし、
大変貴重な若手技術者という社員が業務推進不能という、
マネジメントとして最も避けなくてはいけない状況に陥ることになります。
では、上記のようなパターンにならないためにはどうしたらいいのでしょうか。
技術者の現在の担当業務を把握する
まず、マネジメントがやらなければならないのは、
現場の技術者のかかえる現在の担当業務を把握することです。
普段からコミュニケーションがとれていれば問題ないかもしれませんが、
都度確認するということは不可欠です。
特に優先順位の高い業務を打診する場合、
後述の通り他を止めるという判断をマネジメントがするため、
念入りに確認することが必要です。
この確認の際は、マネジメントから現場の技術者に
「担当している業務を書かせる」
というのがポイントです。
これは、書くという作業を通じてマネジメントだけでなく、
現場の技術者が自身の業務を改めて理解することにつながるためです。
この担当業務の把握によって、
まずはこれらの業務を何日間止められるかを判断するのがマネジメントに求められる部分になります。
短期での納期を決め、何日後にアウトプットが欲しいかを明確に指示する
担当業務を把握の上、何日間止められるかを理解した後に、
マネジメントがやらなければならないのは、
「いつまでにアウトプットが欲しいのか」
を伝えるということになります。
他の業務を止めてでもという以上、あまり長期納期の設定は回避するべきでしょう。
具体的に〇月〇日までと伝えてください。
その次に伝えるのが、
「どのようなアウトプットが欲しいのか」
ということです。
このアウトプットは口頭ではなく、活字で伝えることが必須です。
ゴールがわからないと技術者が本来やることから外れていく恐れがあるため、
必ず活字で指示するようにしてください。
この辺りの考え方は以下のコラムでも述べたことがあります。
いかがでしたでしょうか。
技術者が早い段階で理解しなくてはいけないのは、他の業務があるからできないという逃げの姿勢ではなく、
「時間軸が明確に決まった業務で、求められるアウトプットを出すことで業務を完結させる」
ということです。
この経験はできる限り若いうちにさせることが重要です。
年齢を重ねる程、考え方が固まってしまい、
変化に対応する柔軟性を失うことで、
仕事を回避するすべを処世術として身に付けてしまうからです。
若手技術者を即戦力化する取り組みとしてご参考になれば幸いです。
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