技術者人材育成になぜ技術報告書が重要か

技術報告書作成意義

 

 

技術者の人材育成というと、学会やセミナーに行って専門知見を積んでくる、と考えるのが通常のようです。

 

ところが、文章作成力に裏打ちされた論理的思考力が無いと学会やセミナーに行ったところで、そこで十分な情報を整理して取得し、それを報告するという基本動作ができません。

 


容量が無い容器に水を注ぐのと一緒で、まさにお金と時間の無駄遣いになります。

 

 

とはいえ、

 

「何故、技術報告書を作成する必要があるのか」

 

ということを理解できなければ動く動機につながらないのも事実。

 

 

今日のコラムでは技術報告書存在意義を説明する3点ご紹介します。

これを若手技術者に説明することで、若手技術者に技術報告書の重要性を理解してもらうことができます。

 


1.自らの頭を整理する


話し言葉の口語表現と異なり、文章で説明する文語表現では左脳を非常に多く使います。

話し言葉はしゃべりながら後から追加修正するといった柔軟対応が可能ですが、
文章では一発で読み手に理解させなくてはいけないため、十分な準備が必要です。


この文語表現でわかりやすく説明しなくてはならない、というプレッシャーこそ左脳、つまり論理的思考力を鍛える動機であり、これが結果的に自らの頭の整理につながります。

 

第三者に自らの考えを伝えるという文章作成を通して、


「他人にわかってもらえるために必要な表現とは何か」


ということを意識して学ぶと同時に、これによって自らを第三者視点で振り返ることができます。

 

そしてこの振り返り動作により自らの頭の整理をすることができるのです。

 


2.味方を増やす

よく言葉による説得で社内で自分の見方を増やすというやり方があります。

もちろん、それも一理あるのですが言葉というのは話した先から消えていくものなので持続力がありません。

 

それに比べ文章というのは文字という形を持ってその存在を持続させることができます。

 

これが味方を増やすために重要です。

 

文章を残しておけば、何かの時に口頭説明と同時に技術報告書を渡すという二重の説得が可能となりますし、残った文章が後になって味方となる人間に見てもらうことも可能となります。

 

年度末の忙しい時に話をされてもあまり響かないことが、余裕のあるときに話を聴くといろいろアイデアがでることはありませんか。

 

文章は相手の都合のいい時に読んでもらえるという、持続性を伴う説得ができるという強みがあります。

 

この強いを活かすことで味方を増やす可能性を広げることができるのです。

 

 


3.自分を守る


残念ながら不祥事や不具合、問題が発生した時、必ず原因究明という名の犯人捜しが始まります。

もちろん、どれだけ想定を広げたとしても想定外のことで問題が起こってしまうこともあるでしょう。

 

しかし、予め評価段階で問題になるリスクがわかっている、というケースもあります。

 


このような場合、報告書のような文章はその作成者を守る城壁へと変化する可能性を秘めています。

 

口頭でいくら「○○というリスクがあります」といったところで、それは口頭。


議事録をとっておいてもらえればまだいいですが、議事録さえなければ「負け犬の遠吠え」という最悪の評価で犯人に仕立て上げられません。

 

 


このような場合に備え、議事録に加えそのリスクを説明する技術報告書があれば自分の身を守る何よりの証拠となります。

 

 

 

作成日と想定されるリスクがはっきり書かれた技術報告書を見せられて、それでもその作成者本人を責めることはできないでしょう。

 

 

前に進めると判断した決裁者が責任を負うべきです。

 


上記のような保身術もある程度みにつけないと、自らのスキルアップを阻害する政治力が働くというのも組織の悲しい宿命でもあります。

 

 

いかがでしたでしょうか。

 

若手技術者に報告書作成の重要性を説明するにあたり、上記のような観点を説明することで若手技術者も指導をきちんと受けようという気持ちになれるかもしれません。

 

技術報告書の重要性を説明する際の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

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