技術報告書に記載する表の基本知識

公開日: 2025年6月16日 | 最終更新日: 2025年6月16日

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技術報告書に記載する表の基本知識

 

技術報告書に記載する表の基本知識について解説します。

 

 

 

 

 

表は主に数字を見やすくする代表的な手法

 

技術報告書は多くの数字を記載することがあります。

 

 

ここで活躍する表現手法の一つが表になります。

 

 

何故技術報告書で表を使う必要があるかについて、改めて考えます。

 

 

 

表で記載された数字は見やすい

 

何度か述べた通り、技術報告書のように活字主体の記録は、
時間を経てからの振り返りにはその効果を発揮しますが、
情報の伝達効率だけでいうと図表の方が分かりやすいです。

 

これは、人の認識効率が「活字→画像→動画」の順番で高くなることによります。

 

 

表は画像ではありませんが、行と列で対応する数字が整理されることにより、
画像に近い情報伝達効率向上効果を発揮します。

 

 

 

活字だけで表現するよりスペースを圧縮できる

 

見やすいことに加え、整理することによって情報密度を高めることが可能です。

 

技術報告書の文章の書き方として、
表に該当する”並列表現”の記載スキルは若手技術者のうちに身につけたいのは事実ですが、
そもそも表を活用することで数値情報の伝達精度を高める、
という考え方も併せて重要になります。

 

 

活字で書こうとすると何行にもなる数値情報も、
表で表記すると圧倒的に省スペースで伝達可能になります。

 

 

 

 

 

技術報告書における表の活用方法

 

実際に技術報告書で表をどのように活用するのかについて述べます。

 

 

 

表を最も活用する一例が系統の異なる数値データを一覧にすること

 

既に述べた通り見やすさだけを言えば数値データはグラフで示すほうが分かりやすいです。

 

 

しかしこれが可能なのは

 

「同列で扱っていい数字の場合のみ」

 

です。

 

 

2軸グラフを使えば2系列の数値データを一つのグラフ内で表現できますが、
3系列以上になるとグラフが3次元となり、逆にわかりにくくなります。

 

このような場合は表を使った方が圧倒的にわかりやすいといえます。

 

 

 

表を使うことが望ましい具体例

 

表の活用について具体例を考えます。

 

主に研究開発等で表を活用する代表的なものとして以下のようなものがあります。

 

 

組成

 

複数種の金属合金を説明する場合、
それぞれの合金がどのような元素比で構成されているかを一覧表にします。

 

 

 

材料特性

 

複数種の材料について、それぞれの強度、弾性率、ポアソン比を一覧とします。

 

 

 

評価対象説明

 

評価対象物に関する重量、寸法(縦/横/高さ)、速度、加速度などを対比できるよう記載します。

 

 

どれも数値データである一方、
グラフで分かりやすく示すのは難しいことがお分かりになると思います。

 

 

これは、各水準が複数の異なる系列データで構成されていることに由来します。

 

 

以下では表を技術報告書に記載するにあたり、
若手技術者に理解させたいポイントを述べます。

 

 

 

 

 

キャプションは必ず表の上

 

表のキャプションは必ず上につきます。

 

 

これは技術系の文書で徹底されるルールの一つです。

 

 

一般出版物ではこの限りでないケースもありますが、
技術報告書を含む技術系文書では”必ず”守らせる必要があります。

 

なお、図や画像の場合、キャプションは下になります。

 

 

 

この辺りは過去のコラムでも述べたことがあります。

 

 

 

※関連コラム

 

技術報告書における表とグラフ/図のキャプションの違い

 

 

 

 

 

単位はセルの中ではなく、数値を説明する冒頭の行か列に記載

 

表で記載する数値の中には単位を有することが一般的です。

 

 

セルの中にある個別数値に一つずつ単位を記載すると、
せっかくすっきりと見やすいはずの表が読みにくくなってしまいます。

 

 

表で記載された数値は行、または列で同一系列のものになるはずですので、
単位も共通です。

 

 

よって、冒頭の行、または列に項目名と一緒に単位を記載することで、
セル内の数値の一つひとつに単位を記載するということを回避します。

 

 

 

 

 

有効数字を合わせる

 

ここまで何度か述べた通り、表内の同一行、または同一列の数字は同じ系列ですので、
比較できることが一般的です。

 

 

この際重要なのが有効数字です。

 

 

例えば行において同じ系列の数字が表内で並んだとします。

 

 

一列目は小数点3位まで数字が記載されているのに、
二列目は小数点1位までしかなかったとなると、
比較しようとした際、やりにくいはずです。

 

有効数字の桁数、または小数点以下第何位まで記載するかは、
同一系列の数値においては表内で統一することが比較を可能にする意味で重要です。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する一般的な人材育成と技術者育成の違い

 

表に関する記載方法に関する教育は、
一般的な人材育成ではあまりないと思います。

 

 

そもそも通常の人材育成における表は、

 

「情報を分かりやすく伝えるための一手段」

 

という位置づけであるのが一般的であるためで、
フォントや色の使い方といった口頭レベルでの助言がある程度だと考えます。

 

 

 

一方で技術者育成における表は今回例としても示した技術報告書はもちろん、
技術プレゼンテーションなどで技術データを分かりやすく示す重要な要素です。

 

今回ご紹介したような最低限のルールに加え、
技術報告書内での挿入方法など、
技術業界や企業が違っても共通する表の取り扱いに関する知見が、
若手技術者に加え、リーダーや管理職にも求められます。

 

 

 

 

 

本コラムに関連する具体的な技術者育成支援の例

 

技術者育成コンサルティングとして対応します。

 

まず業務支援の準委任に関する法人間契約をしていただきます。

 

 

その後、各企業で作成した技術報告書の添削、確認作業を支援する中で、
表の記載方法について指摘を行うことで、
リーダーや管理職の表の扱いに関する理解を深めていただきます。

 

 

そのうえで、実際の作成者である若手技術者に適切な指示、指導ができるよう、
フィードバック時の伝え方についても細かくお伝えします。

 

 

これらの工程を繰り返すことで、
技術チーム内での表の扱いに関する基礎を習得いただきます。

 

 

 

 

 

まとめ

 

表は系列の異なる数値を一覧として示し、
各水準のデータを比較することを可能にする素晴らしい表現手段です。

 

技術報告書では是非取り入れたいものの一つになります。

 

 

キャプションの位置、単位の記載方法、有効数字の設定を意識することで、
表はより適切な形で数字を表現することが可能となります。

 

 

 

表を用いて技術報告書、または今回取り上げていませんが技術プレゼンなど、
若手技術者が技術情報を分かりやすく伝える際の、
リーダーや管理職の方々の指導のご参考になれば幸いです。

 

 

 

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